解説!つみたてNISAとiDeCo

値下がりはチャンス!ドルコスト平均法

若い世代が多く利用している投資信託の積立投資。20歳代、30歳代でつみたてNISAを始める人が増えています。資産づくりをするなら、あえて価格変動リスクのある金融商品を使った積立投資がおススメです。

 

なぜ積み立てなのか


投資というと、「安い時に買って、高くなったら売る」というイメージを持っている人は多いことでしょう。けれど、それはギャンブル思考。「買う」も「売る」も、1度のタイミングに賭けてうまくいく、なんてどれだけの確率でしょう。

 

明日のことは、誰にもわかりません。

 

そもそも「損をしたくない」「元本割れは嫌だ」とおっしゃっているのに、「安い時に買いたい」などとワンチャンスを狙っていること自体、賭けに出ているというところが矛盾しています。損をしたくないから、なるべく安い時に買いたいのでしょうけれど、今日が安くても、明日はもっと安くなるかもしれないのです。

 

そこで、ワンチャンスに賭けるのではなく、いつ訪れるか分からないチャンスへの機会を増やすのです。つまり「数打ちゃ当たる」です。

 

数多く打つには、1回の投資額を少なくしなければ、総額が莫大になってしまいます。「資産が少ないから月収から積み立てる」という理由だけで積立投資をおススメしているわけではないのです。

 

数多く打ちたいから、小出しにするのです。

 

価格が変動するから良いのです


積立投資は、「数打ちゃ当たる」の他にも良いことがあります。価格変動のリスクを抑える方法として、効果的なのです。

 

投信は、株式や債券などを数百種類、まとめて運用する金融商品です。外国証券や不動産などが運用対象になっている投信もあります。これらのように、価値が変動する運用対象をパックしているため、日々、投信の資産価値は変動します。

 

投信の運用資産全体の価値を純資産総額といい、投信1口あたりの日々の価格を基準価額といいます。通常、1万口あたりで表示されています。

 

投信の基準価額や株式の株価のように、価格が上がったり下がったりする金融商品を積み立てる際には、定期的に、同じ金額で買い付けましょう。「同じ金額」がポイントです。「1株ずつ」「1万口ずつ」ではなく、「千円ずつ」「1万円ずつ」という方法です。


では、なぜ定期的に一定額で積み立てをするのが良いかを説明しましょう。(グラフ1)のような値動きをする投信があり、2人の投資家がそれぞれ積立投資をするとします。



この投信を、ガクトさんは毎月1万円ずつ買います。「定“額”積立」です(グラフ2)。



クチコさんは毎月1万口ずつ買います。クチコさんは「定“量”積立」です(グラフ3)。



基準価額が変動するので、ガクトさんは、予算1万円の範囲で買える口数が毎月増えたり減ったりします。一方、クチコさんは、基準価額の上下と同じだけ、毎月の積立金額が変わります。ガクトさんの口数を重ねた(グラフ4)とクチコさんの金額を重ねた(グラフ5)を並べて見てみましょう。



ガクトさんとクチコさんが、半年積み立てを続けたらどうなったでしょうか。(表)で6ヵ月間の積立明細を見てみましょう。



たまたま2人とも投資金額の合計は6万円でした。けれど、2人の平均購入価額に違いが出ています。

 

ガクトさんは9,830円、クチコさんは10,000円です。ガクトさんは基準価額の低い月に多くの数量を積み立てることができ、基準価額の高い月にはたくさん積み立てができませんでした。

 

そのおかげで、平均価額が引き下がっているのです。

 

もし、この後、基準価額が9,900円になったらどうでしょうか。ガクトさんは含み益が出ていますが、クチコさんは含み損です。

 

何かの商品を買う際、同じ予算内で安い品物はたくさん買えるのに、高い品物は少しか買えないのと同じです。安いものをたくさん買い、高いものを少しだけしか買わなかった時の購入価額の平均は、安い方に近くなります。

 

このように、同じ金額で積立投資を行う方法を「ドルコスト平均法」といいます。ドルコスト平均法による積立投資プランは、値段が変動するリスクを抑える効果があることを覚えておくと良いでしょう。

 

ただし、一方的に値下がりし続けるものには不向きです。どんなに買い値平均を引き下げても、積み立てているうちにもっと目減りしてしまっては、元も子もありませんからね。





この連載の一覧
2025年の税制改正要望、NISA制度・投資関連のものには何がある?
【徹底解説】iDeCoによる節税は嘘と言われるのは本当?実際にシミュレーションしてみた
株価下落で「新NISAで損切り」が話題に!2024年の積立投資のリターンとは
新NISA、オルカン一択は止めた方が良い?ポートフォリオの理想と現実とは
「貯蓄から投資へ」が進まない理由とは?金融教育の義務化で今後は状況が変化する?
新NISAは何歳からできる?年齢制限はある?50代60代こそ始めるべき理由を解説
新NISAの口座変更手続きとは?体験談とともに解説
証券会社が潰れたら株やお金はどうなる? 新NISAの注意点とあわせて解説
人気のつみたてNISAファンド「iFree S&P500インデックス」と「iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジなし)」を初心者向けに解説します
つみたてNISA【たわらノーロード】シリーズ解析!「全世界株式」と「先進国株式」を比較してみた
資産を育てるチャンス!新しいNISAで高配当株投資は本当にもったいない?
少額投資は意味がないって本当?3つのメリットとシミュレーション結果を徹底解説!
2023年に廃止されるジュニアNISAを賢く運用するコツは?注意点もあわせて解説
【2024年新しいNISA開始】2023年にNISAは始めるべき?メリット・デメリットを解説
資金流入額の多い投資信託は運用効率が良い!
インベスコ世界厳選株式オープンへの資金流入が目立つ
改めて開設手続きは必要?亡くなったらどうなる?新NISAのよくある質問にFPが回答!
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」と「楽天・全米株式インデックス・ファンド」はどちらを選ぶべき?2つの銘柄を比較してみた
「eMAXIS Slim全世界株式」へのさらなる資金流入に期待!
初心者におすすめ「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」について解説します!
新NISA、成長投資枠のファンド約1,000本が公表に!あの人気ファンドはどうなる?
企業型DCやiDeCoは転職後も持ち運びが可能!
2023年にNISAで投資する場合の注意点
【初心者向け】2024年以降の新NISAの特徴は? 現行NISAと併用は可能なの?違いについてカンタン解説!
NISAは60歳からでも出来る!一般とつみたての違いを知って老後資金を運用しよう
新NISAとiDeCo、どちらを選ぶべき?それぞれのメリット・デメリットと選び方
1億総NISA時代にIFAが価値提供できるものは何か
2024年からNISA新制度で投資を始めようという方々に伝えたい複雑化するカントリーリスク
つみたてNISAに確定申告は必要?損失が出た場合の控除など詳しく解説
【確定申告】株の特定口座(源泉徴収あり)とは?取引口座別の確定申告方法とメリットについて
急落後に戻りが期待できる投資信託で運用しよう
本当に一時金形式で受け取った方が良いの?
退職所得控除の利用方法に注意すべき!
素敵な老後を過ごすために積立投資を始めましょう
つみたてNISAは一括購入できる?年間非課税枠を使い切る方法を詳しく解説
2024年から新NISAへ。生涯の投資プランを設計しよう
来年はインデックスファンドで積立投資をしよう
【つみたてNISA】初心者の買い方~SBI証券とゆうちょ銀行を例にはじめ方をご紹介~
残り約1年のジュニアNISAに注目集まる
【つみたてNISA】専業主婦にもおすすめの理由とは?一般NISAとの違いも解説
一般NISAとつみたてNISAを比べてみる ~金融庁「NISAの利用状況」から~
マッチング拠出とiDeCoの併用は不可!
給与受け取りか、企業型DCで運用するか!
企業型DCとiDeCoの併用が可能に!
NISAのロールオーバー(下)
つみたてNISAが利用できない?純金積立での投資をおすすめしない人の特徴5選
将来の資産形成のために積立投資をしよう!
NISAのロールオーバー(上)
換金自由度、それとも税制メリットを優先しますか!?
iDeCoの死亡一時金は受取人指定が可能
一時金、それとも年金受け取りが良い?
iDeCoの運用は投資信託を中心に!
NISAの恒久化は老後資金の獲得方法になるか
DC法改正を活かし受取資産を増やそう
iDeCoの掛金は毎月拠出が良い?それとも年払い?
値下がりはチャンス!ドルコスト平均法
積立投資の開始はお早めに!
積立投資では上昇局面で利益が膨らみやすい
3人に1人が積み立てなし? つみたてNISAの事実
積立投資での投資信託の単価下落は怖くない
iDeCoの金融機関選びはコスト面を重視しよう
「つみたてNISA」の9割に迫る、投資デビュー
iDeCoは引き出し制限に注意も節税メリットは魅力
つみたてNISAやiDeCoはどんな人が加入できるの?

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

石原 敬子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております