「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はアストロスケールホールディングス(186A)をみていきます。
同社は、スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去・防止などの軌道上サービス(OOS)の提供を目指す宇宙ベンチャーであり、その上場はispace(9348)、QPS研究所(5595)に続くものとして注目されました。
ispace、QPS研究所ともに、上場時には初値が高騰。さらに両社ともに上場後も高値を取りに行く展開となっていたことから、アストロスケールにも同様の展開を期待する声がありました。
しかし、一部のアナリストはアストロスケールの値付けが、宇宙ベンチャー人気を踏まえたものになっていたことから、ispace、QPS研究所のような株価の動きにはならないと予想していました。
では、実際にどのような株価の動きになったのか、アストロスケールの上場からの株価の動きを確認します。
アストロスケールの株価推移(上場から2024年8月1日まで)
同社の初値は1281円と公開価格850円を大きく上回りました。初値形成後は上値を1581円まで伸ばしましたが、その後は失速し上場初日の終値は1375円となりました。なお、この上場初日の高値1581円が上場来高値となっています。
上場初日の高値が上場来高値となっていますので、その後の株価は右肩下がりの展開となっています。
もちろん、一時的に株価が上昇する局面はありました。では、材料と株価の動きをみてみましょう。
6月28日にNHKは、国際宇宙ステーションに近い高度で、日本時間の27日、いわゆる「宇宙ゴミ」が確認されたことから、滞在していた宇宙飛行士が一時、退避したと報じました。
この報道を受けて、株価は一時5%弱上昇。しかし、終値では前日比でマイナスとなるなど、勢いは続きませんでした。
7月9日には、同社は今年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ)」のミッションにおいて、観測対象のデブリの周回観測の実施中に行われた自律的なアボートにより、安全運用のための衝突回避機能の有効性を実証したと発表しました。
この発表を受けて、翌10日の株価は一時6%超上昇しましたが、引けにかけて上げ幅を縮め、終値は前日比1.6%高と小幅な上昇にとどまりました。
7月30日には、同社は子会社のアストロスケールが今年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」のミッションにおいて、観測対象のデブリの周回観測に成功したと発表しました。
この発表を受けて、同日の株価は一時9%超上昇しましたが、引けにかけて上げ幅を縮め、終値は前日比4.4%高となりました。
7月31日には、同社は米国連結子会社であるAstroscale U.S.が、APS-Rの変更契約を締結し、受注金額が増額されたと発表しました。
この発表を受けて、同日の株価は一時12%超上昇しましたが、引けにかけて上げ幅を縮め、終値は前日比1.5%高と小幅な上昇にとどまりました。
このように良い材料が出て上昇しても、売りが待ち構えており、結局波に乗り切れないという状況が続いています。
【アストロスケールの日足チャート(上場から2024年8月1日まで)】
今後について
アストロスケールのスペースデブリ除去や人工衛星寿命延長という事業は、人類の生活を維持するために必須な事業と考えられます。宇宙関連ベンチャーへの政府支援も期待できますので、10年先、20年先を見据えて投資してみるのも面白いと思います。
ただ、赤字が続いていることもあり、投資する際は「ハイリスク・ハイリターン」であることをしっかりと認識し、余裕資金の範囲内で行うことが望ましいと考えます。