外為市場かく戦えり

第8回 不器用な人間でも勝つ方法を考える

イチオシ」内ではテクニカル分析を始めとしたトレードのアイディアを主に書いていますが、本コラムではその中で書けなかったことや、その後の振り返りなどに触れてゆきます。たまには番外編もあります。


今回は、ドル円でテクニカルとファンダメンタルズの方向が一致した局面の例です。

イベントドリブン(=イベントに沿っての売買)ともいえなくもないですが。


皆様の参考になれば幸いです。



空中戦はあまり好きではないが・・・


さて、私自身ですが、不器用であり、いわゆる「どんくさい人間」である点は自覚しております

スキャルピングが連続するような、まさに空中戦といった局面はあまり得意ではありません


以前ディーリングをしていた時の話で恐縮ですが、カバーディーリングの際、取引相手の金融機関に一度に出せる数量が決まっていたりします。

(例えば、1回で取引できるのは500万ドルまでの場合、それ以上の数量をカバーする際は改めてクリックして取引しなければならない)


数量が多くて1回でカバーしきれない場合、複数人でカバーすることがありました。

だいたいそういう時は経済指標の発表時でした。

発表直後に一斉に金融機関相手に取引すると、他の人はいい値段で取引できたのに、私だけ不利な値段をつかまされる、といったことが何度かありました。


ディーラーと一口に言っても、凄腕のエースディーラーもいれば、そうでないのもいます

ただ、個人の取引において、エースディーラーにならないとできないかといえば、そんなことはありません

このコーナーは、私のような「どんくさい人間」でも相場で勝てる方法を探すことを、目的の一つとしています



ドル円を買おうと思った理由


さて、今回はなぜ買おうと思ったか、理由を挙げたいと思います。

3月14日や18日には買いたいけど、乱高下した時は様子見といった内容で書きました。

あまり手を出したくはなかった局面ではありましたが、それでも手を出そうと思ったのは、以下の理由があったからでした。


・日足チャートで五陽連が出現。しかも、直近で毛抜き底を付けたほか、日足一目均衡表の雲上限を割らずに切り返しており、反発局面に入った可能性がある

・今年に入り米国の早期利下げ観測が後退

・直前の観測報道で日銀のマイナス金利を解除は織り込まれたが、どんどん利上げをする状況ではなさそう


これらを合わせ、日銀が積極的な利上げ姿勢をとらなければ、日米の金利差が大きく変わる状況にはないと仮定した場合、

・テクニカルは上向き

・日米金利差をテーマにしたファンダメンタルズも変わらず

となれば、円売りの流れが続く可能性があると考えました。


そこで、日銀会合後に下げたとしても、切り返すようならば、買いでエントリーしようと判断しました。



※Trading Viewより



結果:ドル円買いを持つ


結局、19日は149円割れ目前で下げ渋ったのを見て、その後の切り返しにあたる149.40円で買いポジションを持ちました

損切りを置くとしたら149円割れで考えていましたが、相場はそのまま上昇を続けました。



利益確定:152円は厚い抵抗、突破失敗で下げる場合は早めに逃げたい


さて、相場は翌20日に151.82円まで上昇しましたが、この日のNY市場で151円台後半に上昇したのを見て、151.25円と150.90円に利益確定のストップ注文を出しておきました。

2022年から抵抗となっている152円の厚い壁が立ちはだっていたからです。


その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)や日銀観測報道もあり、あらかじめ下げたときに備えてセットしておいたストップ注文が軒並み成立して、利益確定となりました。


冒頭で触れたストップについてですが、やはり152円の存在が大きく、超えられない場合は売りに押されて下押す展開はあり得ると読んでいたため、時間足での安値水準を割ったところに、分散して置いておきました。



勝ち方はひとつではない


以前、ディーリングしていた時に、凄腕ディーラーと自分の違いを取引履歴で比べてみたことがあります。

自分よりやや有利な値段をつかんでいるうえ、手数が私の3倍くらいあり、質・量ともに勝てないと思いました。


職業ディーラーだと勝ち目はありませんが、繰り返しますが、個人は別です。

好きな時に好きなように取引できる特権を生かし、再起不能な損失を出さなければ、またどこかで復活できます


個人にとっての勝ちは資産が増えることですので、安定して勝つためにも、勝ち方のレパートリーを増やしていくことは重要と考えます


為替情報部 アナリスト

川畑 琢也

2002年に商品先物会社に入社し外国為替証拠金取引(FX)部門に配属されたのを皮切りに、複数のFX会社・部門でディーリングや相場分析を始めとして様々な業務を担当。FX会社系総研ではシニアテクニカルアナリストとして従事、雑誌の連載やメディアへの出演などを行う。2023年にDZHフィナンシャルリサーチ入社。

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