あの株はいまいくら?

第57回 2025年2月IPOのブッキングリゾート 利益成長による株価上昇に期待

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はブッキングリゾート(324A)をみていきます。


同社はグランピング施設やリゾートヴィラなどのリゾート施設に特化した予約プラットフォーム「リゾートグランピングドットコム」、ペットツーリズムに特化した予約プラットフォーム「いぬやど」の運営のほか、直営宿泊施設の運営なども行っています。


事業セグメントは、予約プラットフォームの運営や掲載施設へのコンサルティングを行う「集客支援事業」と、施設運営上のノウハウ獲得を目的として直営宿泊施設を運営する「直営宿泊事業」の2つに区別されています。


24.4期の売上高構成比は、「集客支援事業」が88.5%、「直営宿泊事業」が11.5%となっており、「集客支援事業」が収益の柱となっています。


旅行需要はコロナ収束からの回復一巡後も伸び続けており、IPOでもこの分野の期待は高まっていることから、堅調な初値が予想されていました。なお、昨年12月に上場した旅行・観光業界向けを得意とするシステム会社のフォルシアの初値が公開価格の2.08倍となったことも初値高騰期待を高める要因の一つとなりました。では、ブッキングリゾートの上場からの株価の動きをみていきます。



ブッキングリゾートの株価推移(上場から2025年3月25日まで)

2025年2月21日に東証グロースに上場した同社の初値は1550円と公開価格1240円を上回りましたが、事前の期待の高さからすればやや拍子抜けする初値形成となりました。ただ、発射台が低かったことが幸いしたのか上場初日はストップ高となる1950円まで上値を伸ばしました。


勢いは止まらず上場2日目には2000円の大台乗せ、上場3日目、4日目は上値を伸ばしたものの売りに押される展開となりましたが、上場4日目(2025年2月27日)の高値2479円が2025年3月25日時点で上場来高値となっています。


その後は徐々に下値を切り下げる展開となり、2025年3月5日に1393円まで下落。これが、2025年3月25日時点で上場来安値となっています。

このように上場来高値を付けてから短期間で上場来安値を付けるという荒い値動きになりましたが、その後はしっかりとした株価推移となりました。そしてこのタイミングで上場後初の決算発表を迎えます。


同社は2025年3月13日15時に25.4期3Q累計の営業利益は4.4億円だったと発表しました。なお、通期の会社計画に対する進ちょくは88.3%と良好な進ちょくとなっています。

同社では、「集客支援事業」において、これまでに培ったノウハウを最大限に生かし、掲載施設の売り上げ向上に注力した結果、掲載客室数が順調に拡大したとしています。


場中での発表を受け株価は一時急騰する場面も見られましたが、その後は手じまい売りに押されマイナスに転じ、安値引けとなりました。その後見直し買いが入り、3月19日には1971円まで高値を伸ばす場面もあったものの、足元は1500~1600円台での株価推移となっています。


【ブッキングリゾートの日足チャート(上場から2025年3月25日まで)】


今後について

2025年6月に発表されるであろう26.4期の会社予想に注目です。営業利益の推移は、23.4期は2.5億円、24.4期は3.8億円、25.4期の会社予想は5.0億円となっています。

順調な利益成長が続く想定とすれば、26.4期の営業利益予想は6億円台になるのと思われます。7億円に近い予想になれば株価は上に水準訂正する可能性は高いと考えます。逆に6億円をもし下回れば、成長鈍化ととらえられ下値模索の展開になると考えられますので、どのような会社予想が出てくるか注目されます。


最後に、同社はリゾート施設特化やペットツーリズム特化の予約プラットフォームを運営するなどの特化型戦略が功を奏し、順調に業績を拡大させています。

足もとのPERは26倍程度であり、同業他社と比べて特段割安というわけではありませんが、順調な利益成長によるEPSの成長が続くとすればもう少し高い評価を受けてもおかしくありません。株価が下押すようなら狙ってみてもよいのと考えます。


この連載の一覧
第57回 2025年2月IPOのブッキングリゾート 利益成長による株価上昇に期待
第56回 水に関する建設コンサルの「日水コン」 下水道などインフラ老朽化で注目度高まる
第55回 リテール販促における総合支援事業の「MIC」  決算発表受け株価はストップ高
第54回 料理レシピ動画サービス「クラシル」の「デリー」  好決算受け株価は上場来高値更新
第53回 半導体製造装置部品の販売・修理の「TMH」 利益率が注目ポイント
第52回 「横浜家系ラーメン壱角家」の「ガーデン」 M&A再開に期待
第51回 インターネットによる教育サービス提供の「学びエイド」 エドテック関連として成長期待はあるものの
第50回 スキンケア商品・美容家電などの企画・開発・販売の「Aiロボ」 業績堅調も上場来安値更新
第49回 物流の安全に関するコンサルティングの「アスア」 決算発表後の上昇で流れ変わるか?
第48回 「らぁ麺はやし田」など運営の「INGS」 期待はく落で下落はチャンス?
第47回 ドローンベンチャーの「ブルーイノベーション」 来期の黒字転換期待が高まれば・・・
第46回 IoTプラットフォーム「SORACOM」展開の「ソラコム」 26.3期以降に成長を加速できるかが注目点
第45回 若者向けアパレルブランド展開の「yutori」 株価推移に特徴あり
第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か
第43回 スペースデブリ除去の「アストロスケール」 株価は右肩下がり続くが
第42回 製造業界向けAIベンチャーの「VRAIN Solution」 自動化・DX化ニーズの取り込みに期待
第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?
第40回 ラーメンチェーン展開の「魁力屋」 成長期待はあるものの
第39回 軽量化金属部品の製造加工の「STG」 地味な業態だがきらりと光る会社
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております