少額投資非課税制度(NISA)のうちの一般NISAは、非課税期間が最長5年間です。投資家がNISA口座を開設した年から5年間というわけではありません。NISA口座の中で購入した対象銘柄の一つひとつに対して、それぞれ5年です。また、厳密にいうと買った日から5年間ではなく、購入した年を1年目として、5年目の年末までです。
2022年末に非課税期間が終了するのは、2018年に一般NISAで購入した銘柄。売らずに持ち続けている人も多いのではないでしょうか。一般NISAで5年目を迎える銘柄を保有している人には、金融機関からそろそろ「ロールオーバー」の案内が届く頃かと思います。
「お知らせが届いたけれど、ロールオーバーは、した方が良いの? しない方が良いの?」と思っている方に、一般NISAのロールオーバーについて、2回に分けて説明しましょう。まず今回の(上)では、ロールオーバーの基本をお伝えし、次回の(下)では、ロールオーバーをするかしないか決める時の考え方をお伝えします。
非課税期間が満了する銘柄の選択肢は3つ
一般NISAで購入した銘柄が5年目の年末を迎えることを、「非課税期間の満了」といいます。証券会社や銀行などの金融機関は、非課税期間が満了する銘柄を持つ顧客に対し、満了の3ヵ月前ぐらいから通知をします。満了のお知らせと同時に、ロールオーバーについての説明も案内されているかと思います。
非課税期間が満了する銘柄の選択肢は3つです。
①年内に売る
②NISAを延長する(ロールオーバー)
③課税口座に移す
①年内に売るなら、特に何もする必要はありません。売りたいタイミングが来たら、売却をするだけのことです。
ただし、受渡日が12月中になるようにしなければなりません。国内上場株式の場合、2022年は12月30日が大納会なので、さかのぼって12月28日までには売却する必要があります。また、投資信託や外国株式は、受渡に日数がかかるものがありますし、外国市場の休場にも気をつけなければなりません。現金化される日が2022年内になるように、売却する日を逆算して換金しましょう。
非課税期間を延長したい人は「ロールオーバー」
②非課税期間を延長することを「ロールオーバー」といいます。ロールオーバーは、金融機関にもよりますが、書類の提出か、WEB上で手続きをします。
書類の場合は、NISA口座を開設している金融機関が用意する「非課税口座内上場株式等移管依頼書」に記入し、指定する日までに提出します。するとさらに5年、非課税期間が延長されます。
以前は、インターネット証券やネットバンキングでも書類の郵送が必要でした。現在は、多くの金融機関がWEB上で手続きできます。ログインして取引口座のページに入り、「NISA」「ロールオーバー」などのページから手続き画面に入ることができます。
ロールオーバーした時価が、翌年の非課税枠を使う
ロールオーバーを行なった場合、その銘柄の時価の分、翌年の非課税枠を使用します。時価とは、5年目の年末の終値です。一般NISAの年間非課税枠は120万円。ここから、ロールオーバーした分、新たな資金でのNISA購入額が減らされます。
例えば、2022年に期間満了となる銘柄のロールオーバー手続きをし、12月28日の終値が100万円になった場合、2023年に新たな資金でNISAを使えるのは20万円までです(図)。
もし、12月末の株価が120万円を超えていても、ロールオーバーは可能です。ただし、この場合はロールオーバーで翌年の非課税枠を全て使い切ってしまうので、新たな資金でNISAを使うことができません。
なお、一般NISAは2024年から制度が変わります。2023年までのロールオーバー分は、現行制度の一般NISAにロールオーバーされます。2024年以降の新規購入やロールオーバーは、改正される「新NISA」に移管されます。
何も手続きをしないと、翌年から課税口座に移される
③ロールオーバーを希望しない場合は、手続きは不要です。
2023年の受渡分から、その銘柄は自動的に課税口座に移されます。これを「払い出し」と呼びます。「非課税口座から払い出して課税口座に移す」という意味です。課税口座は、その投資家が「特定口座」を開設していれば、自動的に特定口座に移管されます。「一般口座」を希望することも可能で、この場合は所定の手続きが必要です。
なお、うっかり期日までにロールオーバーの手続きを忘れてしまった、という場合も、課税口座に払い出されます。非課税期間を延長したいと考えている場合は、忘れないように早めに手続きをすることをお勧めします。
うっかりは別として、「今まで5年間、NISAで非課税だった銘柄を、6年目からわざわざ課税口座に移す人などいるのだろうか?」と思うかもしれませんね。その銘柄が現在含み益の状態か含み損なのか、また、この先の株価の見通しはどうか、保有している他の銘柄の損益状況はどうか、などによって、ロールオーバーをしない選択も考えられます。
次回は、ロールオーバーをするか、しないかを検討するにあたって、考えるポイントと注意点についてご説明します。