あの株はいまいくら?

第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はグリッド(5582)をみていきます。


2023年7月7日に東証グロースに上場したグリッドは、人工知能を用いた計画最適化システムの開発・販売・保守・運用サポートを行っています。


AIベンチャーの粗利率は普通のシステムインテグレーターに比べて高い傾向にはありますが、同社はインフラ分野に特化することでより高い利益率を上げています。さらに三井物産、丸紅、伊藤忠商事が出資しているなど見栄えのよさもあり、初値高騰が見込まれていました。では、グリッドの上場後の動きをみていきます。



グリッドの株価推移(上場~2023年11月17日)

2023年7月7日に上場した同社ですが、上場初日は大幅な買い越しのまま初値が付きませんでした。

上場2日目に付いた初値は6400円と公開価格2140円を大きく上回りました。しかし、寄り付き後は急落し、終値は5440円でした。同社の上場来高値は6400円であり、文字通りの初値天井となっています。


その後も株価は下げ止まらず、下値を切り下げる展開が続きます。そして、4000円を下回ったところでようやく下げ止まり、もみ合っていたところで上場後初の決算発表を迎えることになりました。


8月14日に発表された23.6期通期の営業利益は2.1億円(前期比2.9倍)となり、会社計画1.9億円を上回りました。そして、24.6期の営業利益予想は3.4億円(前期比64.3%増)としました。


23.6期の着地は会社予想を上回り、24.6期の見通しも大幅増益となりましたが、株価は急落。これについては投資家の期待が高すぎたと考えられます。

そこから株価はまた下値を切り下げる展開が続き、11月17日には2051円まで下落しました。これが上場来安値となります。


公開価格2140円を下回る水準まで株価が下げるダメ押しとなったのは24.6期1Q決算発表と考えます。同社は11月14日に24.6期1Qの決算を発表しましたが、営業損益が9300万円の赤字となりました。これにより業績への懸念が台頭したと考えられます。


【グリッドの日足チャート(上場~2023年11月17日)】




グリッドの株価推移(2023年11月17日~2024年2月14日)

11月17日に上場来安値をつけましたが、決算説明会資料では「1Qがボトムとなる売り上げの季節性に採用加速に伴う人件費増加が加わり、一時的に営業損失が拡大した」と説明されています。1Qではフロー型売り上げを中心に受注高と受注残高はいずれも増加していたこともあり、業績への懸念は徐々に解消されたと想定されます。


懸念解消だけでは株価反転の材料として弱かったのですが、大きな起爆剤がありました。同社は11月20日に、四国電力(9507)と共同開発したAIを活用した電力需給計画立案システム「ReNom Power」について、その導入効果を検証し、その結果を発表しました。

従来のオペレーションで困難だった複雑な制約も踏まえた膨大な組合せの発電計画を立案し、期待収益の高い計画の選択が可能になり、エネルギーコスト削減や電力市場での収益向上が実現し、年間十億円を超える収益効果を得ることができたということです。


この発表を受けて株価は急騰。そこから上昇トレンドに転換し、年末にかけて3000円の大台を回復しました。


【グリッドの日足チャート(2023年11月17日~2024年2月14日)】



今後について

2月14日に発表された24.6期上期の決算では、営業利益が300万円の黒字となり、小幅ながら黒字転換となりました。

2Q売り上げは、これまでの四半期会計期間で最大の収益として着地したとのことです。3Q以降もさらに売り上げを伸ばしてくとのことなので、業績拡大が期待されます。


上場来安値2051円からはかなり上昇しましたが、電力需給計画立案システム「ReNom Power」など同社のポテンシャルは高いと考えます。下期、来期に期待できるな銘柄ですので、引き続き株価推移を追っていこうと思います。


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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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