あの株はいまいくら?

第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はトランザクション・メディア・ネットワークス(5258 以下、TMN)をみていきます。


2023年4月4日に東証グロースに上場したTMNは、主に流通業者を顧客(加盟店)とし、複数のキャッシュレス決済事業者と加盟店をつなぎ、あらゆるキャッシュレス決済サービスをワンストップで提供するゲートウェイサービスと、決済端末の販売や関連する開発などを展開しています。


TMNは、三菱商事とトヨタファイナンシャルサービスの共同出資によって設立された電子決済の共通インフラ会社であり、NTTグループやクレジットカード大手各社も出資していることから、株主に大手一流企業が並ぶサラブレッドとして注目されました。では、TMNの上場後の株価の動きをみていきます。



TMNの株価推移(上場から2023年7月4日まで)

2022年4月4日に上場した同社の初値は1388円と、公開価格930円を大きく上回る堅調な初値がつきました。ただ、公開規模120億円超の案件だったこともあり、初値形成後は軟調な値動きとなりました。上場後は水準を切り下げる展開となり、4月12日には1045円まで下落。1000円割れが意識されましたが、ここから上昇トレンドに転換することになります。


株価は好材料の後押しもあり4月中旬から6月上旬まで上昇が続きました。材料としては、5月1日にPOS(販売時点情報管理)のレシート印字情報をデータベース化する技術に関して特許を取得したと発表し、株価は急騰。5月8日には23.3期通期の営業利益予想を従来の4.2億円から5.6億円(前期比21.2%減)に上方修正することを発表し、一段高となりました。5月15日には24.4期通期の営業利益予想を大幅増益となる8.0億円(前期比42.0%増)にすると発表しています。


6月中旬にいったん売りに押される局面はありましたが、6月30日に令和5年度新潟市概念実証支援補助金制度に、「AI/IoTカメラを用いたバス利用状況可視化事業におけるシステム概念実証事業」として採択されたと発表したことが材料視され、7月3日、4日と連日で大幅高となり、4日の高値1978円が上場来高値となっています。


【TMNの日足チャート(上場から2023年7月4日まで)】



TMNの株価推移(2023年7月4日~2023年9月27日)

7月4日に上場来高値を更新しましたが、そこから株価はきれいな右肩下がりになります。8月14日に24.3期1Q(4-6月)の営業利益は1.7億円(前年同期比3.0倍)だったと発表し、株価は一時的に反発しましたが流れは変わらず。下値を切り下げる展開が続き、9月22日に上場来安値となる837円まで下落しました。なお、足もとの株価は800円台半ばで推移しており、公開価格930円を下回っています。


【TMNの日足チャート(2023年7月4日~2023年9月27日)】


今後について

同社の株価が軟調となっている要因については、長期金利上昇の影響を受け高PER株に厳しい環境となっていることが挙げられます。なお、同社のPERは45倍程度(2023年9月28日時点)となっています。

ただ、24.3期1Qの営業利益が大幅増益となるなど、業績は堅調です。要因としては、好調なストック売り上げの増加により増収となったこと、利益率の高い開発案件がけん引し売上総利益率が向上したことが挙げられています。


11月中旬に発表が予定されている上期決算において、順調な進ちょくが確認できれば、1000円の大台回復も期待されます。ただ、本格的な底打ち反転は長期金利の低下期待が高まるまで難しいと想定されますので、もう少し時間がかかると考えます。



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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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