あの株はいまいくら?

第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は雨風太陽(5616)をみていきます。


生産者とコミュニケーションを取りながらスマートフォンで食材を直接購入できるプラットフォーム「ポケットマルシェ」を運営する雨風太陽は、2023年12月18日に東証グロースに上場しました。雨風太陽の本店所在地は岩手県花巻市であり、社名は岩手県花巻市が出身の宮沢賢治作品にちなんだものだそうです。


「ポケットマルシェ」は、全国の農家・漁師から、新鮮な旬の食材を直接購入できるアプリであり、野菜や果物、魚、肉など1万6000品を超える食材から、 お気に入りの一品を探せるとしています。


同社は赤字上場ではありましたが、公開規模が6億円程度とスモールIPOであったことから、堅調な初値が期待されていました。では雨風太陽の上場後の動きをみていきます。



雨風太陽の株価推移(上場から2024年3月29日まで)

同社の初値は1320円と公開価格1044円を上回りました。高く始まったものの、その後は売りに押され、一時1041円と公開価格を下回る水準まで下落。結局終値は1122円と初値を下回りました。

初日の高値は1326円とほぼ初値天井だったことで2日目以降の株価推移が不安視されました。しかし、その後は強い動きとなり、12月28日には上場来高値となる2238円まで上昇しました。


しかし、勢いはここまで。翌29日は高く始まったものの売りに押され、終値で2000円を割り込みました。2024年に入っても、水準を切り下げる動きが続きました。1月18日に群馬県と連携し、「ポケットマルシェ」において1月20日に群馬県産品を紹介するライブコマースを開催すると発表し、一時的に動意づきましたが、流れを変えるまでには至らず、その後株価は1500円どころで推移することになります。


株価の横ばい推移が続くなか、2月14日に上場後初の決算発表を迎えました。23.12期の営業損益は2.3億円の赤字(前の期は4.8億円の赤字)で着地し、24.12期の会社予想の営業損益は0.6億円の赤字としました。

決算を受けた翌15日の株価の反応は大幅下落。赤字幅は縮小するものの、今期も営業赤字を見込んでいることが嫌気されたと考えられます。残念ながら決算発表でも流れを変えることはできませんでした。


3月に入り、さらに水準を切り下げます。昨年12月のIPO銘柄から3月のIPO銘柄への資金移動があったと考えられます。そして、3月末には1000円台前半まで株価は下落。いよいよ1000円の大台割れが視野に入ってきました。



【雨風太陽の日足チャート(上場から2024年3月29日まで)】



まとめと今後について

株価反転のためにはまずは営業黒字転換が必要と考えます。24.12期の会社予想の営業損益は0.6億円の赤字であり、若干の上振れで黒字転換する可能性があります。今期は特に四半期の営業損益の推移を確認することが必要になると考えます。


足もとでは売買が細ってきていますので、ロックアップ解除の影響も懸念されます。3月16日にベンチャーキャピタルの保有株のロックアップが解除されています。これには公開価格の1.5倍での解除条項が付されていたので、すでに一部が売却されている可能性がありますが、株価が2000円近辺で推移していたのは年末年始の限られた期間です。また上場前の既存株主の多くが1800円で取得しており、2000円前後の売却ではそれほど利益は出ないことから、売却が進んでいない可能性があります。今後株価が上昇してくれば、上値を抑える要因になり得ますので注意が必要です。


今後のベストシナリオとしては、黒字転換から株価が上昇トレンドとなり、ベンチャーキャピタルなどの売り物をこなしながら上場来高値更新をめざすという展開を期待したいのですが、四半期での黒字転換だけでは、力不足と思います。本格的な株価上昇には、一時的ではなくしっかりと黒字が定着する必要があると考えます。黒字が定着すれば、固定費の多い収益構造上、利益の伸びは加速すると考えます。


この連載の一覧
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております