特定の銘柄の値動きを追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回はアイシンを取り上げます。証券コードは7259で、プライム市場に上場しています。
株式の売り出しを発表
アイシンはトヨタ系の自動車部品会社ですが、2024年6月27日に株式の売り出しを発表しています。
トヨタと豊田自動織機からは保有株式の一部、デンソーから保有株式の全部を売却したいという意向を受けており、これに応じる目的で売り出しを決定しています。野村証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を共同主幹事会社とする引受団が株式を買い取って引き受け、これを新たな投資家に向けて売り出します。
売出価格は5092円
7月8日に売出価格が5092円と決まりました。この日の終値5250円から3.01%ディスカウントされた価格となっています。売り出しに関しては、市場価格よりも低い価格で株式を取得できるというメリットがあります。また、売り出しの場合は、購入手数料もかかりません。申し込み期間は7月9日(火)~7月10日(水)となっています。
ただし、売り出しで取得した株式を売却できるのは受渡期日以降となります。今回の場合、受渡期日は7月16日(火)となっています。7月16日時点の株価が5092円を下回っていることはあり得ますので、ディスカウント価格で株式を取得できても必ず儲かるとは限りません。
売り出しと同時に株式分割や自社株買いを発表
一般的に、株式の売り出しを発表した場合、需給悪化懸念から発表後の株価は下落することが多いです。ただ、今回アイシンは売り出しと併せて(1)1:3の株式分割、(2)1700万株、1000億円を上限とする自己株取得枠の設定(自社株買い)、(3)2500万株の自己株消却-を発表しています。これらは、株価の急激な下落に歯止めをかける策といえます。
実際、発表を受けた6月28日の株価は、下落スタートとなったものの、安くなったところでは押し目買いが入って持ち直し、前日比変わらず(5243円、±0)で引けました。
受渡期日以降も5092円は重要な水準に
今回は、この売り出しに参加して配分があったと仮定して、その後の値動きを見ていきます。売出価格は5092円(100株単位)ですので、最低購入代金は50万9200円となります。なお、手数料・税金等は考慮しないシュミレーションではありますが、売り出しでは購入手数料がかかりませんので、実際の購入で必要な金額も50万9200円となります。
受渡期日が7月16日(火)となりますので、そこから1カ月後、8月16日(金)の株価と見比べることとします。
受渡期日では、様々な思惑が入り交じることから、出来高が急増することも多いです。同時期に5092円で購入した投資家が一気に増えることになりますので、7月16日以降はこの5092円が重要な価格となります。もし、5092円を下回るようなことになった場合、売り出しで取得した投資家の投げ売りが出てきて、下方向に勢いがつくリスクがあります。逆に、短期間で急騰した場合でも、早めの利益確定売りが出やすくなります。売り出し実施直後は、売り出し株の取得者がどういう投資行動を取りそうかということを意識しながら株価の値動きをイメージしていく必要があります。
企業の持ち合い解消の動きはこの先も多く出てくるでしょうから、株式の売り出しも頻繁に出てくると思われます。買いたいと思っていた銘柄が売り出しを発表することもあるかもしれません。実例をもとに値動きに注目してみることで、経験値を増やしていきましょう。