日銀がREITの市場売却を決定
日銀は2025年9月18~19日に開催した金融政策決定会合において、保有しているETFとJ-REITの市場売却を決定しました。
J-REITについては、年間50億円程度のペースで、取引所市場で形成される価格に基づいて売却を行うとのことです。
今回の決定はサプライズ
19日の東京市場では、発表前まで堅調に推移していたREIT指数が発表後に大きく値を消して、マイナス圏に沈みました。
事前予想では、9月の会合では金融政策の変更や見直しはないとの見方が大勢でした。それだけに、ETFやJ-REITに関する言及があったことは驚きを持って受け止められました。日経平均も19日の前引け時点では前日比348円高と大きく上昇していましたが、後場には一時下げ幅を800円以上に広げるなど値動きが荒くなりました。
売却が市場に与える影響は限定的
日銀によると年間50億円程度というのは簿価ベースで、2025年3月末時点の時価に換算すると55億円程度になるとのことです。東証REIT市場全体の売買代金に占める売却額の割合は0.05%程度とのことで、売却そのものに対する金額的なインパクトはそれほど大きくないと考えられます。
植田日銀総裁は会合後の質疑応答の中で、ETF、J-REITともに保有分の売却を完了するのに単純計算では100年以上かかることになると言及しています。
先々では、日銀が金額のペースを上げてくることはあり得ます。ただ、売却することを決めて最初に打ち出した金額がこの規模感であれば、今後売却額を増やしたとしても、日銀による売りが日経平均やREIT指数の暴落を招く可能性は低いと思われます。
マーケットの方も、発表直後には崩れましたが、その日のうちにある程度落ち着きを取り戻しました。19日の日経平均は一時800円を超える下落とはなりましたが、終値では257円安(0.57%安)と常識的な下げにとどまっています。REIT指数も下げには転じましたが、終値は5.85p安(0.30%安)と大きく崩れることはありませんでした。
ただし足元では上値の重さも
日銀のETF、J-REIT売却発表に対する混乱は一時的にとどまりました。ただ、その後の日経平均が9月22日、24日と連日で史上最高値を更新しているのに対して、REIT指数は上値が重くなっています。
9月17日から24日までは5日連続で下落しており、この5営業日はいずれも終値が寄り付きを下回り陰線を形成しています。
・ノーサプライズだと思われていた日銀会合でサプライズがあったこと
・日銀が年内に利上げに踏み切る可能性があること
・米国は利下げを再開したものの、9月のFOMC以降は長期金利がそれほど低下していないこと
これらの要因が、REITの上昇継続に対する期待を低下させていると考えられます。日経平均が日銀会合後に難なく高値を更新しているだけに、REIT指数が伸び悩むようだと、相対的なパフォーマンスの悪さが次第にクローズアップされてくる可能性があります。
早々に年初来高値(1950.97p、9月16日、終値)を更新できるか、更新できなかった場合でも1900pは割り込まず高値圏をキープできるかがこの先の注目点となります。日銀の早期利上げが意識された場合、今の相場環境ではREITは売られやすくなると思われます。日本の経済指標が強かった場合などにそういった見方が強まる可能性があるだけに、特に物価や雇用に関する指標には注意を払っておいた方が良いでしょう。