CNH、年末に対ドル・対ドルで年初来高値
今年の人民元は堅調な動き。今年は全般的にドル安・円安に傾いたことが支えとなっているが、米中の貿易摩擦の激化懸念が緩んだことや今年の後半に中国当局が人民元高に一定の許容度を示していることも人民元の支えとなっています。
オフショア市場で人民元(CNH)は今年これまでに対円では3.5%超、対ドルでは4.5%超上昇しています。CNH円は22.43円まで過去最高値を更新し、ドル/CNHは7元割れと昨年9月以来のCNH高となりました。
CNH円
ドル/CNH

人民元基準値、1ドル=7.03元台
12月26日、中国人民銀行(中央銀行)は人民元基準値を1ドル=7.0358元と昨年9月以来の人民元高水準に設定しました。中国国内では、人民元の持続的な下落が経済成長の足かせになっているとし、輸出主導型経済からの転換を図り、低迷する個人消費を刺激し、貿易摩擦を軽減するためには、人民元の上昇が必要だとの見方が強まっています。
ただ、人民銀は人民元を合理的な均衡水準で基本的に安定させるという方針を改めて表明しており、人民銀がどこまで人民元高を容認するか、基準値の設定レベルや国有銀行のドル買い・人民元売りなど介入の動きなどには引き続き注目です。人民元の7元割れでは人民元の一段高を容認するとしても急ピッチで進むことは阻止されると想定されます。
中国、来年は内需拡大を重点に
中国で12 月10-11 日に開催された中央経済工作会議において、足元の内需低迷に対する厳しい現状認識が示されたうえで、来年の経済運営は消費促進を最優先とすることが打ち出されました。これは、中国経済がデフレに直面していることを踏まえれば、正しい方向性と評価できます。
具体的な政策をみると、財政支出の拡大姿勢がみられないこと、金融緩和の具体的な手段が不明瞭なことなどから、内需拡大に向けた有効手段に乏しい印象もあります。この背景には、西側諸国とは一線を画した政府・供給サイド主導の政策運営に、習国家主席が相当の自信を持っていることが伺えます。
2026年の重点政策は8項目が挙げられました。なお、今回の重点政策にはいずれも「堅持」が含まれており、これまでの政策を引き継ぎ、強化させていくかたちとなりました。
1.「内需主導を堅持し、強大な国内市場を建設する」として、前年に続き国内需要の促進が筆頭に挙げられ、消費振興策の実施や収入増加策の制定などが示されました。
2.「イノベーションによる牽引を堅持し、新たな成長エンジンの育成・強化を加速する」が挙げられ、科学技術人材の育成の推進や、「人工知能+(AIプラス)」のさらなる推進が掲げられました。
3.「改革におけるブレークスルーを堅持し、質の高い発展の動力と活力を強化する」として、「内巻」(過度な競争)の是正、全国統一大市場の建設に向けた条例の制定が挙げられました。
このほか、重点リスクとしては、不動産市場と地方政府債務の処理が挙げられ、景気の安定を維持しつつ、秩序だったリスク解消を進める姿勢が示されました。来年は、構造改革と成長維持の両立が強く問われる正念場となりそうです。
米中間選挙まで米中関係悪化は回避か
中国と米国の関係は、両国の覇権争いということもあり、今後は政治・経済をめぐる摩擦は長らく続くと見込まれます。ただ、「米国ファースト」を強調するトランプ米大統領は、米中のこれまでの交渉でどんな脅かしにも屈しない中国に手を焼いたこともあり、ディール(取引)重視の同氏が来年の米中間選挙までは中国から得られる経済的利益、その利益を受けた国民の支持を念頭に、中国との関係悪化は極力回避すると見込まれます。
高市政権が誕生した後、日中関係は急速に悪化し、なかなか改善の糸口は見えないが、中国経済への大きな影響はないでしょう。



