FRB議長は2大責務を守るだけ
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は2018年2月にトランプ米大統領によりFRBの議長職を任命されました。
前FRB議長のイエレン氏が民主党支持者でしたが、パウエル氏は共和党支持者ということで同職に指名されたとも言われています。
実際に、パウエル氏が再任するときには、民主党の急伸左派勢力は反対を表明していました。
FRB議長職はFRBの責務(物価の安定と雇用の最大化)を忠実に守るため、大統領が共和党だろうが民主党だろうが関係ありません。
インフレが中長期の目標とされる2%を超え、雇用指標も悪くないのであれば、利下げをしないのは当然のことです。
政治的に政策金利を変更をすることなどはありえず、政治的な影響を受けるトルコ中銀や日銀とは違います。
(日銀の独立性については第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」を参照してください)
FRBの独立性を尊重した前政権からの転換
前大統領だったバイデン氏は2021年4月時にパウエル氏とは就任以来話していないと述べていました。
実に3年以上もFRB議長と会話をしていなかったのは、FRBの独立性を重要視したとも言えます。
しかし、トランプ大統領は株高などのために、FRBの早期利下げを再三再四要求しています。
要求というよりも圧力ともいえるでしょう。
ただ、この圧力にも屈せずパウエル氏は辞任するとは表明せず、任期が終わる26年5月まで議長に留まると思われます。
すでにトランプ大統領は、FRB議長の後任を探しています。
しかし、米連邦公開市場委員(FOMC)で政策金利を決定するのは、FRB議長だけではなく、FRBのメンバーによる票決で決まります。
FRB議長が後退したからといえ、他のFRB理事や連銀総裁がトランプ大統領の思惑通りに票を入れなければ変わりません。
おそらくトランプ大統領のことですから、自分の思惑通りに動かないFRB理事は、期限が来たらどんどん変更させていくことでしょう。
実際に、レーガン政権だった1980年代にインフレファイターとして知られる当時のボルカーFRB議長はレーガン大統領に理事をどんどん替えられました。
1986年には、その理事が利下げに投票をし始めたことで、一時利下げが決定した経緯もありました。
(これはボルカー氏が怒り、辞任を示唆したことで、再投票され利下げが停止されました)
クーグラー理事の突然の辞任・・・クック理事にも辞任圧力
FRB議長の後任が話題になる中で、8月に入るとクーグラーFRB理事が8日付で退任しました。
民主党支持者でもあることで、元々1月末の任期満了時にトランプ米大統領が標的にしていた人物でした。
そしてクーグラー氏の後任に米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長を後任候補とすることが決定しました。
現政権メンバーが入るということは、トランプ政権の要望通りの金融政策を推し進めることになり、FRBの2大責務を無視して、政権に優位なことのみに集中するでしょう。
ここで上述のパウエル氏を含めFRB理事の支持政党と任期を記します。
なお、FRB理事職は満了すれば14年間あります。
パウエル議長(共和党)・・・議長職は2026年5月15日、理事職は2028年1月31日
ジェファーソ副議長(民主党)・・・副議長職は2027年9月7日、理事職は2036年1月31日
ボウマン副議長(共和党員)・・・副議長職は2029年6月9日、理事職は2034年1月31日
ウォーラー理事(共和党員)・・・理事職は2030年1月31日
クック理事(民主党)・・・理事職は2038年1月31日
バー理事(民主党)・・・理事職は2032年1月31日
ボウマン氏、ウォーラー氏はハト派理事、そして現時点では上院から承認を受けていないもののミラン氏が加わります。
そしてパウエル氏が辞任した場合は、理事は分かっているだけで過半数がハト派になり、ハト派にFOMCが牛耳られることになります。
更に、先週にはトランプ政権の内部から住宅ローンをめぐる不正があったとして追及する動きあったとして、クック理事に対してもトランプ大統領は辞任圧力をかけています。
今後は、このFRB人事が市場に大きな影響を与えることは避けられず、クック氏の動向はどうなるのか、パウエル氏がFRB議長退任の時に理事も退任するのかなど、FRB人事を見ないでFXを取引してはいけないでしょう。