あの株はいまいくら?

第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はSansan(4443)をみていきます。


2019年6月19日に東証マザーズに上場したSansanは、ユニコーン企業(企業価値10億ドルを超える未上場企業)として上場が待望されていました。一方で、赤字上場のうえベンチャーキャピタルからの売り出し主体で出口色がかなり強かったこともあり、初値に関する見方は分かれていました。

では、Sansanの上場からの動きを見ていきます。なお、同社は2021年11月30日を基準日として、普通株式を1株につき4株の割合で分割しています。株価は分割を訴求修正しています。



Sansanの株価推移(上場から2021年11月まで)

2023年7月31日に上場した同社の初値は1190円と公開価格1175円をわずかに上回る水準での初値形成となりました。

ただ、初値が伸びなかったことで、セカンダリーは勢いづきました。寄り付き後は堅調に推移、終盤にさらに一段高となりストップ高となりました。そのまま一気に行きたいところでしたが、上場2日目は1472.5円まで上値を伸ばしましたが、結局終値は1367.5円となりました。上場の勢いに乗って大きく上昇とはいきませんでした。


その後、株価は8月までは1250円台をキープしていましたが、9月に入り公開価格1175円を下回り、10月18日には885円まで下落。そこから1年ほど900円~1500円でのボックス圏での動きが続きました。


流れが変わったのは、2020年9月。上場来高値を更新し、上昇基調が明確なものになりました。2021年1月14日には、21.5期上期(6-11月)の連結営業利益が6.9億円(前年同期比6.3倍)だったと発表。21.5期1Qの連結営業利益が1.9億円(前年同期比22.1%減)だったので、2Qはかなり利益が伸長しました。併せて、1月21日付けで東証マザーズ市場から同1部への市場変更を発表したこともあり、株価は急騰しました。


2021年8月にはビジネスチャット「Chatwork」が同社の提供する法人向けクラウド名刺管理サービスである「Sansan」の「オンライン名刺」機能と連携したと発表し、株価は動意付きました。さらに、2021年10月には11月30日を基準日として、普通株式を1株につき4株の割合で分割すると発表。これも支援となり、2021年11月16日に上場来高値3642.5円をつけました。



【Sansanの週足チャート(上場から2021年11月まで)】




Sansanの株価推移(2021年12月から2023年11月まで)

週足チャートをみていただいてわかるとおり、2021年12月から株価が急落しています。ただ、その形状は併せて掲載している同期間の東証マザーズ指数(現:東証グロース市場250指数)にかなり近くなっています。


同社は2021年1月に東証1部に市場変更しましたが、グロース株の代表格として認識されていたこともあり、マザーズ指数の構成銘柄から除外されても似たような動きとなったようです。言い換えれば、この下落は個別要因ではなくグロース株全般が売られたことに伴うものと考えることができます。


2022年~2023年にかけては本当にチャートの形状が似ています。業績に関しては、売上高は順調に伸びており、23.5期には通期で営業黒字転換を達成しています。なお、24.5期通期の会社計画の売上高は326億円~336億円(レンジ形式:前期比28%増~32%増)、調整後営業利益は12億円~18億円(レンジ形式:前期比31%増~96%増)となっています。

今期も好調な業績になることが見込まれているものの、株価は業績期待を反映しているようにはみえません。



【Sansanの週足チャート(2021年12月から2023年11月まで)】


【東証グロース市場250指数の週足チャート(2021年12月から2023年11月まで)】



今後について

業績については、前期に営業黒字転換、今期業績は上述したように大きく伸びると見込まれています。また、25.5期の市場コンセンサスの営業利益予想は22億円となっており(2023年12月7日時点)、来期も利益成長が続くと予想されています。

それに加え、米国では来年にも利下げが行われるとの期待が高まってきています。そうなれば金利上昇を背景としたグロース株売りの流れが変わることになりそうです。


同社の株価は足もと1500円どころで推移していますが、業績期待やグロース株の見直しなどの後押しがあれば、早期の2000円の大台回復は十分あり得えます。大きな流れの変化のタイミングはそれほど遠くないはないと考えます。


この連載の一覧
第49回 物流の安全に関するコンサルティングの「アスア」 決算発表後の上昇で流れ変わるか?
第48回 「らぁ麺はやし田」など運営の「INGS」 期待はく落で下落はチャンス?
第47回 ドローンベンチャーの「ブルーイノベーション」 来期の黒字転換期待が高まれば・・・
第46回 IoTプラットフォーム「SORACOM」展開の「ソラコム」 26.3期以降に成長を加速できるかが注目点
第45回 若者向けアパレルブランド展開の「yutori」 株価推移に特徴あり
第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か
第43回 スペースデブリ除去の「アストロスケール」 株価は右肩下がり続くが
第42回 製造業界向けAIベンチャーの「VRAIN Solution」 自動化・DX化ニーズの取り込みに期待
第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?
第40回 ラーメンチェーン展開の「魁力屋」 成長期待はあるものの
第39回 軽量化金属部品の製造加工の「STG」 地味な業態だがきらりと光る会社
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております