「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は日水コン(261A)をみていきます。
同社は、上水道や下水道などのライフライン、河川・砂防などの防災関連などの「社会インフラ」の整備において、主に官公庁などの公的機関から発注を受け、調査・設計などに関わる技術的なコンサルティングを行っています。
同社グループの強みとしては、まず「中央官庁や地方自治体との信頼関係と実績」が挙げられています。23.12期の売上高218.8億円のうち、206.4億円(94.3%)は官公庁案件となっています。
次に、「幅広い案件へ対応できる総合力と豊富な人材」が挙げられています。同社は土木、建築、建築設備、機械、電気、水質、情報などの多様な工種別の専門家が案件ごとにチームを組成し、幅広い業務に対応するとしています。
同社の初値ですが、新味のない業態であるうえファンドの完全出口案件などにより、苦戦が予想されていました。では、上場からの株価の動きをみていきます。
日水コンの株価推移(上場から2025年3月10日まで)
2024年10月26日に東証スタンダードに上場した同社の初値は1341円と公開価格1430円を下回りました。公開価格を上回る1470円まで上昇する場面もありましたが、終値は1366円と初値を上回ったものの、公開価格は下回りました。
その後は小幅ながら下値を切り下げる展開が続き、10月25日に1300円まで下落。これが2025年3月10日時点で上場来安値となっています。ここまで下げても切り返しの動きは鈍く、その後も1300円台での株価推移が中心となり、上場後初の決算発表を迎えます
同社は、2024年11月14日に24.12期3Q累計の連結営業利益は17.4億円と発表しました。24.12期の上期の営業利益は17.1億円でしたので、前四半期比で小幅な増益となりました
決算期待で株価が上昇していたこともあり、この決算を受けて株価は下落。その後もさえない動きが続いていましたが、12月に入り流れが変わります。徐々に下値を切り上げ、12月13日の終値が1437円となり、上場後初めて終値で公開価格1430円を上回りました。その後は1400円台に株価水準を訂正し、1月も安定した株価推移となりましたが、1月下旬から株価は大きく上昇することになります。
1月28日に埼玉県八潮市で道路陥没事故が発生。1月29日には、橘慶一郎官房副長官が道路陥没事故を受けて、国土交通省が全国の下水道の管理者に同様の箇所の緊急点検を要請したと明らかにしました。
これを受けて同社株へも買いが向かい、株価は右肩上がりとなります。2月14日に発表した24.12期通期決算(後述)も好感され、2月21日には2440円まで上昇し、これが2025年3月10日時点で上場来高値となっています。
3月10日は終値で1994円となり、2000円の大台は下回ったものの、事故発生前に比べれば株価は高い水準を維持しています。
【日水コンの日足チャート(上場から2025年3月10日まで)】
今後について
2月14日に発表した決算では、24.12期通期の連結営業利益は21.8億円(前の期比16.5%増)となり、上場時点の会社計画19.9億円を上回る着地となりました。なお、25.12期の会社予想の連結営業利益は23.0億円(前期比5.7%増)となっています。
同社は25.12期については中期経営計画の最終年となることから、新たな中期経営計画の策定に向けた事業基盤 の構築に引き続き注力するとしていますので、25.12期への過度な期待は禁物でしょう。それよりも新たな中期経営計画が注目されます。
最後に、2025年2月18日に日本経済新聞電子版は、都道府県が管理する大規模な下水道管の老朽化が進んでおり、耐用年数を超える管路は、東京―名古屋間を超える約380キロメートルにおよび、今後20年間で12倍に膨らむと報じています。
このような状況ですので、下水道関連の受注は増加すると考えられます。ただし、足もとの株価はかなりの期待が織り込まれていると想定されます。すぐに買い付けせずに、25.12期の業績推移をみながら押し目を狙うべきと考えます。