外為市場かく戦えり

第9回 スワップは甘いささやき?

イチオシ」内ではテクニカル分析を始めとしたトレードのアイディアを主に書いていますが、本コラムではその中で書けなかったことや、その後の振り返りなどに触れてゆきます。たまには番外編もあります。


第6回の時に7.78円でランド円を買った後の利益確定と損切り水準について触れました。

今回はその後のアップデートと、高金利通貨をトレードするときの注意点を改めて振り返りたいと思います。


その時の記事は以下からご覧ください。

第6回 【デッドクロスのその後】南アフリカランド円、買いで入る


相場が落ち着いている時だからこそ、思惑と違う動きをしたときへの備えをしておきたいところです。

皆様の参考になれば幸いです。



出口は大事です


高金利通貨のトレードにおいて重要なのは、個人的には「出口をどうするか」と思っています。


現在、日本はマイナス金利政策を解除したとはいえほぼゼロに近い状況ですが、南アフリカの政策金利は8.25%もあります。

金利差で言えば8%以上ありますので、南アフリカランド円を買いで持つとスワップが毎日もらえる計算になります。

(反対に売りで持つと、毎日マイナススワップが積み重なって真綿で首を絞められる苦しみを味わうことになりかねません)


また、南アフリカランド円をはじめ、メキシコペソ円やトルコリラ円など、一部の高金利通貨は対円での値段が小さいこともあります。

元の値段が小さいこともあり、どちらかといえば値幅よりも金利差で稼ぐとの印象が強めです。


むろん、相場が落ち着いている時は金利狙いも有効に機能します。


しかしながら、問題は相場急変時です。

毎日買いスワップが入ると、「今日我慢すれば・・・」と悪魔が耳元でささやきそうですが、そんな声には注意が必要です。


出口を明確にしなかったために、相場が大きく下落する中でスワップを頼りに踏みとどまろうとするも、結局はスワップで賄いきれないほどに相場下落の含み損が増加して強制ロスカット、というのは昔から見た光景です。



傍から見ているだけでも悪夢のような景色です。


本コーナーをご覧の方には、そのような地獄は味わってほしくないとの思いから、今回はランド円の出口戦略を今一度見直したいと思います。



ランド円の損益計算


さて、スワップ投資を考えた場合、日々のスワップがどの程度なのかは把握しておく必要があります。


現状ですと、FX会社のスワップを見ると、買いは17-18円前後が多いようです。

仮に17円で続いたと仮定すると・・・

(ポジション:7.78円で2万通貨買い)


1日のスワップは

17×2(万通貨)=34円

となります。


もし1カ月(30日)保有したとすると、

34×30=1,020円

となります。


一方で値動きについて、1銭(0.01円)動いた場合の損益を考えます。

0.01(円)×2(万通貨)=200円

となります。


仮に1カ月間、プラスのスワップが17円で続いた場合、値動き的には約5銭分のプラスとなります。


繰り返しになりますが、スワップ投資がうまく機能するのは、「市場が安定している時」に「ポジションを長期間持つ」ことが可能な場合です。

先ほどの計算式では、1カ月分のスワップが5銭程度の値動きで吹き飛ぶことを意味します。

反対に、買った値段から5銭程度上で売れると、1か月分のスワップ収益に相当します。


もし1円下がったとすると、上記条件でスワップで穴埋めするためには、20カ月もかかります。

レバレッジ1倍でしたらロスカットの心配はなさそうですが、レバレッジが掛かっているのであれば、強制ロスカットの恐れはあります。

2年近くも含み損を抱えているのも、それはそれで楽ではありません。


毎日入るスワップポイントに惑わされないでほしい、ということです。



上値と下値の目処について


上値について、前回お伝えした8円台に乗せてきており、当初予定通り、8.34円(2023年11月高値)や8.81円(2022年6月高値)を利益確定の候補にしつつ、流れについてゆくトレード姿勢で行こうと思います。


・上値目処

8.34円:2023年11月高値

8.40円:2022年7月高値

8.81円:2022年6月高値


反対に下値について、保守的に行くのであれば、7.85円(3月18日安値)でポジションを減らすのも一案です。

市場が落ち着いていてリスクが取れるのなれば、最終的には当初予定の7.40円を損切の目処にする予定です。


一つ注意したいのは、主要国で株安が進み、いわゆる「リスク回避局面」となる場合です。

リーマンショックが最たるものですが、換金売りが強まる場面では、高金利通貨は特に売り圧力が掛かりやすくなります。

そのようなときは、カットラインまで耐えるのか、それとも早めにポジションを閉じて次のチャンスを狙うのか、前もって決めておきましょう。


・下値目処

7.85円:3月18日安値

7.76円:2月29日安値

7.61円:週足の一目均衡表の雲下限

7.40円:当初の損切りライン。7.50円を明確に割れた場合を想定しての水準。


為替情報部 アナリスト

川畑 琢也

2002年に商品先物会社に入社し外国為替証拠金取引(FX)部門に配属されたのを皮切りに、複数のFX会社・部門でディーリングや相場分析を始めとして様々な業務を担当。FX会社系総研ではシニアテクニカルアナリストとして従事、雑誌の連載やメディアへの出演などを行う。2023年にDZHフィナンシャルリサーチ入社。

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