あの株はいまいくら?

第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は高級家電のファブレスメーカーであるバルミューダ(6612)を取り上げます。

バルミューダの家電は機能性やデザイン性が評価されており、扇風機「GreenFan」やトースター「BALMUDA The Toaster」などのヒット商品があります。


2020年12月に上場した同社は、製品がメディアで取り上げられることも多かったことから、話題の家電ベンチャーとして注目を集めました。初値は3150円と公開価格1930円を大きく上回る堅調なスタート。ではその後の動きを確認していきます。



バルミューダの株価推移(上場から1年)

2020年12月の上場から好調な推移が続き、2021年1月には上場来高値となる1万0610円まで上昇しました。しかし、1万円を超えて達成感が出たのか、そこから軟調な展開となり、3月に5000円台まで下落しました。


【バルミューダの週足チャート(2020年12月~2021年12月)】



その後はレンジ内(7000円台~5000円台)で推移していましたが、2021年11月に5000円の大台を割り込みました。11月の株価下落には3つの要因があると考えます。


1つ目は、11月9日に発表した21.12期3Q累計(1-9月)の連結営業利益が4.3億円(前年同期比52.7%減)となったことです。携帯端末事業関連の試験研究費が大幅に増加したことが響き、減益となりました。


2つ目は、11月18日に同社の社外役員が売買承認期間外に同社株を売買したことについて、社内処分を決議したと発表したことです。

同社は5月13日に21.12期1Q(1-3月)決算と業績の上方修正を発表しましたが、同役員は売買承認期間に対する錯誤から、売買承認期間外である5月13日正午頃に同社株式の買い付けを行い、結果として内部者取引に該当するおそれのある買い付け取引を行ってしまいました。


3つ目はBALMUDA Phoneの発売です。11月26日に発売されたBALMUDA Phoneの評判は良いものばかりではありませんでした。スマートフォンは他社製品とのスペックの比較が容易です。デザインやソフトウェアで差別化を図りたかったようですが、価格とスペックが見合っていないとの声もありました。

BALMUDA Phoneの発売により、同社の知名度は飛躍的に高まりましたが、「価格は高いけど機能性やデザイン性も高い」というイメージに懐疑的な見方も出てしまったと考えます。



バルミューダの株価推移(直近1年)

2021年11月から続いた株価下落は2022年3月に上場来安値2600円をつけたところで止まりました。その後3000円台を回復する局面もありましたが続かず、足元は3000円割れの水準で推移しています。


このような株価推移になっている最大の要因は、業績の低迷と考えます。22.12期3Q累計(1-9月)の連結営業利益は1.6億円(前年同期比63.7%減)となりました。

2021年11月に発表した21.12期3Q累計(1-9月)の連結営業利益は4.3億円(前年同期比52.7%減)でしたので、さらに利益が減少しています。


業績低迷は、急激な円安により仕入原価が上昇していることが大きく響いています。また、「GreenFan」や「BALMUDA The Toaster」ほどのヒット商品が出ていないことも要因と考えます。


【バルミューダの週足チャート(2021年12月~2022年12月)】



今後の見通し

仕入原価の上昇につながった円安ですが、足元でやや円高方向に振れています。また、同社は12月21日に米国子会社を設立すると発表しました。さらなる成長に向けて重点的に活動を行うため、米国子会社を設立するとのことです。

このような利益率改善や販路拡大というプラス要素はあるものの、本格的な株価上昇には新たなヒット商品が必要でしょう。上場時点においても一部のアナリストからは「次のヒット商品が見えない」ことが指摘されていました。

米国のリセッション懸念などもあり市場環境は良いとはいえません。ヒット商品が出なければ、株価は上場来安値である2600円を割り込む可能性もあると考えます。


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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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