前回の記事『20歳代・30歳代を中心に人気沸騰、つみたてNISA』では、証券会社で「つみたてNISA」の口座を持つ人を、年代別に見てみました。今回は、つみたてNISAの口座を持っている人の実態に迫ってみましょう。
口座を作ったところでゴール?
日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査結果(2021年12月31日現在)によると、全証券会社でのつみたてNISAの口座開設総数は、約339万口座です。このうち、制度開始の2018年以後、一度でも積み立てのあった「稼働口座」は約228万口座。2021年末時点で残高があったつみたてNISA口座は、約225万口座でした。
ということは、約111万口座が未稼働、つまり一度も積み立てをしていないつみたてNISA口座です。口座を作ったものの、まだ積み立てを始めていない人が3分の1もいることがわかりました。積み立てをしたものの2021年末には解約をしている口座を含めると、残高ゼロのつみたてNISAは114万口座。これは意外と大きな割合ではないでしょうか。
半年、1年経ってみると
それにしても、あまりにも空っぽの口座が多いのはおかしいと感じました。もしかしたら、口座を作ってから積み立てを始めるまで、タイムラグがあるのかもしれません。
そこで、同じ調査結果を使い、つみたてNISAの口座数と、半年後や1年後の稼働口座数を比べてみました(グラフ1)。稼働口座とは、つみたてNISA口座のうち、2018年以降の投資利用枠で買付があった口座のことです。
グレーの折れ線グラフは、調査日時点で証券会社につみたてNISAの口座があり、一度でも買付けをしたことがある人の割合です。制度開始直後は、口座を作ってもすぐには買付けをせずにいた人が半数でした。最近では、冒頭で紹介した通り、約3分の2です。
折れ線グラフの青い線が、半年前のつみたてNISA口座数に対して稼働している口座の割合、オレンジ色の線は、1年前の口座数に対して稼働している口座の割合です。四半期ごとに口座数が増えていることもありますが、半年前の口座数に対して、8割程度が稼働しています。おおよそ、1年後には稼働口座が100%を超えているので、ほとんどの人が1年以内には積み立てを開始していると考えてよいでしょう。
非課税枠40万円のうち、積立金額は?
では、つみたてNISAを利用している人は、いくらの積み立てをしているのでしょうか? 年間投資額をご紹介しましょう。
つみたてNISA口座を利用できる年間上限額は、投資元本40万円です。この調査では、つみたてNISAの1年間の積み立て金額が「0円超~20万円以下」の口座数と、「20万円超~40万円以下」の口座数をそれぞれ集計しています。この内訳について、推移を(グラフ2)に示しました。
制度開始の2018年、翌2019年は、半分以上の口座が年間積立額20万円以下でした。年を重ねるごとにつみたてNISAの口座数は増え、年間に20万円超の積み立てをする口座数の割合も増えてきました。2020年は52.47%が、2021年は59.40%の口座が20万円超の積み立てをしています。
まとめ
ここまで3回に分けて、2021年の証券会社におけるつみたてNISAの状況を見てきました。簡単にまとめると、つみたてNISAの口座数は増加傾向で、特に2021年は倍増。さらに若い世代や、それまで投資をしたことがなかった人が、つみたてNISAに積極的です。
ただし、口座開設と同時にすぐ積み立てを始めているかというと、半年から1年ほどタイムラグがあるようです。年間非課税枠の40万円に対し、積み立て金額は年ごとに増え、2021年の場合で20万円超の積み立てをした人が約6割となっていました。
2018年にスタートしたつみたてNISAは、年々利用が増えています。「人生100年時代」を迎え、時間をかけて老後の生活費を準備していこうとする姿が感じられます。
【出典】日本証券業協会「NISA及びジュニアNISA口座開設・利用状況調査結果について」
・NISA及びジュニアNISA口座開設・利用状況調査結果(全証券会社) 「直近データ (2021年12月末)」
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/nisajoukyou.html
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