「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はイーディーピー(7794 以下、EDP)をみていきます。
2022年6月27日に東証グロースに上場した同社は、宝石用の合成ダイヤの元になる単結晶ダイヤモンドを作れる世界でもまれなベンチャー企業ということで、初値高騰が期待されていました。
では、EDPの上場後の動きをみていきます。なお、同社は2023年3月に1:5の株式分割を実施しています。このコラムでは分割を遡及修正した株価を用いて説明していきます。
EDPの株価推移(上場から2023年2月10日まで)
2022年6月27日に上場した同社の初値は1640円(分割考慮前8200円)と公開価格1000円(分割考慮前5000円)を大きく上回りました。ただ、同社株の快進撃はここからが本番です。すぐに2000円(分割考慮前1万円)の大台乗せを達成。その後も下値を切り上げる展開が続きました。では、その株価上昇につながった材料をいくつかみていきます。
同社は2022年8月12日に23.3期通期の連結営業利益予想を従来の7.6億円から9.4億円(前期比81%増)に引き上げると発表しました。上方修正の要因は、主力商品であるLGD(Laboratory Grown Diamond:人工ダイヤモンド宝石の総称)用種結晶の受注が堅調であり、既存設備の増設を進めていることが挙げられていました。
さらに、2022年11月11日に23.3期通期の連結営業利益予想を従来の9.4億円から13.7億円(前期比2.6倍)に引き上げました。この要因は、生産効率の向上と種結晶サイズの大型化が下期以降も継続でき、LGD市場の拡大状況から受注の拡大が見込まれるためとしています。
業績の上方修正に伴って株価も8月と11月に大きく上昇しました。ただ、上昇スピードが速かったこともあり、年末にかけては売りに押される展開。2023年1月6日に3510円(分割考慮前1万7550円)まで下落しました。しかし、ここから切り返しの動きとなり、2月8日には上場来高値6050円(分割考慮前3万0250円)を付けました。なお、同社株はここがピーク。翌週から一気に流れが変わりました。
【EDPの週足チャート(上場から2023年2月10日まで)】
EDPの株価推移(2023年2月13日~2023年9月7日)
同社は2月10日に23.3期通期の営業利益予想を従来の13.7億円から12.4億円(前期比2.4倍)に下方修正すると発表しました。2度の上方修正で業績は絶好調という見方がほとんどだったため、想定外の下方修正に売りが殺到し、翌営業日となった2月13日、14日と連日でストップ安となりました。
この業績下方修正は、LGD供給量の過剰感が一部で見られるようになり、小型宝石の業者間取引価格の値下がり傾向が顕著となってきたことを受けて、LGDメーカーの一部で小型宝石生産用の種結晶の購入量を減らしてきているという状況などを踏まえたとのことです。
2月16日には、大株主であるコーンズテクノロジー(東京都港区)が、保有する同社株21万5000株を売却すると発表しました。SMBC日興証券を通じたブロックトレードによる売却でした。
業績下方修正に加え、大株主の株式売却による需給悪化懸念もあり、前週末(2月10日)の終値5834円(分割考慮前2万9170円)から2月17日の終値2626円(分割考慮前1万3130円)と1週間で半値以下まで一気に下落しました。
流れの悪い時にはよくないことが続くものです。同社は、5月31日には経済産業省による輸出貿易管理令の一部を改正する政令施行の影響を発表しました。規制対象として半導体基板としての三酸化二ガリウムとダイヤモンドが追加されたことで、2023年4月以降、一時的に製品の海外出荷を保留する対応を行ったとのことです。
なお、7月24日に輸出を保留していた中東向け種結晶および欧州向け基板の輸出許可を得たことを発表しています。
海外出荷の保留もあり、8月9日に発表した24.3期1Q(4-6月)の営業損益は1.0億円の赤字(前年同期は2.4億円の黒字)となりました。
併せて、通期の見通しを取り下げることも発表しています。7月より順次輸出を再開しているものの、市場状況の把握や各ユーザーの今後の生産計画などの調査に時間を要することなどから、見通しをいったん取り下げています。
24.3期1Qの決算発表を受けて、株価は一時的に2000円の大台を下回る場面もありましたが、2000円台前半での株価推移が続いています。
【EDPの日足チャート(2023年2月13日~2023年9月7日)】
今後について
24.3期1Qの決算については、「LGDの市場動向の変化」に加え、「経済産業省による輸出貿易管理令の一部を改正する政令施行の影響」が複雑に絡み合っています。
なお、LGDの市場動向については、同社の24.3期1Qの決算短信に以下のように記載されています
・LGDの市場動向について
「23.3期4Qにおいて、LGDの市場が大きく変化し、小型宝石を中心に生産過剰の状況になりました。LGDの卸売価格(ブローカー間取引価格)は大幅に低下し、生産者の採算ラインを割り込んだとの情報もありました。このため、LGD生産者は、生産を縮小したり、生産設備の増強を停止するなど、防衛策を採りました。このような情勢のために、当社の種結晶ユーザーの中には、当社への発注をキャンセルする動きも出ました。また、主要ユーザーは小型宝石用を中心に種結晶の購入を控えました」
・LGDの市場動向の変化に対する対応
「このような動きに対応するため、生産能力の不足のためにこれまで対応が出来なかったユーザーへも販売することを決め、ユーザー数を大幅に増加させました。また、大型の種結晶については、大口ユーザーなどに限定販売していましたが、希望するどのユーザーにも販売することとしました」
このように「LGDの市場動向の変化」については、販路を拡大することで対応するとのことです。しかし、LGDの卸売価格の回復がない状況で、従来の収益を確保できるかは不透明です。
「経済産業省による輸出貿易管理令の一部を改正する政令施行の影響」については、7月より順次輸出を再開していることから、2Q以降は影響が小さくなると想定されます。1Q の赤字の主因がこちらだったとすれば、2Qの収益改善が期待されます。
このような状況から、11月に発表されるであろう上期決算は大注目です。2Qで順調な回復が確認できれば、大きな流れの変化が期待できます。ハイリスク・ハイリターンとなりますが、狙ってみるのも面白いと考えます。