日々是売買~トレードへの道

第124回「ドル円は160円突破 為替介入はあるか?」

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ドル円はついに160円突破 中東紛争が長期化するとの懸念で

 

米国とイスラエルによる電撃的なイランへの先制攻撃から1月が経ちましたが、事態が収束に向かう兆しは見られず。WTIや北海ブレントなど原油価格は高止まりし、インフレ再燃への懸念が強まる日が続いています。先週は「中銀ウィーク」となり、各国中銀の政策を精査する週となりましたが、今週は再び中東情勢に絡んだヘッドラインに振り回される週となりました。

 

*Trading Viewより

 

今週の注目はなんと言っても「TACO」の影響力低下でしょうか。週明け23日にはトランプ米大統領がSNSへの投稿で「イランとこの2日間、非常に良好で生産的な対話をした」「イランの発電所とエネルギーインフラへの攻撃を5日間延期する」と表明。中東情勢を巡る懸念が緩和し、WTI原油先物価格は1バレル=84.37ドル前後まで急落し、ダウ平均は一時1100ドル超急騰しました。為替市場では足もとで進んでいた「有事のドル買い」を巻き戻す動きが優勢となり、ドル円は一時158.20円まで値を下げる場面がありました。

 

それでも、米国とイランの停戦合意に向けた協議が難航するとの警戒から、リスク回避の動きは継続。原油先物相場はじりじりと値を戻し、株価が軟調に推移すると為替市場でも「有事のドル買い」がじわりと強まりました。そのような状況下、26日のNYの株式市場がクローズした後にトランプ米大統領が「イランとの協議は継続中で、非常に順調に進んでいる」「イラン・エネルギー施設攻撃までの期限を4月6日に延長する」と表明。時間外の原油先物が急落し、米株価指数も一転上昇。為替市場ではドル売りが優勢となりました。

 

 

もっとも、この「TACO」の効果は非常に一時的なものにとどまりました。翌27日には原油高・株安・ドル高がさらに進んでいます。この日には米国・イスラエルがイラン国内の複数の核関連施設と製鉄所を空爆した一方、イランもペルシャ湾岸地域全体への攻撃を継続し、トランプ米大統領の要求を受け入れない姿勢を示しました。また、イラン革命防衛隊(IRGC)は「原油輸送の要衝ホルムズ海峡を閉鎖した」とし、同海峡を通過しようとする船舶に「厳しい措置」を取ると警告しています。アラグチ・イラン外相は「イスラエルはイランの最大級の製鉄所2カ所、発電所、原子力施設を含むその他インフラを攻撃」「この攻撃は、外交のための期限延長に矛盾する」「イスラエルの犯罪に対して重い代償を課す」と表明しています。

 

米国・イスラエルとイランの停戦合意に向けた協議が難航し、軍事衝突が長期化するとの不安が高まる中、この日のWTI原油先物価格は1バレル=101ドル台まで急伸し、ダウ平均は900ドル近く急落。為替市場では「有事のドル買い」が優勢に。ドル円は心理的節目の160円を上抜けると目先のストップロスを巻き込んで一時160.41円まで上値を伸ばしています。160円台に乗せるのは政府・日銀が為替介入に踏み切った2024年7月11日以来約1年8カ月ぶり

 

*Trading Viewより

 

結局は、この1カ月続く「原油高・株安・ドル高」の流れが続いただけ。これまで効果的だった「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつもビビッて引き下がる)」の影響力が低下していることが顕著に。2025年の貿易戦争において「TACO」は非常に効果的でしたが、現在の中東紛争においてはその影響力が顕著に低下していることが分かります。トランプ米大統領の度重なる譲歩とイランの強硬姿勢を受けて、マーケットは「TACO」が単なる実効性のない時間稼ぎに過ぎないと見なしているようです。

 

今週のマーケットの値動きを見ると、この「TACO」がむしろ相場の乱高下と投資家のリスク・オフ姿勢を強めているようにみえます。また、2025年の貿易戦争下では関税引き上げが米国のインフレ圧力の高まりにつながるかどうかは不透明でしたが、今回は原油などエネルギー高に起因するインフレ波及が鮮明となっています。

 

ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は英誌「エコノミスト」のインタビューで「我々は本物のショックに直面している」「マーケットは楽観的すぎるかもしれない」「このショックは、おそらく今我々が想像できる範囲を超えている」などと話し、中東紛争の影響を見極めるに当たり、油断しないよう警告しています。現在、市場は「キャッシュ・イズ・キング」の局面に入ったとの見方もあるだけに、我々個人投資家としては「最大限の防御姿勢をとる」必要がありそうです。

 

 

 

投機筋の円売りポジション、6.3万枚と前週とほぼ変わらず

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が27日(日本時間28日早朝)に発表した3月24日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は6万2806枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、前週から4974枚減少しました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

なお、投機筋の円のポジションは昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが優勢となり、4月29日には17万9212枚と過去最大を更新しています。ただ、それ以降はその動きが反転。投機筋の円売りポジションが6万枚を超えた水準で推移しています。

 

 

 

162円付近が為替介入ライン?

 

現在、政府・日銀による為替介入ラインは「162円付近」との見方が多いようです。2024年7月に記録した当時の円安・ドル高水準「161.95円」を超えるかどうかが焦点となっています。政府・日銀は「無秩序な変動への警戒」を掲げており、「特定の水準」よりも「変動の速さ」を重視していますが、節目となる162円を突破すると円安・ドル高に拍車がかかる=無秩序な動きになるリスクがあるため注視されています。

 

一方で、「今回はイラン戦争を受けた原油価格の高騰がドル高の背景にあるため、円買い介入のハードルは高い」との見方も多いようです。「ドル円相場が乱高下しながら上昇しない限り、介入は起こりそうにない」と言います。また、前回のレート・チェックは衆院選を前に市場が不安定化したため、「米当局の理解を得やすかった面があるものの、当時の水準を超えたからといって何か動きがあるとは言えない」とし、「介入のハードルは高い」との見立てです。

 

私個人としては「中東情勢の混乱」が落ち着き、これまでの原油高・株安・債券安・ドル高の巻き戻しでドル円が下落することを個人的には願っていますが、現在のトレンドが転換する機会はまだまだ先のように感じます。これ以上のドル高・円安(さらには株安なども)は困るところではあるのですが、マーケットにあわせていくしかないものまた事実。今後もこの状況が続くと想定し、来週以降もドル円の押し目を狙っていきたいと思います。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第124回「ドル円は160円突破 為替介入はあるか?」
第123回「中銀ウィーク通過 各国利上げ観測が高まる」
第122回「ドル円、160円目前 中東情勢の混乱は継続」
第121回「世界的株安・米原油2年半ぶり高値・有事のドル買い 中東緊迫」
第120回「円安は進みやすく、円高は進みにくい?」
第119回「日本の『トリプル高(株高・債券高・通貨高)』は続くのか」
第118回「日経平均先物、夜間取引で2000円高の急騰 自民圧勝期待で」
第117回「為替介入は『なし』、ドル円急落はレートチェック」
第116回「日米当局、レートチェック お上に逆らうな(為替介入)」
第115回「ドル円、衆院解散で160円突破か!?」
第114回「ドル円、1年ぶり高値 衆院解散を検討との報道」
第113回「ドル円、2026年上昇予想が増加」
第112回「ドル円、年初来高値158.87円が視野」
第111回「来週はいよいよ日銀金融政策決定会合」
第110回「米感謝祭ウィークで商いは低調 来週に期待」
第109回「ドル円、10カ月ぶり高値 利上げや介入への警戒高まる」
第108回「米利下げ確率、1カ月前の94.4%から45.8%まで低下」
第107回「高市トレード(円売り・株買い)継続」
第106回「終わってみればサナエノミクス」
第105回「VIX(恐怖指数)、半年ぶりの高水準を更新」
第104回「忘れた頃にやってくるトランプ砲、でもTACOか?」
第103回「米政府機関の一部閉鎖で投機筋ポジション発表されず」
第102回「ドル円、ついにレンジをブレイクか!?」
第101回「サナエノミクス!ジャパン・イズ・バック!に期待」
第100回「上サイド突破を期待しながらポジションを追加」
第99回「ドル円、結局1カ月前と同様の結果に」
第98回「ドル円、パウエル発言伝わると急落」
第97回「投機筋の円買いポジション、縮小が続く」
第96回「上サイド突破を期待しながらポジションを維持」
第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」
第94回「夏休み前、傾いたポジションは整理される傾向に」
第93回「参院選後も円安の流れは変わらずか!?」
第91回「ポジションを切るかどうかの瀬戸際」
第90回「ドル円、来週以降は買い増しを検討」
第89回「投機筋の円ロングポジション、縮小が続く」
第88回「投機筋の円ロングポジション、縮小」
第87回「ドル円、140円割れを目指す展開か!?」
第86回「米国『トリプルA』格付け失う 来週は為替協議の思惑も」
第85回「投機筋の円買いポジション、やや拡大 過去最大を更新」
第84回「投資家心理は改善 恐怖指数=VIXは順調に低下」
第83回「注目は24日予定の日米財務相会談 為替について協議」
第82回「ドル円『1日の値幅は3円超』 売っても買ってもやられる相場」
第81回「虎の子だったはずのポジションが見事に粉砕」
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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