3周年記念日に通算5度目の強気相場入り
香港上場のハイテク銘柄で構成するハンセンテック指数(HSTECH)が今年7月27日、算出開始から3周年を迎えました。提供元のハンセン・インデックシズ社によると、まさにこの日、同指数はブルマーケット(強気相場)入りしました。直近安値と比べて20%超上昇したことが理由です。今年7月27日の終値は4341ポイント、5月31日に付けた直近安値は3563ポイントで、上昇率は22%となりました。
では、強気相場は続くのでしょうか?ハンセン・インデックシズは8月1日付「インデックス・フラッシュ」で、「ハンセンテック指数が一段と上昇する余地がある」と強調しました。例証として挙げたのが、過去4回のブルマーケット入り後の上昇率です。直近安値からの上昇率が20%を超えたケースが2020年11月、22年3月、22年6月、22年11月にあり、その後の上昇率が平均26%に達しています。
指数を算出している当事者という立場を差し引くとしても、ハンセン・インデックシズは根拠もなく強気な先行き見通しを示したわけではありません。確かに今年に入り、同指数は反発基調が続いています。同社によると、7月の上昇率は16%と月間ベースでは過去2番目の大きさでした。年初来では10%超上昇しており、同期間のハンセン総合指数(HSCI)の上昇率(1.4%)を大きくアウトパフォームしています。
21年3月以降はハンセン総合指数をアンダーパフォーム
ただ、長期的視点からみた両指数のパフォーマンスは逆転します。ハンセンテック指数は算出が始まってから半年あまりは上昇し続け、21年2月には開始当初を約50%上回る水準達しました。ところがその後は低落傾向が続き、21年3月から現在までハンセン総合指数をアンダーパフォームしています(図表1)。
図表1
ハンセン総合指数は香港市場の幅広いセクターをカバーする株価指数です。対してハンセンテック指数のウエート配分は23年6月時点で情報技術セクターが73%、一般消費財セクターが18%となっています。ちなみに情報技術セクターの主な構成銘柄は大型ネット株の美団(03690)、テンセント(00700)、アリババ集団(09988)、JDドットコム(09618)や、スマートフォン大手の小米集団(01810)です。一般消費財の主な構成銘柄は電気自動車(EV)メーカーの理想汽車(02015)、小鵬汽車(09868)、蔚来集団(09866)やスマート家電を手掛ける海爾智家(06690)です。
つまり、ハンセンテック指数がアンダーパフォームした主因は、過去3年間の大型ネット株や新興EVメーカーの株価がさえない推移だったことにありそうです。特に、中国当局がテンセントやアリババ集団を含むインターネット・プラットフォーム企業への統制を強めた影響は大きかったようです。
中国成長戦略の担い手になれるか、戦略的新興産業の隆盛がカギ
ハンセンテック指数は導入当時、「香港版ナスダック」と呼ばれていました。香港証取に新興ハイテク企業が続々と上場し、高い成長性に着目した投資家が資金を投入する――そんな未来図をハンセン・インデックシズのみならず、多くの市場関係者が思い描いていたはずです。ゴールドマン・サックスは20年7月に公表したリポートで、ハンセンテック指数には指数連動型のファンドや上場投資信託(ETF)を通じて、向こう5年間に約140億米ドルが流入するとの予測を示しました。
現時点までの過去3年間の推移は、こうした期待の高さとは裏腹の様相を示しています(図表2)。もっとも、中国政府自身が以前から表明している通り、同国の今後の成長を支えるのは戦略的新興産業です。従来型の産業であってもインターネットサービスやデジタル化。人工知能(AI)の応用を通じて高度化を目指すことが求められます。ハンセンテック指数が本当の意味でハイテク・グロース銘柄の株価指数となるには、新たな経済の原動力となる技術、サービス、ソリューションを編み出す企業が続々と登場できるような事業環境を創り出す制度の整備が必須となるでしょう。
図表2