あの株はいまいくら?

第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はLaboro.AI(5586 以下、ラボロAI)をみていきます。


2023年7月31日に東証グロースに上場したラボロAIは、顧客企業固有の成長戦略や事業課題に合わせたオーダーメードのAI開発とAI導入・事業変革のコンサルティングを行う「カスタムAI」サービスなどを提供しています。


業績については、22.9期は先行投資が響き営業赤字でしたが、23.9期は黒字に転換する見込みとなっていました。業績が回復していることに加え、AI関連への市場の注目度は高いことから、初値高騰が見込まれていました。では、ラボロAIの上場からの動きを見ていきます。



ラボロAIの株価推移(上場から2023年11月20日まで)

2023年7月31日に上場した同社の初値は1195円と公開価格580円を大きく上回りました。高騰したものの2日目への初値形成持ち越しが有力視されていたので、期待されたほどではなかったという印象でした。


ただ、初値が伸びなかったことで、セカンダリーは勢いづきました。上場初日は終盤に買い優勢となり高値引け。上場2日目(8月1日)には1545円まで上昇し、これが上場来高値となりました。その後は急騰の反動が出て下落基調となり、8月14日には874円まで下落しました。しかし、8月15日から流れが一変します。要因は決算発表です。


同社は8月14日に、23.9期3Q累計の営業利益は1億6700万円だったと発表しました。人員増加に伴う営業活動強化の結果、新規顧客獲得件数が10件に達したことなどが寄与したとのことです。通期の会社計画1億7200万円に対する進ちょくは97.1%と良好であり、通期の上振れ期待から買いが殺到しました。


その後の株価は9月前半までは1000円台をキープしていましたが徐々に水準を切り下げ、10月19日に上場来安値659円をつけました。なお、この株価推移は個別要因というよりもグロース株全体の流れによるものと考えられます。東証グロース市場250指数(旧:マザーズ指数)のチャートと合わせてみると、その形状が近いことがわかります。


直近の動きとしては、同社は11月10日には23.9期通期の決算を発表し、株価は急騰しました。11月16日には1028円まで上昇、一時的とはいえ1000円の大台を回復しています。

決算の内容ですが、23.9期の営業利益は2億0600万円となり、会社計画1億7200万円を上回りました。3Qまでの進ちょくが良かったですので、期待通りといえるでしょう。なお、24.9期の営業利益は2億1000万円(前期比1.9%増)としています。



【ラボロAIの日足チャート(上場から2023年11月20日まで)】


【東証グロース市場250指数の日足チャート(2023年8月1日から11月20日まで)】



今後について

11月10日に発表された通期の決算発表では、AIのおう盛な需要を背景に、新規・既存顧客ともに営業が好調だとしています。それにもかかわらず、24.9期の営業利益は2億1000万円(前期比1.9%増)とほぼ横ばいの計画となっています。


この点について、同社は24.9期については中長期的な成長の「土台づくり」として、来期以降の成長加速化に向けた体制整備に注力するとしています。具体的には、人材への投資を行い組織の「土台づくり」を優先するとし、24.9期はソリューションデザイナ28名(23.9期は17名)、機械学習エンジニア35名(23.9期は24名)と大幅に増員する予定です。


24.9期はこのように投資のステージなりそうです。この点を説明資料でも強調していますので、業績に期待すべきではないでしょう。ただ、同社についてはAI関連として将来性は高いと考えられますので、目先の利益ではなく中長期的な売上高の成長を重視すべきです。今後のグロース株の復活の局面で物色される可能性も高いことから、新NISAの枠で投資してみるのも面白いと考えます。


この連載の一覧
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております