解説!つみたてNISAとiDeCo

一般NISAとつみたてNISAを比べてみる ~金融庁「NISAの利用状況」から~

物価上昇や老後の生活資金への不安が広がっているからでしょうか、「NISA(少額投資非課税制度)」への関心が高まっています。これからNISAを始めようとしている方に、一般NISAとつみたてNISAの違いについて、金融庁から公表された2022年6月末時点の「NISA口座の利用状況調査」を使ってご紹介しましょう。

 

まずはNISAの基本から


NISAには、成人が対象で汎用性の高い「一般NISA」と積立投資専用の「つみたてNISA」、未成年者が対象の「ジュニアNISA」があります。いずれも、1人1つの口座に限られています。それぞれ、非課税になる年間投資上限額や、非課税期間が決まっています。

 

「一般NISA」は1年間の投資元本が120万円までで、非課税になる期限は5年。「つみたてNISA」の上限は年40万円で20年。「ジュニアNISA」は年80万円までで、名義人が成人するまで非課税の運用ができますが、2023年を最後に新規投資ができなくなります。なお、どのNISAについても、非課税の期限いっぱいまで投資している必要はなく、途中で売却や解約をし、換金しても構いません。


直近のNISAの利用状況


NISA口座は、証券会社、銀行、信用金庫、JAバンク(農協)などの金融機関で開設できます。2022年6月末時点で、一般NISAを取り扱っている金融機関は682法人、つみたてNISAが581法人、ジュニアNISAが312法人。金融庁は、これらの金融機関におけるNISAの利用状況について、3カ月ごとに調査を行ない、集計結果を公表しています。

 

2022年6月末時点で、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの口座数は、3月末に比べて3.7%増加し、合計1,703万口座に達しています。制度別に3ヵ月の増加率を見ると、一般NISAが0.8%増、つみたてNISAが8.8%増、ジュニアNISAが8.3%増です。

 

2023年12月末を過ぎると新規投資ができなくなるジュニアNISAは、「使える間はしっかり非課税のメリットを受けよう」と、賢いパパママが利用している様子です。

 


50歳代、60歳代でもつみたてNISAを始める人が増えている


成人対象の一般NISAとつみたてNISAについて、年代別口座数を【グラフ1】にまとめました。一般NISAは比較的高齢の世代に利用され、つみたてNISAは若い世代に利用されている傾向です。同世代内で一般NISAとつみたてNISAの口座数を見ると、20歳代、30歳代ではつみたてNISAの方が多く、40歳代でほぼ同じ、50歳代以上は一般NISAが多くなっています。


 

【グラフ1】で3月末と6月末を比較すると、一般NISA、つみたてNISAともに、どの世代でも口座数が増加しています。特につみたてNISAの増加率が高く、20歳代が11.2%増、次いで50歳代が9.2%増、60歳代で8.8%の増加でした。

 

これまで報道などで再三にわたり「若い世代でつみたてNISAが増えている」と伝えられていましたが、50歳代、60歳代でもつみたてNISAを始める人が増えています。この世代は、以前からNISAを利用している人は一般NISAが多いものの、最近始めた人はつみたてNISAを選ぶ傾向のようです。60歳からつみたてNISAを始めても、20年後は80歳。積み立てた資金で老後の生活費を補てんすることができそうです。子育てが一段落し、つみたてNISAを始めやすい世代といえるでしょう。

 

一般NISAでも株式より投資信託


投資をしたことがない人の中には、NISAを金融商品の名前だと思っている人もいるようですが、NISAは制度の名前です。投資の利益が非課税になる制度で、NISAの口座内で対象の金融商品を購入すると、株主配当金や投信の収益分配金が非課税になり、換金した際にも値上がり益に対して税金がかからないという制度です。

 

NISAは、預貯金や国債などのリスクが低めの金融商品では利用できません。主な対象商品は、一般NISAは上場株式、上場している投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)、公募株式投資信託です。つみたてNISAの対象は限られた投信で、金融庁のホームページで随時確認できます。


 

では、NISA口座では、どのような金融商品が購入されているのでしょうか。

 

【グラフ2】では、一般NISAの制度開始から直近までの、商品別買付額比率を示しました。

 

一般NISAは、株式や投信の累積投資(積み立て)でも利用可能ですが、投資家がその都度銘柄を選び、購入のタイミングも好きな時に選べる自由度の高い制度です。また、年間投資元本が120万円までなので、個別株を買いたい人に適した制度です。にもかかわらず、株式より投信の買付額の方が多くなっています。

 

【グラフ3】は、つみたてNISAです。やはり、「長期・積立・分散投資」を謳っているだけあり、インデックス投信が大半を占めています。


なお、2022年10月31日現在のつみたてNISA対象商品216本の内訳を見ると、指定インデックス投信が185本、指定インデックス投信以外の投信(アクティブ運用投信等)が24本、ETFが7本。対象となっている投信の銘柄数も、同じような比率です。

 


まとめ


いざ「NISAを始めてみよう」と思ったものの、一般NISAとつみたてNISAのどちらが良いか、また、NISA口座で何を買うか、迷う方は多いようです。もちろんご自身で決めることではありますが、「皆さんどうしているのだろう」と、他の人の投資が気になる方もいらっしゃるようです。このようなデータを参考にし、ご自身の投資方針を考え、非課税になる年間上限額や期限の違い、対象商品を踏まえて、どちらのNISAが自分に適しているかを検討しましょう。

 

【出典】「NISA口座の利用状況調査(2022年6月末時点)」(金融庁)


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ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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