「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はオカムラ食品工業(2938 以下、オカムラ食品)をみていきます。
サーモントラウトの養殖事業などを行っているオカムラ食品は、2023年9月27日に東証スタンダードに上場しました。同社は、青森県とデンマークで生食用のサーモントラウトの養殖を行うとともに、国内外で水産品の加工・販売を行っています。
初値については、水産会社としてバリュエーションの抑えられた値付けになっていたものの、今期(24.6期)の営業利益予想が19.5億円(前期比39%減)と減益見込みとなっていたことや、上場日がIPOへの資金流入が細りやすい9月決算の権利取り最終日であったことから、上値は重くなるとみられていました。
では、オカムラ食品の上場からの動きを見ていきます。
オカムラ食品の株価推移(上場から2023年12月19日まで)
同社の初値は2564円と公開価格1680円を大きく上回りました。寄り付き後も堅調に推移し、上場日の終値は3065円(ストップ高)となりました。
しかし、営業減益予想となっていることもあり、上場初日の株価上昇は行き過ぎという印象。実際に上場初日の高値3065円が12月に更新されるまで上場来高値となっていました。その後の株価は下落基調となり、10月24日には上場来安値となる2031円まで下落しました。2000円台をキープしたことで、ここから切り返しの動きになりますが、2000円台半ばでいったん頭打ちとなります。
業績については、11月14日に上場後初めての決算を発表。24.6期1Qの営業利益は11.6億円となりました。通期の会社計画19.5億円に対する進ちょくは59.7%と良好でしたが、業績予想の上方修正は行われませんでした。
通期予想据え置きが嫌気されたのか、決算発表を受けた反応は売りとなりました。ただ、前期(23.6期)1Qの営業利益は12.8億円でしたので、24.6期1Qの営業利益は前年同期比では9%程度の減益です。24.6期は前期比で大幅減益を見込んでいますが、1Qの着地を見る限り、そこまで大きな減益になるとは思えません。見方の分かれる決算だったといえます。
株価に変化が出たのは11月後半です。11月23日付の日本経済新聞朝刊は、同社が24.6期に海外売上高を120億円強と前期に比べ2割増やすと報じました。この報道が出たのが祝日でしたので、翌営業日となった24日に株価は大幅高となりました。
その後はいったん売りに押されますが、12月に入り流れが一変。上値を切り上げる展開になります。12月8日には上場初日に付けた上場来高値を更新。12月20日には3295円まで上昇しました。
12月の上昇については、これといった材料は見当たりません。11月30日に「オカムラ食品工業公式オンラインショップ」が新規オープンしたと発表していますが、さすがにこの発表にここまで株価を押し上げるインパクトがあるとは思えません。
24.6期1Qの結果や24.6期の海外売上高2割増目標の報道を受けて、見直し買いが入ったと考えるのが妥当でしょう。また12月に入り原油価格が下落したことも株価の追い風になったと考えらえます。
【オカムラ食品の日足チャート(上場から2023年12月19日まで)】
今後について
同社は円安や原油高によるコスト高の影響をもろに受けるタイミングでの上場となりました。また直接的な影響は受けていないようですが中国の水産物輸入停止というマイナス材料も発生しました。非常に悪いタイミングでの上場だったものの、今後は良くなるだけと考えることができます。
同社は、日本食のニーズが盛り上がる東南アジアを中心に生食用サーモンなど水産物の販売を伸ばすとしており、今後の海外展開による成長が期待されます。
また、現在は株主優待制度をありませんが、11月に「オカムラ食品工業公式オンラインショップ」が新規オープンしています。自社商品の認知度向上や集客目的にオンラインショップで利用できる割引券などの優待が導入される可能性もゼロではないでしょう。
24.6期は1Q時点での進ちょくは良好であり、業績の上方修正が期待されます。来年2月に発表されるであろう2Q決算の前に仕込んでおくのもよいと考えます。