「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はdely(299A)をみていきます。
同社は「クラシル」、「クラシルリワード」をはじめとする複数のスマートフォンアプリおよびウェブメディアを運営しています。
「クラシル」では、調理工程を短時間でわかりやすい動画にまとめて紹介する「かんたんにおいしく作れるレシピ」動画コンテンツを中心に25万件以上(2024年10月現在)提供しており、国内最大級の「レシピ動画サービス」となっています。
「クラシルリワード」は、ユーザーが「歩く」、「チラシを見る」、「店舗を訪れる(移動する)」、「買い物をする」等の普段の行動を通して、他社ポイントやデジタルギフト、電子マネーなどに交換可能なコインを貯めることができるサービスを提供しています。
上記のほかには、業界未経験者などの正社員採用に特化した人材プラットフォームサービスである「クラシルジョブ」、美容、ファッション、占い、グルメやトラベル、雑学などの複数ジャンルのコンテンツをタイムリーに提供する「TRILL(トリル)」、クリエイターマネジメントサービスを提供する「LIVEwith(ライブウィズ)」などのサービスも提供しています。
同社の初値ですが、一定の成長性は織り込んだ値付けになっていたことや親会社であるLINEヤフー(4689)が上場後も親子関係を維持すること、さらに話題性の高い宇宙ベンチャーとの同日上場だったことから、苦戦が予想されていました。では、デリーの株価の動きをみていきます。
デリーの株価推移(上場から2025年2月6日まで)
2024年12月19日に東証グロースに上場した同社の初値は1001円と公開価格1200円を大きく下回りました。初値形成後に904円まで下落、その後は切り返し上場初日の終値は1032円なりました。
上場初日は公開価格を大きく下回る展開となりましたが、それは行き過ぎと判断されたのか、上場2日目、3日目と連日で大きく上昇し、上場3日目(12月23日)の終値は1210円と公開価格1200円を上回りました。
ここからさらに一段高といきたかったのですが勢いは続かず。徐々に下値を切り下げる展開となり、1月23日に983円まで下落し、上場初日以来の1000円割れとなりました。ただ、ここまで下げたら行き過ぎと判断されるのか上場2日目と同様に切り返しの動きとなり、再度公開価格水準である1200円まで戻しました。そして、上場後初の決算発表を迎えます。
2月3日に発表された、25.3期3Q累計(4-12月)の営業利益は20.7億円(前年同期比20.0%増)と大幅な増益となりました。通期の会社計画25.3億円(前期比7.9%増)に対する進ちょくは81.9%と良好であり、通期の上振れも期待できる着地となりました。
好調な着地の要因としては、2Q(7-9月)はメディア事業の一時的なPVの落ち込みがあったものの、3Q(10-12月)に復調。購買事業におけるクラシルリワードのユーザー数は200万MAU(月間アクティブユーザー数)を突破したことも寄与したとしています。
好調な決算を受けて株価は上昇。2月5日には1462円まで上昇し、上場来高値(2025年2月6日時点)となっています。
【デリーの日足チャート(上場から2025年2月6日まで)】
今後について
同社はメディア領域で確立されたユーザー基盤を生かし、市場成長期待の高い購買領域やHR領域へ事業を拡張させるとしています。
実際に購買領域の売り上げ割合は上昇しており、メディア事業と比べて購買領域は相対的に粗利率が低いため、25.3期2Q、25.3期3Qの売上総利益率が低下してしまっています。この売上総利益率の低下は仕方のないことであり、全体として売り上げと利益が伸びているのであれば、問題はないでしょう。
次回の決算発表ですが、正確な日時は示されていませんが、同社サイトの年間スケジュールの図によると4月後半~5月上旬に発表されるようです。25.3期通期の会社予想は25.3億円(前期比7.9%増)であり、2月6日時点で市場コンセンサス(アナリスト予想の平均)は27.0億円となっています。まずは市場コンセンサスを上回れるかが注目です。
そして、26.3期の会社予想がどの程度になるかで、決算発表後の株価の動きに差が出ると考えます。26.3期の会社計画の営業利益は30億円~35億円の範囲内になるのではないかと予想します。最低でも30億円は超えてきてほしく、そこからどれだけ上積みできるかに注目したいと思います。