「イチオシ」内ではテクニカル分析を始めとしたトレードのアイディアを主に書いていますが、本コラムではその中で書けなかったことや、その後の振り返りなどに触れてゆきます。たまには番外編もあります。
今回は、ちょうど米連邦公開市場委員会(FOMC)目前ということで、ポジション管理とともに相場における恐怖について考えてみました。
皆様の参考になれば幸いです。
怖いものは怖い
さて、いきなりですが、現実の世界では怖いものはたくさんあります。
昔は「地震、雷、火事、親父」とも言われましたが、現代なら「人」とか「SNS」なんかも入ってきそうな気がします。
中には「饅頭が怖い」という人もいたりしますが。
話を戻しますと、相場の世界では、「想定外の変動」や「自身のキャパシティを超えたポジションサイズ」などがあると思います。
まず後者について、たとえば普段10ロットしか取引してないのに、突然100ロットで取引すると、損切りした時の怖さばかり気になってしまい普段通り取引できない、というのはよく聞く話です。
職業ディーラーなら「少しずつロットを増やして慣れてゆく」ことになりますが、個人投資家の場合は「無理して増やさず、現状のロット数で取引を続ける」という選択もできます。収益のノルマがないならば無理してロット数を増やす必要もないため、仮に増やすとしても現在のロット数に慣れてからでも遅くありません。
恐怖の正体が見えてくれば対処法はある
さて、「想定外の変動」についての話をする前に、怖さの正体は「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではないですが、正体がわからない点があります。
しかし、正体がわかれば対処法も見えてくるので、恐怖を和らげることができるのではないでしょうか。
過去のケースで振り返ると、たとえば「ギリシャ危機」の際は、ギリシャの財政破綻が懸念され、先行きへの不安からユーロが売られました。
その後、ギリシャ政府が緊縮財政を受け入れ、一時期懸念された欧州連合(EU)からの離脱はせずに踏みとどまるなどしたことから、時間はかかりましたが危機は脱しました。
また、「スイスショック」では、スイス国立銀行(SNB)が2011年9月に「1ユーロ=1.20スイスフラン」の防衛線を設定、1.20フランを割ろうとしたらSNBがフラン売り介入を行って防衛していました。
しかし2015年1月、SNBが介入による相場維持を撤廃したことで、急速にスイスフラン買いが強まりました。
「いつまでも防衛できないだろう」と人々は思う中、スイスフランは3年以上にわたり防衛線が維持されたことにより安心しきってしまい、結果としてスイスフラン暴騰というショック的な出来事となったことは記憶に新しいことです。
こちらは、恐怖とともに油断の例でもあります。
これらの恐怖をおびえる必要性を減らすための対処法としては、自分なりに「この先どうなるだろう?」という予測シナリオを持つことではないでしょうか。
前者であればギリシャが緊縮財政を受け入れるか離脱するか、それを市場がどうとらえるかという視点で相場を見てみることです。
後者であれば、市場が安心しきっているところでSNBが介入をやめたらどうなるか、3年以上にわたり蓄積された期待が失望に変わる瞬間を想像することでしょうか。
恐怖の正体さえわかれば、おのずと対処法は見えてくるのではないでしょうか。
ビッグイベント前のポジション見直し
さて今回ですが、5月米消費者物価指数(CPI)や米連邦公開市場委員会(FOMC)といったビッグイベントを前に、12日時点で以下ポジションを持っていました。
ドル円買い少量 157.17円買い
ドル/スイスフラン 0.8966フラン買い
いずれも結果次第で大きく動く恐れがあるイベントですので、以下ポジションの見直しを行いました。
●ドル円
156.60円で買い下がる方針を維持。156.50円レベルが底堅くなっていたことと、ストップ(21日線、156.46円)が成立してもこのポジションに対する損失は14銭程度のため、自身の許容度を超えるリスクではないと判断
●ドル/スイスフラン
12日の執筆時点でのレートで決済すれば利益は出る水準だったため、一部ポジションを決済してポジション数を減らすとともに、ストップ水準も若干引き上げ(0.8940→0.8945フラン)
結果は・・・
その結果ですが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の前に発表された5月米消費者物価指数(CPI)を受けてドル売りが強まると、ドル円、ドル/スイスフラン共に下落してストップまで一直線の展開となりました。
※Trading Viewより
ドル円
平均コスト156.89円の買い(157.17円と156.60円)を156.40円で損切り、9千円弱のマイナス
ドル/スイスフラン
0.8966フラン買いを0.8945フランで損切り、4千円弱のマイナス(スイスフラン円は175.21円で換算)
結果論で言えば、指標前にポジションはクローズしたほうがよかったのかもしれません。
しかし、相場の世界は「ノーリスクノーリターン」であることを考えると、どこかで手を出す必要があります。
指標結果を予測するのは困難でありますし、また、急速な動きを前にすると恐怖が先走るかと思いますが、予めストップの水準を設定することで恐怖を和らげるのは可能です。
万一ストップが成立した場合の損失額が限定的でしたので、結果はマイナスとなりましたが今回はあえてリスクをとる道を選びました。