あの株はいまいくら?

第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はBASE(4477)をみていきます。


Eコマース(電子商取引)のプラットフォーム「BASE」が主力のBASEは、2019年10月25日に東証マザーズに上場しました(現在は東証グロースに上場)。「BASE」は、誰でも簡単にデザイン性の高いネットショップを作成でき、決済機能も有していることが特徴です。


知名度が高いSaaS関連株として注目されたものの、ファンドの出口色が強いことに対する警戒感から、厳しいスタートが見込まれていました。では、ここからBASEの上場後の動きをみていきます。なお、同社は2021年3月31日を基準日として1株を5株に分割しています。当コラムでは株価を遡及修正して表示します。




BASEの株価推移(上場から2020年10月9日の週まで)

同社の初値は242円(分割遡及修正前1210円)と公開価格260円(分割遡及修正前1300円)を下回りました。公開価格割れとはなりましたが、寄り付き時に大口個人投資家としてメディアにも登場するcis氏がこの時に10万株の買い注文(うち約定は6万0900株)を入れたことをツイッターで公表し、話題になりました。

上場初日は、初値と安値が同値となり、初値決定後は堅調な値動きとなりました。結局、終値は266.6円(分割遡及修正前1333円)となり、公開価格を上回りました。


上場後も堅調な動きが続き、株価は300円台に乗せました。しかし、2020年に入り全体相場が大きく崩れるなかで、同社株も下落。3月13日には上場来安値154.8円をつけました。


全体の株価下落要因は、新型コロナウイルスの感染拡大懸念です。国内では、2020年3月13日に新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立。4月に緊急事態宣言が行われ、外出自粛が求められるようになりました。


ただ、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛は、同社にとっては追い風となりました。2020年5月15日には、Eコマースプラットフォーム「BASE」のショップ開設数が100万ショップを突破したことを発表しました。

リリースでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、これまでインターネットでの販売を事業上必要としていなかったショップが販路としてネットショップ開設という手段を選択したことも大きく影響していることが示されていました。


その後、同社がコロナ禍における注目銘柄との認知が進み、それに伴って株価も上昇していきました。

2020年8月には20.12期通期の営業損益予想の上方修正を発表。巣ごもり消費、消費者のEC移行および実店舗のオンラインシフトの加速などにより、新規ショップ開設数および流通総額が大幅に増加したことが要因としています。


株価は5月から右肩上がりとなり、2020年10月8日に上場来高値3448円をつけました。同年3月の安値154.8円からは22.3倍、前年の初値242円からでも14.2倍と驚異的な株価上昇となりました。


【BASEの週足チャート(上場から2020年10月9日の週まで)】



BASEの株価推移(2020年10月9日の週から2022年6月24日の週まで)

2020年10月に上場来高値を付けましたが、年末に向けて1000円台までいっきに下落。年明けからは切り返しの動きとなり2000円の大台を回復しましたが、残念ながら勢いはここまででした。ここから株価は右肩下がりとなります。


株価下落の要因ですが、業績期待のはく落と考えます。

同社が2021年2月に発表した20.12期の営業利益は8.0億円の黒字となりましたが、併せて発表した21.12期の営業損益予想は14.3億円の赤字~9.3億円の赤字(レンジ形式)と大幅な赤字予想でした。

多くのアナリストが大幅な黒字を予想していましたが、まさかの赤字予想。ネガティブサプライズで、株価は急落することになりました。


結果ですが、会社予想どおりとなり、21.12期の営業損益は9.8億円の赤字での着地となりました。コロナ禍という追い風が吹くなかでの、大幅赤字は投資家心理を冷やしたと考えられます。株価は下落が続き、2022年6月には200円台に沈む場面も見られました。


【BASEの週足チャート(2020年10月9日の週から2022年6月24日の週まで)】



BASEの株価推移(2022年6月24日の週から2024年6月7日の週まで)

2023年5月に型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行し、本格的にアフターコロナが意識されるようになりました。同社の株価推移をみると、前年から徐々にそれが織り込まれていたようです。

2022年秋から徐々に水準を切り下げ、200円台での株価推移が続きました。その後、300円台を回復する局面もありましたが、そこ定着させることはできず200円台に押し戻される展開となっています。そして、足元(2024年6月)も200円台後半で推移しています。


【BASEの週足チャート(2022年6月24日の週から2024年6月7日の週まで)】



まとめと今後について

同社は、2024年5月9日に24.12期通期の連結営業損益予想を従来の2.0億円の赤字から0円(レンジ形式)としていたものを、0円(前の期は4.3億円の赤字)に上方修正すると発表しました。


併せて発表した、24.12期1Q(1-3月)の連結営業損益は2.1億円の黒字(前の期は2.7億円の赤字)となっています。なお、1Qの黒字は、販管費が想定より抑制されたことにより、一時的に黒字化したものとのことです。しっかりとした黒字定着はもう少し先になりそうです。


一方、売上高は順調に増加しています。22.12期の売上高は97.4億円、23.12期の売上高は116.8億円、24.12期の会社予想の売上高は147.0億円となっています。

気になるのが通期の黒字化がいつになるかですが、アナリスト予想の平均である市場コンセンサスの24.12期の営業利益予想は3.7億円の黒字と黒字転換が見込まれています。さらに、25.12期の市場コンセンサスの営業利益予想は11.7億円の黒字と、さらに利益が伸長すると予想されています。


2024年6月12日の終値は274円、初値は242円でしたので、上場から4年半が経過しましたが同水準となっています。壮大な「行って来い」ですが、コロナ禍を経て同社の本当の力を示す局面が来たと感じています。黒字化後の利益成長が速いのがSaaS関連の特徴です。今後の業績拡大に期待してみるのも面白いと思います。


この連載の一覧
第49回 物流の安全に関するコンサルティングの「アスア」 決算発表後の上昇で流れ変わるか?
第48回 「らぁ麺はやし田」など運営の「INGS」 期待はく落で下落はチャンス?
第47回 ドローンベンチャーの「ブルーイノベーション」 来期の黒字転換期待が高まれば・・・
第46回 IoTプラットフォーム「SORACOM」展開の「ソラコム」 26.3期以降に成長を加速できるかが注目点
第45回 若者向けアパレルブランド展開の「yutori」 株価推移に特徴あり
第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か
第43回 スペースデブリ除去の「アストロスケール」 株価は右肩下がり続くが
第42回 製造業界向けAIベンチャーの「VRAIN Solution」 自動化・DX化ニーズの取り込みに期待
第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?
第40回 ラーメンチェーン展開の「魁力屋」 成長期待はあるものの
第39回 軽量化金属部品の製造加工の「STG」 地味な業態だがきらりと光る会社
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております