解説!つみたてNISAとiDeCo

残り約1年のジュニアNISAに注目集まる

約1年後の2023年末に、ジュニアNISA(未成年少額投資非課税制度)は当初の予定通り終了となります。期間が延長された一般NISAに比べ、ジュニアNISAはあまり利用が進んでいませんでした。2020年3月に法案が可決されて、延長されることなく、予定通り終了が決まりました。すると、意外なことが起こったのです。


皮肉にも、終了が決まったら利用急増


2023年末の終了が決まったとたん、それまで利用者が伸び悩んでいたジュニアNISAの口座が増え始めたのです【グラフ】。


 

増加の理由は、2023年末の制度終了後は、それまで最大のネックだった「長期間引き出すことができないお金」ではなくなるためと考えられています。


ジュニアNISAの概要


ではまず、簡単にジュニアNISAについて説明しておきましょう。


ジュニアNISAは、未成年者名義のNISA。対象の金融商品は成人対象の一般NISAと同じで、上場株式や公募株式投資信託などです。本来は利益に対して20.315%が課税されるところが非課税になります。原則として、親権者が未成年者の代理で運用管理を行いますが、親や祖父母の資金の名義貸しでの利用はできません。未成年者に贈与した資金を運用することとなります。


成人対象の一般NISAとの主な違いは、次の通りです。

①売却代金は、口座名義人が3月末時点で18歳になる年の前年12月末まで引き出せない(「払い出し制限」という)

②年間投資上限額が80万円

③金融機関の変更不可


上記の①が定める時期は、多くの人の場合、「高校3年生の12月末まで」となります。長年、売却代金を引き出せない不便さが、口座が増えない理由の1つだったといえるでしょう。


では、売却代金は払い出し制限期間中どうなるのかというと、「課税ジュニアNISA口座」に移され、プールされます。この資金は、ジュニアNISAの枠が残っていれば、その枠内で次の非課税投資に回すことができます。また、課税扱いで株式などを購入することも可能です。現金として引き出すことができない、というわけです。


もし引き出す場合は、それまで非課税で受け取った、配当金や売買益等すべてについての税金を納めることになります。ただし、災害等のやむを得ない事由で引き出す場合は、課税されません。


ジュニアNISAは2023年末で終了


ここまでお伝えしたのは、ジュニアNISAの基本的な制度です。ところが、2020年度税制改正で、ジュニアNISAは2023年末に制度が終了することが決まりました。


2024年1月1日以降は、新しくジュニアNISA口座を作ることができなくなります。また、それまでにジュニアNISAを開設している人であっても、2024年以降の新たな非課税投資ができなくなります。


ただし、2023年12月31日時点でジュニアNISA口座の中で保有している金融商品は、これまで同様、1月1日時点で18歳である年の前年12月31日まで、引き続き非課税のまま運用できます。


2024年以降は、年齢に関係なく売却代金を引き出せる


皮肉なことに、制度終了によってジュニアNISAの人気が高まった理由の1つが、払い出し制限の撤廃です。


繰り返し述べたように、ジュニアNISAは口座名義人が3月末時点で18歳になる年の前年の12月末まで引き出せまん。しかし、制度が終了する2024年からは、年齢に関係なく、売却代金の利益に課税されずに引き出せるようになるのです。ただし、引き出す場合は、全額で、引き出した後はジュニアNISA口座が廃止されます。


この措置が講じられるや、「高校3年生の12月までおろせないなんて、先が長いなあ」と思っていたパパやママが、ジュニアNISAに注目するようになったのです。冒頭の【グラフ】でも、制度終了が決まってからの口座数の伸びが明らかです。2021年は、3カ月ごとに10%ずつ口座数が増えているほどのハイペースとなりました。


ジュニアNISAへの新規投資は、2023年分が最終です。1年間だけでも、元本80万円までの投資による利益が非課税になるのであれば、利用価値は高いといえるでしょう。


制度終了によるロールオーバーの問題

ジュニアNISAは、成人対象の一般NISAと同様に、5年間の非課税期間が終了する時点で非課税口座に金融商品がある場合、翌年の非課税枠にロールオーバーができます。


しかし、2023年末で5年満了を迎える非課税口座をロールオーバーしようとしても、2024年からは新たな非課税投資はできません。それでは困ってしまうので、2024年から2028年までは、ロールオーバー専用の口座が設けられることになりました。「継続管理勘定」といいます。2028年というのは、ジュニアNISAの最終年である2023年から5年間の非課税期間が満了する2027年の翌年です。最後の年のジュニアNISA投資分を移管できるところまで、継続管理勘定が用意されます。


これにより、5年の非課税期間中に売却しなかった場合、投資した年から5年経過した翌年からも、ジュニアNISAの継続管理勘定で非課税の運用が続けられるというわけです。


ジュニアNISAの概要まとめ


最後に、ジュニアNISAの制度について、表にまとめておきました。

 


ジュニアNISAは、成人対象のNISAと異なる点があったり、独自のルールが設けられたりしています。詳しくは、金融庁(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/junior/index.html)や日本証券業協会(https://www.jsda.or.jp/nisa/jr/)のジュニアNISAのページをご覧ください。


なお、現在、NISAの恒久化を視野に検討が進められています。これに伴い、未成年の少額投資非課税制度の利用についても改められる可能性があります。今後の情報に注意を払うようにしてください。本文は、2022年11月21日現在の制度に基づいて記載しております。


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ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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