「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はモイ(5031)をみていきます。
ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の企画、開発、運営を行う同社は2022年4月27日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。
知名度の高いサービスへの期待があった一方、アイテム課金が主な収益源であることから不安定な課金方法に対する懸念もありました。また、公開価格の1.5倍以上なら解除されるベンチャーキャピタル(VC)の持ち分が4社で316万6000株と、公開株数271万6000株を超えていたことから、ロックアップ解除に対する警戒もありました。
結局、仮条件は想定価格470円を上限とした430円~470円のレンジで設定され、公開価格は仮条件の上限となる470円で決定しました。
では、モイの上場後の株価の動きを見ていきたいと思います。
モイの株価推移(上場から2022年末まで)
2022年4月27日に上場した同社の初値は、公開価格470円のほぼ2倍となる902円と好調なスタートとなりました。その後も堅調な動きが続き、上場後3営業日目となる5月2日には1387円まで上昇。これが上場来高値となります。
その後の株価は下落トレンドとなり、2022年7月4日には496円まで下落、500円を下回りました。しかし、その後は切り返しの動きとなり、8月3日には900円まで上昇することとなりました。
上昇の起爆剤となったのが、7月21日に発表された、3Dのバーチャル空間でライブ配信に参加できる「ツイキャスVV」のβリリースです。
「ツイキャスVV」は「スマホでもブラウザだけで動く、快適に配信できる、コミュニケーションが楽しくなるといった、これまでの3D空間の中でも特に配信者にやさしいシンプルで手軽なサービス」とのことで、期待から買いが入りました。
しかし、8月高値からまた下落基調となり、2022年12月には株価は300円台まで下落しました。株価がここまで下落した要因は業績です。
同社は11月16日に23.1期通期の連結純損益予想を従来の2.5億円の黒字から9300万円の赤字(前期は2.5億円の黒字)に引き下げました。一転赤字見通しとなったことで株価は急落、その後も軟調推移となりました。
【モイの週足チャート(2022年4月~2022年12月)】
モイ株価推移(2023年1月~6月14日)
2023年に入り2月に400円台まで株価は回復しますが、3月に入り急落。3月16日には上場来安値309円をつけました。
急落のきっかけは決算発表です。同社は3月13日に、24.1期通期の営業利益予想を7400万円(前期比28.5%減)にすると発表しました。減益見通しが嫌気され株価は下落、その後は300円台での推移が続きました。
【モイの日足チャート(2023年1月~6月14日)】
今後の株価は?
業績で売られるイメージの同社ですが、それを払しょくするような好決算を6月14日に発表しました。
24.1期1Q(2-4月)の営業利益は4878万円(前年同期比75.4%増)となり、通期計画7400万円に対する進ちょくも65.9%と良好です。
「ツイキャス」においてサンリオキャラクターといった人気キャラクターとのコラボレーションを含むユーザー参加型キャンペーンの開催したほか、既存機能改善や新機能公開を実施。この結果、重要指標の一つである課金ユーザー1人当たりの平均課金額が堅調に推移したとのことです。また、マーケティング施策の最適化や決済手数料の減少などの販管費の減少も寄与しています。
上記のように営業利益は大幅な増益となっていますが、売上総利益が24.1期1Q7.9億円(前年同期比は8.0億円)と減少している点は気になります。また、1Qの決算説明会資料には「マーケティング費用が一部2Q以降にスライドした」との記載があります。
6月14日に決算発表を受けて、翌15日の株価はストップ高となりました。2Q以降も好調が続くとすれば、株価には水準訂正の余地は大きいと思います。
しかし、1Qの営業利益が良かったからといって2Q以降も好調が続くとみるのは、早計かもしれません。売上総利益の減少やマーケティング費用のスライドは懸念材料です。16日に株価が下落したのはこのような点が警戒されたのかもしれません。
短期勝負であれば、足もと値動きが良くなっていますのでチャンスを狙ってみても良いのですが、中長期投資であれば2Qの決算発表で利益の改善を確認してからのほうがよいと考えます。