「あの株はいまいくら?」では、話題になった株の現状を確認します。今回はユーチューバー事務所のUUUM(3990)についてみていきます。なお、会社名の由来は決める時に「うーむ」と悩んだからだそうです。
UUUMの株価推移(上昇局面)
UUUMは2017年8月30日に東証マザーズに上場しましたが、拡大する動画広告市場と、ユーチューバー事務所としての初の上場になることへの期待などにより買いが殺到しました。
初値は分割を遡及修正すると2233.3円(分割考慮前:6700円)となりました。公開価格は分割を遡及修正すると683.3円(分割考慮前:2050円)でしたので、初値は公開価格を大きく上回りました。
その後売りに押される局面がありましたが、徐々に安定し、2018年7月まで1000円台半ばで推移していました。トレンドが大きく転換したのは2018年7月で、そこから2019年2月の上場来高値6870円到達まで上昇トレンドが継続しました。
下図は、上場時点から2019年6月までのUUUMの週足チャートです。
上昇の要因
上昇トレンドに転換した要因としては、2018年7月13日の決算発表が考えられます。18.5期通期の営業利益は7.2億円(前の期比2.0倍)と大幅な増益となりました。また、19.5期通期の連結営業利益予想は8.5億円(前期比19%増)としました。この発表により、今後の業績への期待が高まったと考えられます。
また、UUUMは2018年9月18日に、9月30日を基準日として、1株を3株に分割することを発表しました。これも株価上昇に寄与したと考えられます。
次に証券会社が新規にカバレッジを開始したことも影響したようです。岩井コスモ証券は18.5期通期の決算発表後に、19.5期は会社計画を上回る前期比4割の営業増益が期待できるとコメントし、投資判断「A」、目標株価2166.7円(分割を遡及修正)として、新規カバレッジを開始しました。
さらに、2018年8月にいちよし経済研究所が、国内で最も利用頻度の高いオンライン動画メディア「YouTube」で先行優位性を確立していると判断し、レーティング「A」、フェアバリュー3333.3円として、新規カバレッジを開始しています。
両社はUUUMが上場来高値を付けた2019年2月にかけて何度か目標株価の引き上げを行いました。なお、2019年1月には岩井コスモ証券は目標株価5500円、いちよし経済研究所は目標株価7500円まで引き上げています。
UUUMの株価推移(下落局面)
2019年2月に上場来高値6870円を付けましたが、その後下げに転じ、一時的に4000円を下回る局面がありました。ただ、そこからは切り返し5000円台を回復、安定推移となっていました。トレンドに大きな変化が出たのは、2019年12月です。
下図は、2018年12月から2020年8月までのUUUMの週足チャートです。
下落の要因
2019年12月から下落トレンドとなっていますが、調べてみたところ、同月にはこれといった大きな悪材料はみつかりませんでした。ただ、退所者が目立ち始めたのもこの時期です。1月には木下ゆうか氏が、4月に関根理紗氏やハイサイ探偵団が退所しています。UUUMの勢いに陰りが見え始めた時期といっても過言ではないでしょう。
業績については、2020年1月14日に発表した20.5期上期(6-11月)の連結営業利益は7.7億円(前年同期比7.3%増)でした。増益となったものの、20.5期1Q(6-8月)の連結営業利益は4.2億円(前年同期比29.6%増)でしたので、利益の伸びが鈍化しています。成長期待が高かったので、これが失望につながったようです。
また、この時期は新型コロナの感染拡大の初期段階です。2020年1月9日に中国国営中央テレビが、武漢で感染が拡大していた原因不明のウイルス性肺炎について、新型のコロナウイルスが検出されたと伝えました。
ただし、新型コロナ感染拡大への懸念で日経平均株価が大きく下げたのは2020年2月後半から3月半ばにかけてでした。したがて、下落トレンドに転じる直接の原因ではないと思われます。
UUUMの株価は2019年12月から2020年3月の4カ月程度で半値となりました。要因は「成長鈍化懸念や退所者問題があったところに、新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけた」と考えます。
上場来高値から10分の1に
下図は、2021年9月から2022年9月まで(直近1年)のUUUMの週足チャートです。2022年1月に上場来安値671円を付けました。2019年2月の上場来高値6870円からは10分の1となっています。
ただし、そこから切り返しの動きとなり1500円程度まで上昇、足元は1000円をやや下回る水準で推移しています。
最後に
同社は2020年~2021年にかけてユーチューバーの退所が相次ぎましたが、2021年10月に事業戦略を転換し、アドセンス(YouTubeから収益)に依存しない売り上げ構造をめざすことにしました。
今後、アドセンス以外の売り上げが占める割合を22.5期の49%から24.5期は73%に引き上げる計画です。具体的は、「グッズ販売」や「イベント」、「広告(企業とのタイアップ案件)」などの拡大をめざします。なお、22.5期4Qに四半期で初めてアドセンス以外の売り上げがアドセンスを上回っています。
上場直後ほどの勢いはないものの、アドセンス以外の売り上げを積極的に拡大させる戦略は順調に進ちょくしています。コロナ後のイベント拡大が収益貢献する可能性もありますし、新生UUUMに期待してみるのも面白いと思います。