外為市場かく戦えり

第2回 【番外編】テクニカル面から見た、これからの2024年のドル円相場見通し

イチオシ」内ではテクニカル分析を始めとしたトレードのアイディアを主に書いていますが、本コラムではその中で書けなかったことや、その後の振り返りなどに触れてゆきます。たまには番外編もあります。


さて、今回は2回目にして番外編です。テクニカル面から考察した、これからの2024年ドル円見通しです。

当方の事情によりこのタイミングでの公開となりますことをご了承ください。


2024年の予想レンジ

2024年の予想レンジ:132-160円



2023年の振り返り

まずは、2023年の動きを振り返りたいと思います。


前年10月に151.95円まで上昇して1990年7月以来の高値を付けた後の調整安の流れを引き継いでスタートすると、1月に127.23円まで下落。もっとも、この水準には18カ月線のほか、月足の一目均衡表の基準線もあり、強力なサポートとなりました。 その後は下値を切り上げる一方、上値は151円台が抵抗となり、三角保合の一種である「アセンディング・トライアングル」を形成しています。


ちなみに私、当時連載していた雑誌の2023年ドル円アンケートでは、上昇を見込んで「125-170円」と書きました。下値は127円台でしたので概ね当たったといえますが、上値については高値更新で上昇加速を見込んだものの152円を前に伸び悩む結果となりました。


※Trading Viewより


2024年の見通し

先ほどの三角保合は上抜けが期待される形であることや、保合前が上昇トレンドであったことからも、2024年はもみ合いを経て上昇が再開する可能性があるとみています。上値の目処について、152円処を上抜けると、160円付近に過去の高値があるほか、節目ということもあり、一旦は攻防の分岐点になることが予想されます。


〇主な上値目処

155.87円:1990年6月高値

160.20円:1990年4月高値

164.50円:1986年11月高値



「逆プラザ合意」の世界?

また、以前から個人的に注目しているのが、現在の相場は「逆プラザ合意」ではないかという点です。プラザ合意後は上値を切り下げる展開となりましたが、2011年を境に下値を切り上げる動きとなっています。仮にそうだとすると、プラザ合意後に下げた分の戻りを試す動きも想定されます。以下、170円前後の主な目標値です。


168.89円:23年1月安値からのN計算値

169.08円:1985年2月高値262.80円-2011年10月安値75.35円の下げ幅1/2戻し

170.23円:360円-75.35円の下げ幅1/3戻し



上値目処を170円にしなかった理由

ここで、「なぜ上値目処を170円にしない?」と思った方もいらっしゃるかと思います。その理由として、三角保合の存在があげられます。一般的に三角保合は、保合の長さの3/4を経過してもブレイクできない場合、アペックス(保合上限と下限が交差する地点)に向けて動くと言われているためです。計算上、アペックスは今年10月、3/4の地点は今年4月前後となります。アペックスが間近に迫る中、保合を上抜けできない場合は三角保合でのもみ合い長期化が予想され、170円台トライは来年に持ち越される恐れがあるためです。



サイクル面からみると 

また、サイクル面からみると、20年3月安値101.19円を起点とするボトムサイクルが継続しており、今月でちょうど47カ月経過したところです。ここ50年程の平均期間は約65カ月でした。仮に65カ月で当てはまめると、ボトムの応答月は25年8月、その間のサイクルトップは少なくとも中間地点である22年11月前後か、それ以降に付ける可能性があります。


また、より長い視点では、11年10月安値を起点とする198カ月サイクルもあり、その応答月は28年4月となります。時として、短いサイクルはより長いサイクルの影響を受けることがありますので、仮に198カ月サイクルに吸い寄せられる場合、計算上は20年3月からのサイクルは実に97カ月と過去最長となります。もし、現在進行中のサイクルが上昇トレンドの際に出現されるとされる「ライトトランスレーション」形成なら、今年4月前後とされる中間地点より後に、22年10月高値151.95円を超えてくることが予想されます。


※Trading ViewをもとにDZHフィナンシャルリサーチ作成


気になること:サイクルの経過時間 


ここで気になるのが、サイクル面での経過時間です。もし20年3月からのサイクルが198カ月サイクルの影響を受けることなく終了となる場合です。


一般的に、サイクルの許容範囲として「オーブ」が用いられます。サイクルの±6分の1に収まる数値は許容範囲内とする考え方です。198カ月の±1/6は165-231カ月となります。その165カ月目にあたるのが、25年7月となります。


仮に165カ月で終わる場合、前述の65カ月のサイクルとぎりぎり重複しているため、198カ月サイクルは機能していることとなり、次の198カ月サイクルに移ることとなります。しかし、それよりも前にボトムが到来してしまうようですと、198カ月サイクルの終了を意味することとなります。また、フォーメーション上は、22年10月を高値とする、やや左寄りのセンタートランスレーションサイクルを形成することとなり、その次のサイクルは直前のサイクルで付けた高値や安値のブレイク待ちの展開となり、それまでは方向感を模索することになるかもしれません。



リスクシナリオ

一方、リスクシナリオも存在します。冒頭で触れた「18カ月線」や「月足の一目均衡表の基準線」を割り込む場合です。

今一度、冒頭のドル円月足チャートをご覧ください。


まず「18カ月線」について、今月は141.90円台にあり、昨年1-2月や、昨年12月-今年1月の下押し局面でサポートとして機能しました。18カ月線の傾きは22年や23年に比べるとやや角度が緩くなっていますが、上向きを維持していますので、まずは第一のポイントとなります。ちょうどこの水準には三角保合の下限もあり、割り込むと下値模索の機運が高まりそうです。


次に「月足の一目均衡表の基準線(今月は132.24円)」を割ってしまうと、Wトップのネックライン下抜けが意識されやすくなる恐れがあります。万一下抜けると、Wトップの始点に相当する20年3月安値101.19円までの下落余地が生まれます。また、その場合は年間見通しの見直しは避けられそうにありません。



最後に


ファンダメンタルズについては触れませんでしたが、相場の方向と一致するファンダメンタルズが出た場合、相場は大きく動くことも予想されるため、マーケットにおける中心テーマにも注意したいところです。今後、この見通しに大きな変化が生じた場合などはアップデートしてゆく予定です。



為替情報部 アナリスト

川畑 琢也

2002年に商品先物会社に入社し外国為替証拠金取引(FX)部門に配属されたのを皮切りに、複数のFX会社・部門でディーリングや相場分析を始めとして様々な業務を担当。FX会社系総研ではシニアテクニカルアナリストとして従事、雑誌の連載やメディアへの出演などを行う。2023年にDZHフィナンシャルリサーチ入社。

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