特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2024年5月に取り上げたトヨタ(7203)の値動きを振り返ります。
1カ月後の株価は大幅安
6月10日の終値は3272円でした。5月8日の終値は3579円でしたので、値動きを見た1カ月では307円の下落となりました。35万7900円が32万7200円となり、-307円×100株で3万0700円の下落(手数料・税金は考慮せず)となりました。
下落率は8.6%で、値動きを見た期間では大幅な下落となりました。
自動車業界に対する不信感が高まる
それでは、この間の値動きを見ていきましょう。
株価は良いところなく下落基調が続きました。5月中旬には米国で4月の消費者物価指数や小売売上高が市場予想を下回ったことを要因に、米国の長期金利が低下。これを受けて為替市場では円高(ドル安)が進み、日本の自動車株は敬遠されました。
円高自体は長続きはしませんでした。ただ、ドル円が円安に振れた際には、日銀が円安を食い止めるために金融引き締め策を出してくるとの見方が浮上し、日本の長期金利が上昇して日本株の上値が重くなってきたことから、自動車株を見直すような流れにはなりませんでした。
さらに6月に入ると、国交省がトヨタを含む複数の自動車メーカーに立ち入り検査に入るとのニュースが伝わりました。トヨタは6月3日に、2014年以降、生産を終了しているものも含めて、7車種で国が定めた基準と異なる方法で試験を実施していたことを公表しました。当件に関しては他のメーカーも含めてまだ関連報道が出てきており、悪材料出尽くしとはなっていません。
ネガティブな材料が出た時は値幅か日柄の調整が必要
ネガティブな材料が出てきた銘柄に関しては、一般的にはその事象が株価の下落要因にはならないとの見方が強まるまでは買われづらくなります。値幅で一気に調整が進むのか、それとも下げが長く続いて日柄で調整していくのかを見極める必要があります。
現状では、強烈に下げる日は少ない一方でダラダラと下げており、日柄で調整しそうな印象です。
今回問題になっている認証不正に関しては、トヨタだけでなく、ホンダ(7267)、マツダ(7261)、スズキ(7269)、ヤマハ発動機(7272)の計5社で不正行為が発覚しています。こういった不祥事は、発覚したのが1社だけの場合は、その1社のダメージが大きくなりがちですが、今回のように複数だと、それは業界全体の問題と見なされ、「名前が挙がったからといってその企業の株を急いで売る必要もないのではないか」といった見方も出てきます。
ただ、複数社が対象の分、ニュースでも取り上げられる機会が多くなりますし、今回の場合には出荷停止になる対象車もあるため、業績への影響も懸念されます。そうなると、なかなか下げ止まり感が出てこないという悪い循環に陥るリスクが出てきます。
今後は他社の動向にも注目
値動きを見た期間では、5月9日の寄り付き3595円が高値で、6月7日の3194円が安値となっており、下方向に勢いがついています。
こちらは週足のチャートですが、株価は今年に入って3000円を超えてきた辺りから動きが良くなりました。その点では、下げ局面で節目の3000円が下値のメドとして意識されるかが注目されます。
また、今回の認証不正の件で名前の挙がった他4社の値動きにも注意を払っておきたいところです。6月12日時点ではスズキやヤマハ発動機にはネガティブな影響があまり見られない一方、ホンダやマツダはトヨタ同様に下げ基調となっています。似た動きとなっているホンダやマツダの下値が固くなってくれば、トヨタに対する売り圧力も和らいでくると期待できます。
弱い動きが続いている銘柄の底打ちタイミングを探るという点では、出来高が増加してくるかもポイントになります。出来高が増加するというのは、売りたい投資家だけでなく買いたい投資家も多くなっていることを意味します。買いが入っても出来高が増えてこない場合には、しばらく下げ基調が続くとみておいた方が良いかもしれません。