外為市場かく戦えり

第35回 【どうする】ドル円、押し目がないかもしれない時

イチオシ」内ではテクニカル分析を始めとしたトレードのアイディアを主に書いていますが、本コラムではその中で書けなかったことや、その後の振り返りなどに触れてゆきます。たまには番外編もあります。


さて、相場の世界では「押し目待ちに押し目なし」という格言があります。

相場の勢いが強いときは、「下がったところで買いたかったが、大して下がらずに上昇してしまった」という経験をしたのは、私だけではないはず。

 

そんな中、どう立ち回ったかの記録です。


皆様の参考になれば幸いです。



9月米雇用統計は「強い」の一言


今回、ドル買いのきっかけとなったのは、4日の9月米雇用統計です。

リアルタイムで発表を見ていたのですが、失業率、非農業部門雇用者数(NFP)、平均時給いずれも市場予想より強い結果となりました。

ここまで強い結果となると、ドルが買われるのも納得の結果です


案の定、これだけ強い結果となれば、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」にも影響が出ないはずがありません。

雇用統計前まではあと2回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で合計0.75%の利下げを織り込んでいましたが、10日時点では0.50%の利下げを織り込む状態に。

年内の米大幅利下げ観測はやや後退しています。



円買い圧力も後退


さて、1日に石破内閣が誕生しました。

総裁選後に石破首相が日銀の追加利上げに否定的な見解を示したこともあり、足元では日銀の早期利上げ期待が後退。

円を積極的に買う地合いでもなくなりました。



ファンダメンタルズ面の状況を整理


これらを踏まえ、ファンダメンタルズ面からは、

米大幅利下げ観測後退

日銀の利上げ期待後退

の合わせ技で、ドル売り・円買いの流れに変化が出たと考えました



やや遠いところに指値を出して買い下がり戦術


さて、ファンダメンタルズ面での変化に加え、米雇用統計でドル買い・円売りの流れが出てきたと判断し、ドル円を買うことにしました。

ただ、あれだけ流れが強いと、特に4日の米雇用統計直後は手が出しづらいところです。

とはいえ、方向性が見えてきたところなので、方向感が分かりにくい相場よりチャンスでもあります。

出来れば手を出したいところです。


そうした中、週初はあまり相場を見れないという事情がありました。

高値圏で買いポジションを持ってしまうと、ストップラインを見直す間もなく成立というリスクがあります。

一方で、冒頭で触れたように、大して押し目を作らないことも考えられます。


それらを踏まえ、今回は「やや遠いところに複数の指値を出して、入ればラッキー」という、やや消極的な戦術を選びました。


4日の米雇用統計後に、こう書きました。

9月米雇用統計は「強い」の一言。来週10日の9月米CPIまで、ドルは買われやすいと見る。強い流れが出ているので安易なリバウンド狙いは危険がいっぱい。週初はあまり相場を見れないので、ドル円は5日線や日足・一目均衡表の転換線で少量買い、基準線割れで損切り、とやや遠い指値で様子見。



その後の動き


4日に指値を出した後、8日に5日線にタッチしたので、147.70円で少量の買いが成立

転換線はタッチしなかったのでこちらはキャンセルしました。


その後、ドル円は堅調な動きを見せており、9日にストップを147.90円に、10日に148.75円に上げました。

いつもの手ですが、不意の急落があっても足が出ないようにするためです。


そうして迎えた10日のNY市場です。

米9月消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったこと受けて149.50円台に上昇したものの、新規失業保険申請件数が弱い結果となり労働市場の悪化が示されたことで148.30円前後まで反落するなど荒い動きとなりました。

この時の下押しにつれる形でストップが成立。ただし、買値より上での決済ですので、利益はしっかり残りました


今回のような不測の事態に備えるうえで、ストップ注文の有効性を改めて感じました


※Trading Viewより




現在保有ポジション(執筆時点)


以下は長期保有目的

トルコリラ円 4.38円買い


この連載の一覧
第35回 【どうする】ドル円、押し目がないかもしれない時
第34回 【ドル円】勝っておごらず負けて腐らず
第33回 【ドル円】守りたいもの、それは利益!
第32回 【夏の怪談】ドル円、ストップ注文を出していなかったら・・・
第31回 【振り返り】トレードにおける得手・不得手
第30回 【気のせい】天使がほほ笑む相場に見えたが
第29回 【ドル円】どうする!?往復ビンタにあったら
第28回 【ドル円】振り返ると、さえない
第27回 【ランド円】長期保有の予定だったが・・・
第26回 【トルコリラ円】損切りだけど、悔いはなし
第25回 【ドル円】風向き変わった!?ならば方向転換
第24回 【ドル円】スケベはスケベのままに
第23回 【ドル円】是生滅法の心境で
第22回 【振り返り】今年前半の損益とトレード
第21回 【ドル円】約37年半ぶりの円安を見たら、欲は出るよね
第20回 慌てるな!待つも相場
第19回 相場における「恐怖」を知ろう
第18回 【解説】トルコリラ円とドル円を買いたいと思った理由
第17回 どうする!?相場にやる気がない時
第16回 【ランド円】大物を釣るための心構え!?
第14回 ドル円、ストップロスの重要性を再確認
第13回 【番外編】アップデート・ドル円の2024年見通し
第12回 チャートの声を聞いてドル円を買ってみる
第11回 豪ドル円、天井は近い?
第10回 どうする!? 選択肢がたくさんある時
第9回 スワップは甘いささやき?
第8回 不器用な人間でも勝つ方法を考える
第7回 円安が敵に回る
第6回 【デッドクロスのその後】南アフリカランド円、買いで入る
第5回 待つも相場、一進一退でも焦らない
第4回 マイナスをプラスに変えるには?
第3回 ユーロドル、どうする!?出遅れた相場への取り組み方
第2回 【番外編】テクニカル面から見た、これからの2024年のドル円相場見通し
第1回 ランド円、デッドクロスの先を予測する

為替情報部 アナリスト

川畑 琢也

2002年に商品先物会社に入社し外国為替証拠金取引(FX)部門に配属されたのを皮切りに、複数のFX会社・部門でディーリングや相場分析を始めとして様々な業務を担当。FX会社系総研ではシニアテクニカルアナリストとして従事、雑誌の連載やメディアへの出演などを行う。2023年にDZHフィナンシャルリサーチ入社。

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