解説!つみたてNISAとiDeCo

2024年からNISA新制度で投資を始めようという方々に伝えたい複雑化するカントリーリスク

2024年からNISA新制度がスタートします。国主導による「貯蓄から投資へ」の掛け声からは少し浸透速度が遅いものの、つみたてNISAの加入者増により流れは変わってきている印象です。


その一方で特に投資初心者のあいだで、投資を始めるなら新制度の開始する2024年でいいのでは?という傾向があるのも確かな特色です。そのような相談を受けたとき、筆者は2024年に予想されるカントリーリスクが気にかかります。「これから投資を始める予定の方」は、いつスタート時点とするのがベストなのでしょうか。


2024年はどのような年になるのか

2024年を予想するにあたって、大きなテーマとなるのがアメリカ大統領選挙です。4年ごとにアメリカ国内のみならず、世界を巻き込む大きなうねりになります。今回特に注目されているのは、2021年まで同国大統領を務めたドナルド・トランプ氏が再び共和党から出馬するのではという点です。


実際にトランプ氏は2022年11月に出馬表明をしています。共和党の予備選挙を勝ち進むのか、有力な対抗馬が現れないかが注目点となっています。人々の予想を上回る過激な言動や行動が注目されますが、保守層を中心に強力な岩盤支持層を掲げており、来年はトランプ氏が中心軸の1年となることはまず疑いないでしょう。


トランプ2回目の影響は限定的という見立ても

一方で相場は先読み傾向が強いです。トランプ氏とはいえ1度大統領を経験し、いわゆる政権の枠組みのなかで過度な大暴れはできないのではないかという見立ても根強いです。1期目に推し進めた減税政策や、物議をかもした移民政策も同様です。トランプ出馬関連よりも、FRB(アメリカ連邦準備理事会)による利上げ推測や緊迫化する中国の関係変化を警戒する投資家も多いです。


中国と台湾の関係

その中国は、トップの習近平国家主席が2027年までの台湾進攻を軍部に指示したのではというアメリカ軍要人の発言が伝わってきます。日本にとっては他国のこととはいえ、距離的に国内の影響も著しいと考えられます。


NISAで国内型投資信託を「比較的安全だから」と選択している方も多いと思いますが、たとえば日本の石垣市にとっては県庁所在地の那覇よりも、台湾の首都であるタイペイが近いです。台湾自体2024年1月にトップを決める総統選が控えており、親中国と反中国の政党で激しい争いが予想されます。こちらの動向も合わせて注目しましょう。


投資の勉強をするなら2023年のうちに?

このほかにもロシアとウクライナの戦争など、2024年は既にカントリーリスクが可視化している1年と目されています。NISA新制度を受けて来年から投資をスタートしようと考えている人も多いと思いますが、投資初心者には厳しい局面になる可能性は高いでしょう。


それよりは新型コロナも落ち着き、比較的情勢が安定している2023年のうちにNISAをはじめ、慣れておくことをお勧めします。もちろん記事執筆時(※2023年2月)以降、世の中にどのような動きがあるかはわかりません。より正確にお伝えするなら2023年現在の「落ち着いているうちに」でしょうか。


物事をはじめる時に熱量は上下しますが、投資に関しては更に相場が加わるという種類のものです。せっかく投資を通して世の中を知るチャンスがあったのに1年先送りし、相場が荒れたことによりスタートする機会を無くすことは、とても残念なことだと思います。


投資の先送りはリスクヘッジといえるのか

本記事は投資メディアの記事なので、敢えて投資をはじめるべきもの、という視点で書いています。当然ながら、2024年のNISA新制度開始を待たず投資をはじめ、短期的に損失が生まれる可能性はゼロではありません。


インデックスの参考指標を見ても、決して右肩上がりではないことも理解できます。それでも筆者は、早期に投資をはじめることのメリットが大きいと考えます。その根拠となる考え方は「時間の分散」です。


投資の勉強をしたことがある方は、長期投資のメリットとして資産の分散(株や投資信託、不動産などポートフォリオを分けること)と銘柄の分散(投資先の会社や銘柄を分けること)があります。残る1つのメリットが時間の分散です。


一生を横軸で見たときに、資産を確定させるゴール?が誰にでもあると思います。終着点に向かってスタートを長くし、投資の期間を長くすることで、投資のタイミングを分ける考え方です。良い時も悪い時も含めて均等化することによって、リスクを抑制することは長期投資の本質といわれています。


NISAは当初、現役世代の資産底上げを期待して精度が稼働するもあまり受け入れられず、次策として2018年からスタートしたつみたてNISAが少しずつ浸透してきました。今回の新制度は第三弾です。社会における投資の大切さを、果たしてどれくらい伝えることができるでしょうか。


この連載の一覧
2025年の税制改正要望、NISA制度・投資関連のものには何がある?
【徹底解説】iDeCoによる節税は嘘と言われるのは本当?実際にシミュレーションしてみた
株価下落で「新NISAで損切り」が話題に!2024年の積立投資のリターンとは
新NISA、オルカン一択は止めた方が良い?ポートフォリオの理想と現実とは
「貯蓄から投資へ」が進まない理由とは?金融教育の義務化で今後は状況が変化する?
新NISAは何歳からできる?年齢制限はある?50代60代こそ始めるべき理由を解説
新NISAの口座変更手続きとは?体験談とともに解説
証券会社が潰れたら株やお金はどうなる? 新NISAの注意点とあわせて解説
人気のつみたてNISAファンド「iFree S&P500インデックス」と「iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジなし)」を初心者向けに解説します
つみたてNISA【たわらノーロード】シリーズ解析!「全世界株式」と「先進国株式」を比較してみた
資産を育てるチャンス!新しいNISAで高配当株投資は本当にもったいない?
少額投資は意味がないって本当?3つのメリットとシミュレーション結果を徹底解説!
2023年に廃止されるジュニアNISAを賢く運用するコツは?注意点もあわせて解説
【2024年新しいNISA開始】2023年にNISAは始めるべき?メリット・デメリットを解説
資金流入額の多い投資信託は運用効率が良い!
インベスコ世界厳選株式オープンへの資金流入が目立つ
改めて開設手続きは必要?亡くなったらどうなる?新NISAのよくある質問にFPが回答!
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」と「楽天・全米株式インデックス・ファンド」はどちらを選ぶべき?2つの銘柄を比較してみた
「eMAXIS Slim全世界株式」へのさらなる資金流入に期待!
初心者におすすめ「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」について解説します!
新NISA、成長投資枠のファンド約1,000本が公表に!あの人気ファンドはどうなる?
企業型DCやiDeCoは転職後も持ち運びが可能!
2023年にNISAで投資する場合の注意点
【初心者向け】2024年以降の新NISAの特徴は? 現行NISAと併用は可能なの?違いについてカンタン解説!
NISAは60歳からでも出来る!一般とつみたての違いを知って老後資金を運用しよう
新NISAとiDeCo、どちらを選ぶべき?それぞれのメリット・デメリットと選び方
1億総NISA時代にIFAが価値提供できるものは何か
2024年からNISA新制度で投資を始めようという方々に伝えたい複雑化するカントリーリスク
つみたてNISAに確定申告は必要?損失が出た場合の控除など詳しく解説
【確定申告】株の特定口座(源泉徴収あり)とは?取引口座別の確定申告方法とメリットについて
急落後に戻りが期待できる投資信託で運用しよう
本当に一時金形式で受け取った方が良いの?
退職所得控除の利用方法に注意すべき!
素敵な老後を過ごすために積立投資を始めましょう
つみたてNISAは一括購入できる?年間非課税枠を使い切る方法を詳しく解説
2024年から新NISAへ。生涯の投資プランを設計しよう
来年はインデックスファンドで積立投資をしよう
【つみたてNISA】初心者の買い方~SBI証券とゆうちょ銀行を例にはじめ方をご紹介~
残り約1年のジュニアNISAに注目集まる
【つみたてNISA】専業主婦にもおすすめの理由とは?一般NISAとの違いも解説
一般NISAとつみたてNISAを比べてみる ~金融庁「NISAの利用状況」から~
マッチング拠出とiDeCoの併用は不可!
給与受け取りか、企業型DCで運用するか!
企業型DCとiDeCoの併用が可能に!
NISAのロールオーバー(下)
つみたてNISAが利用できない?純金積立での投資をおすすめしない人の特徴5選
将来の資産形成のために積立投資をしよう!
NISAのロールオーバー(上)
換金自由度、それとも税制メリットを優先しますか!?
iDeCoの死亡一時金は受取人指定が可能
一時金、それとも年金受け取りが良い?
iDeCoの運用は投資信託を中心に!
NISAの恒久化は老後資金の獲得方法になるか
DC法改正を活かし受取資産を増やそう
iDeCoの掛金は毎月拠出が良い?それとも年払い?
値下がりはチャンス!ドルコスト平均法
積立投資の開始はお早めに!
積立投資では上昇局面で利益が膨らみやすい
3人に1人が積み立てなし? つみたてNISAの事実
積立投資での投資信託の単価下落は怖くない
iDeCoの金融機関選びはコスト面を重視しよう
「つみたてNISA」の9割に迫る、投資デビュー
iDeCoは引き出し制限に注意も節税メリットは魅力
つみたてNISAやiDeCoはどんな人が加入できるの?

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

工藤 崇の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております