今回解説していく通貨は南アフリカランド円(zar/jpy)です。為替市場では明確な円安・ランド高方向での推移が続いており、足もとの上昇トレンドに沿ってまずは10円の大台回復を目指したいところです。ファンダメンタルズで確認しても、市場は南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)のインフレ目標変更を好感しており、金融緩和環境にあってもランド買いが続いています。
今後のランド円の相場焦点:中銀のインフレ目標変更を市場は好感
まずは南アフリカの現在の金融政策状況を確認していきます。
南アフリカ準備銀行(SARB)は2021年11月に金融引き締めを開始。2023年5月に政策金利を8.25%まで引き上げて、2024年9月から金融緩和局面へと移行。現在の政策金利は6.75%です。
●SARBは11月に開催された直近の会合で政策金利を6.75%に引き下げましたが、その際の声明文では
・政策スタンスをより緩和する余地がある
・来年初めにはインフレ率は再び低下に向かう
・中期的に新たなインフレ目標である3%の達成に向けて順調に推移する
などの見解が示されました。
直近のSARB関連で大きな話題となったのが、インフレ目標の変更。従来の「3.00-6.00%」から「3.00%(±1.0%)」に変更されました。市場では新たなインフレ目標の設定によって中央銀行と財務省の連携が改善され、政策の信頼性が高まったとして、この動きが好感されており、足もとのランド買いにもつながったようです。
ランド円の週足分析:明確な上昇トレンドが続く、ターゲットは節目の10.00円か
下図のチャートはランド円の週足チャートになります。
現在は2020年4月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)内で推移。チャート下部に追加した「DMI」で見ても、現在は+DI>-DI(上昇トレンド)を示唆しています。トレンドの強さを示すADXも前回の分析時には低迷していましたが、その後に急上昇しており、現在がはっきりとした上昇基調にあることが分かります。
当面は前述の上昇トレンドラインを目処にした押し目買い方針が有効となるでしょう。ターゲットはチャネルラインが位置している心理的節目の10.00円付近でしょうか。
ランド円の月足分析:長期視点でも上昇トレンドに転換
今度はより長期的な視点でランド円の相場状態を確認していきます。下図のチャートはランド円の月足チャートになります。

2006年から長期に渡って下落トレンドが続いていましたが、足もとでは下落トレンドも転換。「DMI」で見ても今年に入って+DIが-DIを上回り、上昇トレンドへの転換を示唆。トレンドの強さを示すADXも低下基調が一服しつつあり、今後はさらに上昇トレンドが強まる可能性もあるでしょう。
そこで今後レジスタンスとなり得るポイントですが、チャート上では2014年11月高値の10.82円や2013年4月高値の11.24円(いずれもチャート上の青色実線)などが意識されそうです。まずは大台の10円乗せが前提ではありますが、その先のポイントとして覚えておきましょう。
今後の取引材料・変動要因をチェック:日銀の利上げペースを確認する必要
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日銀の金融政策決定会合。前週の植田総裁会見からは追加利上げを急がない姿勢がうかがえましたが、今後の日銀の利上げペースについてはその都度会合の内容を見極める必要があるでしょう。一方、南アフリカ準備銀行(SARB)は来年以降も金融緩和方針を継続する見込みです。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
・1月21日 南ア 12月消費者物価指数(CPI)
・1月23日 日本 12月全国CPI
・1月22-23日 日本 日銀金融政策決定会合
・1月29日 南ア 南アフリカ準備銀行、金融政策公表



