BTC、戦争にも負けず…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2026年3月25日20時頃、対円では前週(7日前)比約2.0%安の1143万円前後で取引されています。対ドルでは7万2000ドルを挟んだ値動きです。
この1週間もイラン戦争を巡る報道で、BTCも神経質な動きが続きました。原油相場の上下に振らされる中、BTC円は1075万円前後を下値に1140万超えまで切り返しました。BTCドルが6万7400ドル前後から7万2000ドル付近まで上昇しました。
執筆時点では、地合いの強さが戻ってきた印象です。

※Trading Viewより
消えたはずのビットコインが?!
さて、BTC相場で話題になっているのが、失われたビットコインが戻ってきたことです。
「Gardai open EUR30m bitcoin virtual wallet」
オンチェーン分析企業アークハムやアイルランドメディアによれば、同国のクリフトン・コリンズ氏が保有していた6000BTCのうち、約10年間動きがなかった500BTCが2026年3月24日にコインベースへ送られました。これまで「永久に失われた可能性が高い」と考えられていたビットコインの一部が実際に転送されたため、市場では大きな話題となりました。
なお、コリンズ氏の残る5500BTCが未処理のまま残っており、その価値は数億ドル規模に上ります。報道によると、同氏は2011-12年ごろ、麻薬密売で得た収益でビットコインを購入。その資産にアクセスするための秘密鍵を紙に書き留め、釣り竿ケースの中に隠して保管していたとされます。
しかし2017年、コリンズ氏の服役中に家主が荷物を処分し、その紙も失われたとされていました。ところが今回、アイルランドの犯罪資産局が、ビットコインウォレットの解読に成功。欧州刑事警察機構のサイバー犯罪センターが技術支援をしたと報じられています。
「This morning, an Irish drug dealer’s transfer of 500 BTC」
BTCの「喪失」とは何か
ビットコインの「喪失」は、銀行の暗証番号やキャッシュカードをなくすのとは性質が違います。
ビットコインはブロックチェーン上に記録されていますが、それを動かせるのは秘密鍵を持つ人だけです。秘密鍵は、そのBTCを送金したり管理したりするための最重要情報です。多くのウォレットでは、秘密鍵を復元するためのシードフレーズも使われています。
この秘密鍵やシードフレーズを失うと、残高がブロックチェーン上に存在していても事実上は誰も動かせなくなります。銀行のように管理者へ連絡して再発行してもらう仕組みはありません。この状態が「ロスト(喪失)」です。
ビットコイン自体が消えるわけではありませんが、市場では流通しない供給として扱われるため、実質的に使えないコインというわけです。ここがビットコインのある意味で怖いところでしょう。ビットコインの自己管理は自由度が高い半面、管理責任もすべて保有者にあります。
「Securing your wallet」Bitcoin.org

「失った可能性」がある人や事例
こうした事例は、コリンズ氏だけではありません。
代表例としてよく挙げられるのが、ビットコインの生みの親とされるサトシ・ナカモトです。市場では「眠れる大量保有者」の象徴として語られる存在です。サトシのものとみられる大量のBTCは長年動いておらず、鍵が失われたのか、それとも意図的に動かしていないのか、今も分かっていません。
「Bitcoin’s Invisible Burn: Lost Coins Outpace New Supply」BitGo
また、約8000BTCが入ったハードディスクを誤って捨てたとされるジェームズ・ハウェルズ氏の件も有名です。
「Man who lost bitcoin fortune in Welsh tip explores purchase of entire landfill」
このほか、本人が亡くなった後に家族が秘密鍵を把握しておらず、資産を引き出せなくなる「相続ロスト」も現実の問題です。個人だけでなく、初期にBTCを保有していた企業や団体でも、管理体制が不十分だった時代のコインが実質的に動かせなくなっている可能性はあります。
失わないための対策
では、ビットコインを失わないためにはどうすればよいのでしょうか。
基本は、シードフレーズや秘密鍵をオンライン任せにせず、安全に保管することです。スマートフォンのメモ、メール、クラウドだけに保存するのは避け、紙や金属板などオフラインでも残す方法が一般的です。加えて、保管場所を分散させたり、家族に最低限の引き継ぎ方法を残したりすることも重要です。
一方で、いったん失った秘密鍵を回復できるかというと、答えはかなり厳しいものになります。完全に情報を失った場合、現在の技術で総当たり的に秘密鍵を解読するのは現実的ではありません。
ただし、パスワードの一部を覚えている、ウォレットファイルが残っている、バックアップの手掛かりがあるといった場合には、専門業者の支援で復元できる余地が残ることもあります。
ビットコインでは値動きばかりに目が向きがちですが、意識すべきなのは「どう買うか」より「どう失わないか」かもしれません。
※今週のまとめ




