解説!つみたてNISAとiDeCo

2023年にNISAで投資する場合の注意点

2024年から新しいNISA制度開始

2024年1月から新しいNISA制度が導入されます。

「成長投資枠(株式や投資信託など)」年間240万円「つみたて投資枠」年間120万円まで投資することができます。

両者は併用が可能となり、最大で年間360万円までの投資が可能となります。


生涯投資枠(非課税保有限度額)最大1800万円となり、うち「成長投資枠」最大1200万円までとなります。

「成長投資枠」は利用しなくてもよく、「つみたて投資枠」だけで最大1800万円までの投資も可能となります。

2023年までのNISA制度でいくら投資してきたかは関係なく、2024年以降は新NISAで一人につき最大1800万円までの投資が可能となります。


そこで、2024年から新NISA制度が開始する前に、手始めにNISAで投資しようと考えている知人から相談を受ける機会が増えています。

日経平均が1990年3月以来の高値圏と堅調に推移していることもあり、投資に前向きになっているのかもしれません。


ちなみに現在の一般NISA(株式や投資信託など)は年間最大120万円まで投資が可能となり、最長5年間(2023年投資分は2027年12月末まで)非課税で保有できます。

また、つみたてNISAは年間最大40万円まで投資が可能となり、最長20年間(2023年投資分は2042年12月末まで)非課税で保有できます。


2027年末に売却しなければ課税口座へ移管

ただし、「ロールオーバー」の扱いに注意する必要があります。

ロールオーバーとは、非課税運用期間が終了する際、翌年の非課税投資枠を利用してNISA口座内で運用を継続することを指します。


つみたてNISAはもともとロールオーバーができないため、20年間の非課税運用期間内に売却しなかったものは課税口座に移管され、運用が継続されます。

一般NISAでは、5年間の非課税運用期間内に売却しなかった商品に関して、何も手続きをしなければ課税口座に移管され、運用が継続されます。

一方、所定の手続きをすれば、一般NISAはロールオーバーすることが可能となります。


ロールオーバーを活用すれば、当初の5年間と併せて最長10年間非課税で運用することができましたが、2024年以降の新NISAとは別建ての制度となるため、2023年までに一般NISAで投資してきた商品を新NISAにロールオーバーすることはできなくなります


つまり、2023年の投資分は2027年末までに売却するか売却しなければ課税口座に移管されます

2023年分に限らず、2022年以前に投資したものはロールオーバーすることができないため、必ず5年間で非課税運用期間が終了することになります。


ある程度利益を得られたら売却検討を

ここで改めて留意しておく点として、NISAは運用益が非課税になる代わりに、譲渡損失はなかったものと見なされることです。

NISAでの譲渡損失を課税口座で受け取った配当金・分配金、譲渡益と損益通算することはできません。

つまり損失を出した場合、救済措置が無いことになります。


特に一般NISAで投資する場合、株式などリスク性の高い商品で運用した場合、途中まで上昇していたとしても、最後の半年間や1年間で相場が急落することもあります。


以下のような事例が起きる可能性があります。

例えば、120万円で買い付けたA株式が、5年後(2027年末)の時点で時価100万円に値下がりしていたとします。

ここで売却すれば損失が確定となるため、相場の上昇を期待して売却せず、課税口座に移管したとします(売却しなければ自動的に課税口座に移管されます)。


ところが、課税口座に移管する場合、移管時点(5年後の年末時点)の時価(100万円)で買い付けたとみなされます。

つまり、課税口座における税法上の元本は100万円となります。

その後、相場が回復し、投資元本と同じ120万円まで上昇したため、売却したとします。


もともと120万円で買い付けたものを120万円で売却するため、実質的な譲渡益はゼロとなります。

しかし、課税口座では100万円で買い付けたものを120万円で売却したとみなされ、20万円の譲渡益が発生し、譲渡益課税の対象となります。



このような事態を避けるためには、基本的に非課税運用期間内に売却することを意識して下さい。

5年間という非課税運用期間の終了直前まで保有することにこだわらず、ある程度利益を得ることができたら、利益確定の売りを行うことをお勧めします

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日本株情報部 アナリスト

角屋 昌範

2005年に国内証券会社へ入社後、投資情報部や調査部に在籍。投資情報部では、米国や香港株式市場見通しの作成など海外金融市場に関する調査業務に携わる。調査部では、ネット関連セクターを中心に国内個別企業のアナリストレポートを執筆した。 国内証券会社などを経て2019年に入社。主に先物市場見通しなど「デリバティブコンテンツ」を担当。 CFP DCプランナー

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