あの株はいまいくら?

【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は「SIXPAD」が有名な健康美容機器のファブレスメーカーであるMTG(7806)をみていきます。


MTGは、インバウンドの恩恵を受けて急成長しているタイミングとちょうど重なる2018年7月に上場しました。世界的な有名人を次々に宣伝に起用したことでも注目を集めていましたね。さらに、時価総額2000億円超とメルカリに続く「ユニコーン」としても話題となりました。


初値は7050円と公開価格の5800円を大きく上回る好調なスタート。初値形成後も堅調な動きは続き、上場3日目には8120円まで上昇しました。しかし、この8120円が上場来高値となっています。では、その後の株価の動きをみていきます。



MTGの株価推移(上場から新型コロナの拡大初期)

上場直後は好調なスタートとなりましたが、その後は上値の重い展開となり、株価は一時5000円を割り込む水準まで下落しました。


しかし、2018年11月に18.9期の大幅増益着地と19.9期通期の増益見通しを発表したことで、切り返しの動きとなりました。12月には7000円台まで上昇しています。増益の要因は、中国やシンガポール、香港、韓国で新規出店を進めたことでした。


業績も株価もここからさらに上をめざすかに思われましたが、このタイミングで新型コロナウイルスのパンデミックが発生してしまいます。新型コロナの感染拡大による全体相場低迷の影響を受けたこともあり、株価は2019年4月に1000円台まで下落することになりました。



【MTGの週足チャート(2018年7月~2019年4月)】



MTGの株価推移(低迷期~コロナ禍~)

上場半年で、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、インバウンドの恩恵を受けて急成長していた状況が一変しました。


19.9期については、3月に中国人インバウンドの売り上げ減少などが響くとし、営業損益予想を98億円の黒字から10億円の黒字(前期比88.7%減)に引き下げました。

さらに、7月には営業損益予想を従来の10億円の黒字から75億円の赤字に引き下げました。11月に再度予想が引き下げられ、結局19.9期の営業損益は144億円の赤字となりました。


この業績悪化(当初の98億円の黒字予想から144億円の赤字着地)が響き、株価も軟調な展開となりました。2020年3月には上場来安値となる463円まで株価は下落しています。


【MTGの週足チャート(2019年3月~2020年3月)】


MTGの株価推移(上昇~横ばい)

低迷がつづいていましたが2020年8月に株価は大きく上昇しました。これは同月に20.9期の純損益予想を従来の25億円の赤字から0円に引き上げると発表したことが要因と考えられます。

コロナ禍で外出自粛の動きが続くなか、自宅におけるトレーニングや美容習慣の需要増加など巣ごもり消費に関連していると推測されるEC・通販事業が好調だったとのことです。


株価は2020年11月に1880円まで上昇、いったん下落を挟んだものの、2021年6月には2234円まで上昇しました。ただ、そこからはまた下落基調となり、足元の株価は1100円前後で推移しています。


【MTGの週足チャート(2020年7月~2022年10月)】



今後の見通し

上場時点で2000億円を超えていた時価総額は、足元で450億円程度まで減少しました。ただ、経済活動再開の動きは同社にとって追い風になると考えられます。


2022年8月に22.9期通期の連結営業利益予想の下方修正を行いましたが、これはサプライチェーン混乱などで一部商品に欠品が発生したことによる一時的な国内EC事業の売り上げ減少や、中国のロックダウンによる海外売り上げの減少、円安進行に伴う原材料価格の高騰などが響くとのことです。


同社は2022年11月10日に通期決算発表を予定しており、そこで23.9期の会社予想が出てくると思われます。円安進行に伴う原材料価格の高騰の影響は残りますが、サプライチェーン混乱は鎮静化が進んでいると思われます。また、中国において入国者の隔離期間短縮が検討されているとの報道もあり、ゼロコロナ政策に変化も出てきそうです。今後中国人インバウンドが回復すれば、それに伴い業績も回復することが期待されます。


同社は上場してから非常に厳しい環境に置かれていました。しかし徐々に改善に向かっていると考えられます。中長期視点で同社へ投資するのであればよいタイミングではないかと思います。


この連載の一覧
第49回 物流の安全に関するコンサルティングの「アスア」 決算発表後の上昇で流れ変わるか?
第48回 「らぁ麺はやし田」など運営の「INGS」 期待はく落で下落はチャンス?
第47回 ドローンベンチャーの「ブルーイノベーション」 来期の黒字転換期待が高まれば・・・
第46回 IoTプラットフォーム「SORACOM」展開の「ソラコム」 26.3期以降に成長を加速できるかが注目点
第45回 若者向けアパレルブランド展開の「yutori」 株価推移に特徴あり
第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か
第43回 スペースデブリ除去の「アストロスケール」 株価は右肩下がり続くが
第42回 製造業界向けAIベンチャーの「VRAIN Solution」 自動化・DX化ニーズの取り込みに期待
第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?
第40回 ラーメンチェーン展開の「魁力屋」 成長期待はあるものの
第39回 軽量化金属部品の製造加工の「STG」 地味な業態だがきらりと光る会社
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております