米国・・・中銀VS政府
先週開催された連邦公開市場委員会では、金融政策の行方のみならず、もう一つの焦点が市場の視線を集めました。
それは、ジェローム・パウエル米連邦準備理事会(連邦準備制度理事会)議長の去就です。
パウエル氏の議長任期は2022年5月23日に始まり、今月15日をもって一区切りを迎えます。
これまで歴代議長は、任期満了とともに理事職からも退くのが通例でした。
しかし今回、同氏は理事として留任するという異例の判断を下しました。
理事としての任期は2028年1月31日まで残されています。
この決断の背景にあるのは、言うまでもなくドナルド・トランプ政権との対立です。
そもそもパウエル氏をFRB議長に抜擢したのは、第1次トランプ政権でした。
前任のジャネット・イエレン氏をトランプ大統領が敬遠していたこともあり、共和党寄りで実務経験豊富なパウエル氏に白羽の矢が立った形です。
低金利政策の継続という政権の思惑に沿う人物と見られていたのでしょう。
しかし現実は異なりました。政治的圧力に屈することなく、中央銀行としての使命(「物価安定と雇用最大化)を忠実に遂行するパウエル氏とトランプ大統領の関係は、次第に軋みを増していきます。
そして第2次トランプ政権下では、その対立はより鮮明なものとなりました。
象徴的なのが、FRB理事だったリサ・クック氏の解任です。
名目上の理由は、2021年に住宅購入時の申告に虚偽があったとされる「住宅ローン詐欺」の疑いでした。
もっとも、この種の問題で理事解任にまで発展するのは極めて異例であり、民主党寄りとされるクック氏を排除する意図は明白でした。
現在も同氏は法廷で争いを続けています。
さらに矛先はパウエル氏にも向けられます。
FRB本部の改修費用を巡り、議会証言で規模を偽った疑いがあるとして連邦検察による刑事捜査が開始されました。
もっとも、この捜査は4月24日にアメリカ合衆国司法省によって打ち切られています。
共和党議員が、捜査継続中は次期FRB議長候補と目されるウォーシュ氏の承認を拒否する姿勢を示したことが背景にありました。

日本・・・中銀VS政府
4月28日に行われた日本銀行金融政策決定会合は、市場の想定通り政策金利の据え置きで着地しました。
事前のリークや報道により「据え置き」はほぼ織り込まれており、サプライズは限定的でした。
ただし、今回注目すべきは反対票の存在です。
高田、田村の両審議委員に加え、中立派と見られていた中川審議委員も利上げを主張し、据え置きに反対しました。
もっとも、この中川氏の任期は6月29日までと限られています。次回会合(6月15-16日)までは在任するものの、その後は退任となります。
後任には、金融緩和と積極財政に前向きな佐藤・青山学院大教授の就任が予定されています。
すでに3月にはリフレ派の浅田統一郎氏が加わっており、高市早苗政権の意向を反映しやすい布陣が着実に整えられています。
さらに今回の会合には、城内実経済財政相が出席しました。
同氏は高市首相の盟友として知られ、「サナエノミクス」を実務面から支える中核的存在です。
国家観や政策スタンスにおいても両者は極めて近く、積極財政路線で一致しています。
城内氏は今後も原則として毎回出席する意向を示しており、政府が金融政策に対する関与を強める姿勢は明確です。
日経新聞の表現を借りれば、「閣僚自ら日銀の出方に目を光らせる」状況です。
ここまで人事と制度の両面から外堀が埋められている以上、日本において米国のような「中銀VS政府」の構図は生じにくいと言えるでしょう。
よほど急激なインフレでも起きない限り、政権の意向が金融政策に反映されやすい環境が続く公算が大きいです。
FXはどう動くべきか?
このように中央銀行の独立性の度合いが国ごとに大きく異なる中で、FXにおいてはその構造差を前提に捉える必要があります。
現状のように原油高を背景としたインフレ局面では、日本は米国に比べて利上げに慎重なスタンスを維持しやすく、結果としてドル買い・円売りが優位になりやすい地合いとなります。
一方で、ゴールデンウィーク期間中に実施されたとされる円買い介入については、金利ではなく為替介入で円安を抑制した可能性が指摘されています。
低金利を維持しながら為替で調整するという政策ミックスが現実に採用されているのか、市場はなお見極めを続けています。
実際、日銀会合後に介入が行われたとの観測は2024年、そして今年と繰り返し浮上しており、無視できないテーマとなりつつあります。
このように、中央銀行の独立性や政府との距離感は、そのまま通貨の値動きに直結します。
FXにおいては、単なる金利差だけでなく、「制度」と「政治」を織り込む視点が不可欠であると言えるでしょう。





