高インフレ・高金利の下でも、今年は世界の主要な株式市場がおおむね堅調に推移してきましたが、香港市場はさえない相場となっています。香港のハンセン指数、東京の日経平均、ニューヨークのダウ平均およびS&P500の4株価指数のうち、年初の水準を割り込んでいるのはハンセン指数だけです。1月にはハンセン指数が他の3株価指数をアウトパフォームしていましたが、4月中旬以降はアンダーパフォームしており、ポストコロナの中国景気の回復ぶりに市場が失望していることがうかがえます。
各社がハンセン指数の目標値を下方修正
証券各社は先月以降、ハンセン指数の予想値を相次いで下方修正しました。例えばモルガン・スタンレーは中国株戦略上半期リポートで、2024年6月の目標値を21500ポイントに改定し、最も悲観的なシナリオでは14300ポイントがあり得るとみています。従来の目標値は23年末に24500ポイントとしていました。
シティグループも23年末の目標値を従来の24000ポイントから22000ポイントに引き下げました(24年上半期の目標値は23000ポイント)。同様にUBSは23600ポイントから21700ポイントに下方修正しています。建銀国際による予想レンジは18000-21500ポイント、スタンダード・チャータードによる予想レンジは18000-20000ポイント(最高23000ポイント)でした。
下半期の反転上昇、カギは中国の政策や米国との関係改善
各社のハンセン指数目標値はおおむね現在よりも高い水準です。つまり、今年下半期にハンセン指数が上昇すると予測していることになります。もっとも、こうした予測には多くの「但し書き」がついていることに投資家は注意すべきでしょう。
証券各社の予想に共通している前提は、中国政府が打ち出した景気刺激策が効果を発揮し、香港や上海、深センの証券市場に資金が流入することです。不動産取引の規制が緩和され、インターネット・プラットフォーム企業に対する監督が一段と緩むことも期待されています。
ただ、但し書きのリストはまだ続きます。まず、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ打ち止めの明確なシグナルを出し、上場企業が4-6月期に好業績を上げることが必要です。この2つの条件については、各社アナリストは実現の公算が比較的大きいとみているようですが、これとは別に実現の見通しが不確かな条件があります。中国と米国の関係改善です。
先月、ブリンケン国務長官がバイデン米政権の閣僚として初めて訪中し、習近平国家主席らと会談しました。続いてイエレン米財務長官が7月6日から中国を訪問する予定です。モルガン・スタンレーは、米中の直接対話は市場の安定につながると評価しつつ「米中関係は短期的に不透明」とみています。シティも「人民元安と米中関係の悪化が今年下半期にハンセン指数を変動させる要因になる」と慎重な見方を示しました。
拡大する構成銘柄数、新規採用に注目
ハンセン指数を巡る注目点として見逃せないのが、構成銘柄の拡大です。同指数を算出するハンセン・インデックシズ社は2021年3月、ハンセン指数の構成銘柄を段階的に増やし、最終的に100銘柄で固定する方針を明らかにしました。この方針が適用されたのは21年6月で、以降に27銘柄が採用され、2銘柄が除外されました。
新規採用の銘柄は7つの業種カテゴリーから選ばれますので、各セクターの代表的な銘柄がバランスよく取り込まれていくことになります。現時点でハンセン指数は80銘柄で構成されていますから、あと20銘柄の純増となります。今後しばらくは、四半期に一度の見直しの結果が投資家の注目を集めることでしょう。