解説!つみたてNISAとiDeCo

積立投資での投資信託の単価下落は怖くない

投資未経験者の方に投資を行わない理由を尋ねると、「価格の下落が怖いから」とよく返答されます。

結論を先に申し上げますと、積立投資では投資信託の単価の下落は怖くありません。

今回は「積立投資期間中の投資信託の単価の下落は必ずしも悪くはない」理由について説明します。

 

一括投資では単価下落で損失発生しやすい

投資に前向きではない方が「投資は損失を被る可能性が高い」と考える理由には、以下のような事例を想像している方が多いのではないでしょうか。

 

例えば、Aという投資信託を単価1万円で100口購入しました。

仮に買付手数料を無料とした場合、買付金額は100万円となります。

こうした購入方法を一括投資と言います。

 

買い付け後、Aの投資信託の単価が下落し、5カ月目に7000円まで下落しました。

評価額は100口×7000円=70万円となります。

買付金額に対し、30万円の損失を被っていることになります。


 

こういう状況になりますと、買付単価の1万円まで上昇するには時間を要する可能性が高くなります。

 

単価が下落する際の投資家の行動としては、(1)買付価格まで上昇することを信じ保有し続ける一方、損失が怖いから新規の投資を一切しない、(2)単価が下落する可能性を警戒し、損失を抱えたまま投資信託を解約する、パターンが多くなっています。

 

いずれにせよ損失経験をしたことにより、「投資なんてやらなければ良かった」と考えてしまう投資家が増えており、貯蓄から投資の流れが進まない一因とみています。


積立投資では利益発生(損失限定)のケースも

一方、Aという投資信託に毎月1万円積立投資した場合はどうなるでしょうか?

投資信託の価格は上記の一括投資と同じ動きとします。


5カ月目に単価は7000円まで下落しましたが、結論を先に申しますと評価益は約950円の評価益が出ています。

積立投資の場合、下落局面なのに利益が出ている(損失が限られている)要因には、「ドルコスト平均法」の効果が挙げられます。

 

ドルコスト平均法とは、定期的に同じ金額で同じ金融商品を購入する投資手法となります。

つまり、購入金額を変えずに金融商品を購入します

 

今回のケースでは毎月1万円という購入金額を変えずに、投資信託Aを購入します。

購入口数の計算方法は「購入金額÷投資信託の単価」となります。

1カ月目の単価は10000円となりますので、購入口数は10000円÷10000円=1口。

2カ月目の単価は8000円となりますので、購入口数は10000円÷8000円=1.25口。

同様に5カ月目まで計算すると、購入数量は5カ月間で7.278口となります。(図参照)

つまり購入金額は変わらない一方、単価の変動に伴い購入口数が変化します



評価損益の計算方法は、「直近の投資信託の単価」×「購入口数」-「購入金額」となります。

今回のケースですと、7000円(5カ月目の単価)×7.278(口数)-50000円(購入金額)=946円。

5カ月目の時点では、946円の利益(評価益)が出ていることになります。

 

積立投資では過度に単価下落の警戒必要なし

どうして利益が出るのか(損失は限られるか)、その仕組みについて説明を加えます。

ドルコスト平均法では、単価の下落局面では購入数量が増加します。

割安で購入できることから、平均取得単価が下落しています。

今回のケースでは、一括投資では買付(取得)単価が1万円となるのに対し、積立投資では平均取得単価が6870円となっています。

(計算方法)50000円÷7.278口=6870円

 

積立投資では、単価が下落している局面では購入数量が増加し、平均取得コストが抑えられると認識してください。

 

積立投資では、過度に単価の下落を警戒する必要はありません

「損失が怖い方」、「リスクを抑えて資産運用を行いたい」方にとって、積立投資はピッタリとなります。

こうした点を踏まえ、iDeCoやつみたてNISAを利用し投資信託で資産運用を検討してみて下さい。

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日本株情報部 アナリスト

角屋 昌範

2005年に国内証券会社へ入社後、投資情報部や調査部に在籍。投資情報部では、米国や香港株式市場見通しの作成など海外金融市場に関する調査業務に携わる。調査部では、ネット関連セクターを中心に国内個別企業のアナリストレポートを執筆した。 国内証券会社などを経て2019年に入社。主に先物市場見通しなど「デリバティブコンテンツ」を担当。 CFP DCプランナー

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