「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はABEJA(5574)をみていきます。なお、社名のABEJAはスペイン語で「ミツバチ」という意味です。
2023年6月13日に東証グロースに上場したABEJAは、DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム「ABEJA Platform(アベジャプラットフォーム)」を基盤として顧客企業のDXを総合的に支援する「デジタルプラットフォーム事業」の運営を行っています。
アベジャプラットフォームはディープラーニングをベースに開発したソフトウエア群です。顧客企業は必要なデータをプラットフォームに蓄積し、安全な環境の中でデータ加工などを行い、あらかじめ準備しているAIモデルを組み合わせることにより、簡便に属性推定システムや異常検知システムなどのAIシステムを構築できるとしています。では、ABEJAの上場後の動きをみていきます。
ABEJAの株価推移(上場から2023年11月17日まで)
2023年6月13日に上場した同社ですが、上場初日は大幅な買い越しのまま初値は付きませんでした。
上場2日目に付いた初値は4980円と公開価格1550円を大きく上回りました。しかし同社の株価上昇はここからが本番。強い動きが続き、6月22日には1万0300円まで上昇しました。これが同社の上場来高値となっています。
しかし、1万円超えで達成感が出たのか、その日から下落が続きます。6月28日の終値は6420円と大きく水準を切り下げ、その後は6000~7000円台の動きが続きました。そして23.8期3Q累計決算発表を受けて、株価はさらに一段安となります。
7月13日に発表された23.8期3Q累計の純利益は3.7億円でした。通期の会社計画3.2億円億円を上回る好調な着地となりましたが、通期予想が据え置かれたことから、株価は失望売りが優勢となりました。
決算発表後に株価は5000円台まで下落。その後5000円を挟んで上下1000円程度でのボックス圏の動きが続きました。
【ABEJAの日足チャート(上場から2023年11月13日まで)】
ABEJAの株価推移(11月13日から2024年2月28日まで)
11月7日に5580円まで上昇した後は2024年1月中旬まで下落トレンドが継続し、1月18日には2512円まで下落。これが上場来安値となっています。
23.8期通期の決算発表は10月12日にすでに行われていましたし、この株価下落に関しては個別に悪材料が出たわけではないと思われます。
要因としては、上場がAIバブルの状況であったこともあり、そこで形成された株価が高すぎるとの判断から、調整が行われたと考えられます。2023年12月のIPOが低調であったことも、同社株が割高との判断に拍車をかけた可能性があります。
ただ、これで終わらないところが同社のすごいところです。1月に上場来安値を付けてから、切り返しの動きとなります。この株価上昇の流れは、以下と考えます。
1.さすがに下げ過ぎとして見直し買いが発生
2.政府が2月1日に、国産の生成AIの開発力を強化するため、基盤モデルを開発する同社を含む国内7者を採択し支援する方針を固めたことがわかったと報じられる→生成AI関連として物色の対象に
3.英半導体設計会社アーム・ホールディングスや米エヌビディアの好決算や強気見通し→AIバブル再燃
このような流れから、同社株に資金が向かったと考えられます。株価は2月に5000円の大台を回復しています。
【ABEJAの日足チャート(11月13日から2024年2月28日まで)】
今後について
同社が1月11日に発表した24.8期1Q(9-11月)の営業利益は5600万円(前年同期比65.1%減)でした。人員増・採用増による販管費増により、大幅な減益での着地となりました。
なお、同社は1Q売上高は想定を下回ったものの、見込んでいたプロジェクト開始の遅れが主な要因であり、2Q以降に売り上げを計上する予定としています。
また、コストコントロールはできており、2Q以降、リード数の増加と従業員数増によるリソース拡大を売り上げ伸長につなげていくとのことです。
同社はこれまで決算発表などで大きく動くというよりも、AI関連として物色が向かったときに大きく動いていました。この傾向は今後も続くと思いますが、業績が改善してくれば、さらなる株価上昇につながるはずです。
4月に発表が予定されている上期決算で劇的に業績が改善することは難しいと思いますが、同社が目論見通りに売り上げを伸長させることができれば下期にはその結果が数字として出てくる可能性があります。そこに期待してみるのも面白いと考えます。