中国株、あのテーマはどうなった?

第62回 観光業界: 25年は休日が2日増加、国内旅行ブーム到来か

連休が長くなる25年、証券各社は運輸関連を推奨

中国の祝休日スケジュールは、政府が11-12月に翌年分を決めて公表するのが通例です。2025年の祝休日は国務院(内閣に相当)が24年11月12日に発表しました。もっとも目を引くのは、旧暦の大みそかと5月2日が新たに休日と規定されたことでしょう。



中国の証券各社はさっそく、連休拡大が観光セクター及ぼす恩恵を強調したレポートを相次いで出しました。例えば国金証券は、祝休日が2日増えたことで2025年には消費者の中長距離旅行が刺激されるとして、旅行関連銘柄を推奨しました。旅客機と高速鉄道の旅行需要が増加するとの見立てです。実際、連休は航空会社の書き入れ時です。国金証券は2024 年の国慶節(10月1日、建国記念日に相当)を例にとり、連休中の航空旅客は延べ1610 万人に上り、1 日あたり平均乗客数は新型コロナ禍前の2019年の国慶節連休を22%上回ったと指摘しました。


民生証券は、春節(旧正月)と労働節(メーデー)の連休日数は全体で変わらないまま法定祝休日の日数が増える結果、「調休」の日数が減り、週末旅行がしやすくなるとみている。観光産業の業況を改善する効果に期待を示しました。「調休」とは、連休期間をつくるために通常の休日と平日の勤務日を入れ替える中国の休日調整方法を指します。


中国政府は、内需拡大を担う産業として観光業を重視しています。来年の祝休日に拡大には、国民が長期休暇を取りやすくすることで旅行需要を掘り起こすという意味があります。国務院は2025年の祝休日発表と合わせ、休日を規定する「全国年節および記念日休暇弁法」に「全ての国民が休む祝日は、合理的に統一した調休が可能で、年次有給休暇などの制度と組み合わせて長期休暇が実現出来る。特別な事情がある場合を除き、法定祝休日の前後の連続勤務は通常6日を超えないものとする」との条文を追加しました。


習国家主席肝いりの「観光強国」、中国イメージの改善に一役

2024年は中国と欧米との通商対立が次第に深まってきただけに、国内観光の発展は重要な国策となってきたようです。それを裏付けるのが、習近平国家主席が同年5月に出した「観光政策の重要指示」です。国営新華社によると、習氏は旅行業体系の改善に力を入れ、観光強国の構築を加速するよう求め、観光業の質の高い発展が安定して長く続くよう、各地方と関連部局が責任感と使命感を持って仕事を進めなければならないと述べました。この指示は、中国共産党中央宣伝部の李書磊部長(中央政治局委員)が5月17日に北京で開かれた「全国観光発展大会」で披露しています。


習氏が重要指示に込めた観光業への期待は経済面にとどまりません。「現代観光業体系の整備に力を入れ、観光強国の建設を加速することで、観光業がより良い生活に寄与し、経済発展を支え、精神的な故郷を築き、中国のイメージを展示し、文明の相互認識を高められる」と語っています。


「中国のイメージを展示し、文明の相互認識を高める」という部分には、海外から観光客を呼び込めば対外関係の修復につながるとの考えが込められているようです。習氏は5月22日に陝西省西安市で開かれた「第14回ハイレベル観光対話」に寄せた書簡のなかで、「わが国は米国人観光客の中国旅行を熱烈に歓迎する。中国の友人と知り合い、中華文化を体験し、美しい山水を遊覧することで真実の中国を親身に感じ取ってほしい」と呼び掛けました。同会議は中国と米国の閣僚が観光分野の課題解決や協力拡大を話し合う場として、中国文化観光部、米商務部などが主催しました。


各地方に振興措置を指示、成果は25年の旧正月連休で判明

習氏の指示を受け、国務院は具体的な政策の実施を地方政府と関連部局に指示しています。9月に「観光消費の潜在力を発揮させ、観光業の質の高い発展を推し進める措置」を通達しました。音楽祭や演劇祭、アニメイベントなどと組み合わせた「芸術+観光」業態の確立や、各地方の特色を鮮明に打ち出したリゾート地区、スポーツイベントと観光を組み合わせたモデル事業、農村観光・エコシステム観光・海洋観光の開発、観光案内所や公衆トイレ、観光客向け標識などの整備、交通網の整備などの施策を盛り込みました。


こうした施策の最初の試金石となるのが来年1月末から2月初頭にかけての春節(旧正月)連休です。これまでも春節の前日、つまり旧正月のおおみそか(2025年は1月28日)に休暇をとる人は多かったのですが、冒頭でご説明したように、来年から正式に祝休日となりました。国務院の狙い通り旅行に出かける人が増えるのか、例年以上に交通機関の輸送データや人出の情報が注目されそうです。

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第62回 観光業界: 25年は休日が2日増加、国内旅行ブーム到来か
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中国株情報部

村山 広介

日本の出版社や外資系出版社に勤務したほか、シンガポールの邦字新聞社でビジネスニュース編集を経験。 2011年8月、T&Cフィナンシャルリサーチ(現・DZHフィナンシャルリサーチ)に入社。

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