「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はヒューマンテクノロジーズ(5621)をみていきます。
クラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」の開発・販売を行う同社は、2023年12月22日に東証グロースに上場しました。同社は、自社の勤怠管理SaaS市場におけるポジショニングについて、「業界のパイオニアであり、カスタマイズ性が求められる同分野において、機能要件を満たしているだけではなく、コストリーダーシップを発揮できるプレイヤーである」と考えています。
クラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」は、一人月額300円で利用することができます。50人の利用であれば50人×300円=1万5000円(税込み1万6500円)が基本となります。初期費用もレコーダーの購入などがなければ無料、プレミアムサポートを申し込めば別途費用が必要になりますが、無料サポートであれば費用は掛かりません。このような低価格を武器に、同社は順調に顧客を積み上げています。
IPOについては、公開規模が46億円程度と荷もたれ感のある水準であったこと、また公開価格が仮条件上限を20%上回る価格決定可能範囲上限で決まったことから、やや弱いスタートが見込まれていました。ではヒューマンテクノロジーズ(以下、ヒューマンT)の初値からの動きを確認していきます。
ヒューマンTの株価推移(上場から2024年4月17日まで)
同社の初値は1194円と公開価格1224円を下回りました。仮条件は940円~1020円でしたが、公開価格は上限を20%上回る1224円で決定していました。仮条件上限を上回る値付けだったことで割安感がなくなったことから、投資家の初値買い意欲が低下したとみられます。
初値こそ公開価格を下回りましたが、その後の株価は堅調に推移します。上場初日の終値は1240円と小幅ながら公開価格を上回りました。その後は1300円前後での株価推移が続くことになります。
横ばいで推移していた株価に変化が訪れたのは2024年2月。要因は2月14日発表した3Qの業績発表です。連結営業利益は3億9800万円で着地。通期予想5億0100万円に対する進ちょくは79.4%となりました。
これを受けて翌営業日の株価は大幅高。その後も上昇は続き、2月21日に上場来高値1722円をつけました。
しかし、勢いは続かず、その後は売りに押される展開。3月に入り一段安となり、決算発表前の水準である1300円前後まで押し戻されました。その後も株価下落は止まらず、4月17日には1092円まで下落、上場2日目につけた1141円を下回り、上場来安値を更新しました。
ここで、ヒューマンTの日足チャートと東証グロース250指数の日足チャートを比べてみたいと思います。2月に同社株が大きく上昇したタイミングに東証グロース250指数も大きく上昇していることがわかります。2月の上昇は個別要因だけではなく新興市場全体の上昇も影響したようです。
3月後半からの同社株の下落については、同時期に東証グロース250指数も大きく下落していることから、その影響を受けたと考えられます。
【ヒューマンTの日足チャート(上場から2024年4月17日まで)】
【東証グロース250指数の日足チャート(上場から2024年4月17日まで)】
今後について
同社は、課金方法の変更(打刻ベース→登録ベース)を段階的に進めており、同社想定では、課金ID数は現状の契約数をベースに約2割程度増加するとみています。新規顧客の獲得に加え、この課金方法の変更が今後の収益の拡大に貢献することが期待されます。
また、「KING OF TIME」の一人月額300円には値上げ余地はあると考えます。最近では様々なものの値段が上昇し、さらに賃上げ機運も高まっていますので、値上げしても、解約率が大幅に上昇する可能性は低いと考えます。
足もとの株価下落は個別要因ではなく、全体相場の下落が要因であると考えられます。業績の進ちょくは順調であり、24.3期の上振れ着地が期待できます。また、上記の課金方法の変更もあり、25.3期以降の収益拡大が期待できます。
このような状況ですので、5月15日に予定している本決算発表前後に動意づく可能性がありそうです。公開価格を下回る株価水準には投資妙味があると考えますので、チャンスを狙ってみても面白いと思います。