解説!つみたてNISAとiDeCo

積立投資では上昇局面で利益が膨らみやすい

投資信託の単価が下落した場合、積立投資は一括投資に比べて損失が限定的になる、もしくは利益が発生するケースがあります

今回はそうした事例の紹介、「積立投資の運用期間中」並びに「売却のタイミング」についての考え方について説明します。

 

どの投資信託が一番利益を出しているの?

以下、3つの投資信託の単価推移を比較しています。

毎月1万円ずつ投資した場合、どの投資信託が一番利益を出していると思いますか?


 単価の推移をみると、投資信託A(以下、A)が1カ月目の単価を上回っており、パフォーマンスは良さそうです。


しかし、一番利益(評価益)が出ているのは投資信託B(以下、B)となります。


これはドルコスト平均法の効果が大きいことが要因に挙げられます。

Bの単価は下落基調となりましたが、ドルコスト平均法では下落局面になると購入数量が多くなり、かつ取得単価が下落します

また売り一巡後、上昇に転じたことで利益が発生しています


投資信託C(以下、C)の単価も下落局面となりましたが、Bほど下落せず上昇もBと比べて大きくなかったことから、Bの方が利益が大きくなっています。

 

単価急落後の上昇は利益(評価益)が出やすい

この例をみると、パフォーマンスの悪い商品を選んだ方が利益は増えると思われる方がいるかもしれません

しかし、それはお勧めしません

 

その理由としては、パフォーマンスの悪い投資信託では単価の下落が続いたり、売り一巡後の戻りが鈍い可能性が高いからです。

 

どのような投資信託でも、2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナウイルスの感染急拡大など、世界景気の減速懸念が強まる事態が発生すれば、単価が急落するケースがあります。


それでもパフォーマンスのしっかりした商品を買い付けしていれば、急落しても下げは続かず、持ち直す動きに転じるケースが多くなっています

戻り(上昇)が大きくなれば、利益を多く出せることになります

 

単価下落局面では利益(評価益)が減少

では単価が比較的堅調に推移しているAは、どうしてBより利益(評価益)が少ないのでしょうか。

 

これもドルコスト平均法の影響があります。

単価が上昇しているため、ドルコスト平均法では上昇局面ほど購入口数が少なくなり、取得単価が上昇します

 

また4カ月目から5カ月目にかけて単価が下落していることも影響しています

単価が上昇しているほど利益(評価益)が増加する一方、下落局面では利益(評価益)が減少しやすくなります

 

Aの4カ月目時点の評価益は9020円と利益は増加しましたが、5カ月目時点は4108円となっています。

 

これまでの内容を整理しますと、(1)単価上昇に伴い購入口数が少なく取得単価コストが上昇したこと、(2)Bとは対象的に直近の単価が下落基調、の2点がBと比べて利益が小さくなってしまった要因に挙げられます。

 

単価急落時は慌てて売却しない

リーマンショックなど不測の事態で急落した場合、慌てて売却してしまうことは避けましょう

急落局面で売却してしまうと大きく損失を出してしまう可能性が高くなります

積立投資では元の価格に戻らなくても利益が発生するケースはありますので、パニックにならずに保有しましょう。


持ち直しの動きが強まれば、利益が膨らむ可能性が高まります。

利益拡大局面が到来し、ラッキー」くらいの認識を持ってください。

 

売却の際、単価の上昇局面か確認しよう

売却するタイミングを図る際、単価が上昇している局面であるか確認しましょう

上昇局面ではさらに上昇すると考え、売却を躊躇してしまうかもしれませんが、目標金額に達した場合、売却を検討して良いと考えています。

 

一方、注意点としては、売却前に単価が下落していたら、再び上昇するのを待った方が良いでしょう。

 

iDeCoの場合、その商品を売却して他の商品に乗り換える行動は避けた方が良いです。

また60歳(加入期間10年以上)から売却資金の受け取りは可能になりますが、75歳まで受け取り開始を延長できますので、売却せず運用のみ行うことをお勧めします。

 

今回のまとめですが、(1)単価急落局面で慌てないで売却しない、(2)単価の上昇局面で売却を検討する、ことを心がけてください。

この連載の一覧
2025年の税制改正要望、NISA制度・投資関連のものには何がある?
【徹底解説】iDeCoによる節税は嘘と言われるのは本当?実際にシミュレーションしてみた
株価下落で「新NISAで損切り」が話題に!2024年の積立投資のリターンとは
新NISA、オルカン一択は止めた方が良い?ポートフォリオの理想と現実とは
「貯蓄から投資へ」が進まない理由とは?金融教育の義務化で今後は状況が変化する?
新NISAは何歳からできる?年齢制限はある?50代60代こそ始めるべき理由を解説
新NISAの口座変更手続きとは?体験談とともに解説
証券会社が潰れたら株やお金はどうなる? 新NISAの注意点とあわせて解説
人気のつみたてNISAファンド「iFree S&P500インデックス」と「iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジなし)」を初心者向けに解説します
つみたてNISA【たわらノーロード】シリーズ解析!「全世界株式」と「先進国株式」を比較してみた
資産を育てるチャンス!新しいNISAで高配当株投資は本当にもったいない?
少額投資は意味がないって本当?3つのメリットとシミュレーション結果を徹底解説!
2023年に廃止されるジュニアNISAを賢く運用するコツは?注意点もあわせて解説
【2024年新しいNISA開始】2023年にNISAは始めるべき?メリット・デメリットを解説
資金流入額の多い投資信託は運用効率が良い!
インベスコ世界厳選株式オープンへの資金流入が目立つ
改めて開設手続きは必要?亡くなったらどうなる?新NISAのよくある質問にFPが回答!
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」と「楽天・全米株式インデックス・ファンド」はどちらを選ぶべき?2つの銘柄を比較してみた
「eMAXIS Slim全世界株式」へのさらなる資金流入に期待!
初心者におすすめ「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」について解説します!
新NISA、成長投資枠のファンド約1,000本が公表に!あの人気ファンドはどうなる?
企業型DCやiDeCoは転職後も持ち運びが可能!
2023年にNISAで投資する場合の注意点
【初心者向け】2024年以降の新NISAの特徴は? 現行NISAと併用は可能なの?違いについてカンタン解説!
NISAは60歳からでも出来る!一般とつみたての違いを知って老後資金を運用しよう
新NISAとiDeCo、どちらを選ぶべき?それぞれのメリット・デメリットと選び方
1億総NISA時代にIFAが価値提供できるものは何か
2024年からNISA新制度で投資を始めようという方々に伝えたい複雑化するカントリーリスク
つみたてNISAに確定申告は必要?損失が出た場合の控除など詳しく解説
【確定申告】株の特定口座(源泉徴収あり)とは?取引口座別の確定申告方法とメリットについて
急落後に戻りが期待できる投資信託で運用しよう
本当に一時金形式で受け取った方が良いの?
退職所得控除の利用方法に注意すべき!
素敵な老後を過ごすために積立投資を始めましょう
つみたてNISAは一括購入できる?年間非課税枠を使い切る方法を詳しく解説
2024年から新NISAへ。生涯の投資プランを設計しよう
来年はインデックスファンドで積立投資をしよう
【つみたてNISA】初心者の買い方~SBI証券とゆうちょ銀行を例にはじめ方をご紹介~
残り約1年のジュニアNISAに注目集まる
【つみたてNISA】専業主婦にもおすすめの理由とは?一般NISAとの違いも解説
一般NISAとつみたてNISAを比べてみる ~金融庁「NISAの利用状況」から~
マッチング拠出とiDeCoの併用は不可!
給与受け取りか、企業型DCで運用するか!
企業型DCとiDeCoの併用が可能に!
NISAのロールオーバー(下)
つみたてNISAが利用できない?純金積立での投資をおすすめしない人の特徴5選
将来の資産形成のために積立投資をしよう!
NISAのロールオーバー(上)
換金自由度、それとも税制メリットを優先しますか!?
iDeCoの死亡一時金は受取人指定が可能
一時金、それとも年金受け取りが良い?
iDeCoの運用は投資信託を中心に!
NISAの恒久化は老後資金の獲得方法になるか
DC法改正を活かし受取資産を増やそう
iDeCoの掛金は毎月拠出が良い?それとも年払い?
値下がりはチャンス!ドルコスト平均法
積立投資の開始はお早めに!
積立投資では上昇局面で利益が膨らみやすい
3人に1人が積み立てなし? つみたてNISAの事実
積立投資での投資信託の単価下落は怖くない
iDeCoの金融機関選びはコスト面を重視しよう
「つみたてNISA」の9割に迫る、投資デビュー
iDeCoは引き出し制限に注意も節税メリットは魅力
つみたてNISAやiDeCoはどんな人が加入できるの?

日本株情報部 アナリスト

角屋 昌範

2005年に国内証券会社へ入社後、投資情報部や調査部に在籍。投資情報部では、米国や香港株式市場見通しの作成など海外金融市場に関する調査業務に携わる。調査部では、ネット関連セクターを中心に国内個別企業のアナリストレポートを執筆した。 国内証券会社などを経て2019年に入社。主に先物市場見通しなど「デリバティブコンテンツ」を担当。 CFP DCプランナー

角屋 昌範の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております