特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2025年3月に取り上げたテンシャル(325A)の値動きを振り返ります。
1カ月後の株価は大幅安
2025年4月7日の終値は1934円でした。3月5日の株価は2272円でしたので、値動きを見た1カ月では338円の下落となりました。22万7200円が19万3400円となり、338円×100株で3万3800円の損失(手数料・税金は考慮せず)、下落率は-14.9%と大きなものとなりました。
4月に入って大きく失速
それでは、この間の値動きを見ていきましょう。
上場直後の売り買いをこなした後はいったん動きが良くなり、3月17日の本決算発表を迎えました。
2025年1月期の営業利益は14.5億円。前年2024年1月期の4.7億円からは3.1倍と大幅増益を達成しました。売上高が54.1億円→128.4億円と急拡大しており、これに伴い利益も大きく増加しました。この時に出てきた2026年1月期の見通しは、前の期比11.5%増の16.2億円となりました。
決算発表翌日の3月18日は買われる場面もありましたが、高くなったところでは売りに押されて下落で終えました。着地が3倍増であっただけに、見通しがやや保守的と受け止められたと考えられます。
決算反応が案外であったことから、以降はしばらく一進一退が続きました。3月31日に会社は決算期を1月から8月に変更することを発表しています。これに伴い、2025年8月期は2月から8月までの変則決算となります。これを受けた翌4月1日はやや大きめの下落となりました。
4月に入ると米国の関税強化に関するネガティブなニュースが多く出てきたことで、世界的に株式市場が大きく崩れました。4月7日の日経平均は2644円安と派手な下げとなっており、この日は大幅安となって公開価格の2000円を割り込みました。
公開価格を早期に上回ることができるかが重要
直近の下げに関しては、同社固有の理由で売られたというよりも、全体市場の影響が大きいように思われます。リスクオフムードが強まってくると、直近上場株は過去のデータが少ない分、崩れた時には株価の落ち着きどころを見定めづらく、需給が急速に悪化する傾向があります。
ただ、公開価格を下回った状態が長く続いてしまうと、その近辺まで戻した際にやれやれ売りが上値を抑えやすくなります。テンシャルは3月18日の高値が2996円までで、3000円には届きませんでした。上場2日目につけた3085円を超えられずに失速しています。2000円を上回るのに時間がかかった場合、「公開価格より下でもたつくようだと、先々で3000円を超えるハードルは高い」との見方が強まり、保有者からの見切り売りが急がれるリスクがあります。
次回の決算に要注目
値動きをみた期間では株価は大きく下落しました。ただ、「BAKUNE(バクネ)」の会社という知名度はありますので、直近IPO銘柄の中では埋もれてしまうことを回避できる要素を持っています。ブランド力はありますし、メディアで「睡眠」「疲労回復」といったテーマが特集が組まれる際には、「バクネ」は取り上げられやすい商品であり続けると考えられます。
今後の株価を見る上では、「バクネ」が売れている企業ということは周知されているだけに、(1)販売の伸びが加速する、(2)収益の柱となる商品・サービスが増える、といったことが評価を高める要素になると考えられます。ただし、薄利のジャンルに手を広げるようだと、市場は「リカバリー市場自体の伸びしろが乏しい」と受け止めます。上場したことで開示資料などから会社の販売戦略も見定めやすくなっていますので、成長が長く続くことへの期待を高めるような施策が多く出てくることが期待されます。
扱う商品の単価が高額ではありますので、株安やそれがもたらす景気の悪化といった点には注意が必要です。消費者の節約志向が高まった場合には、健康系の商品は生活必需品とは言えないだけに、購入の優先度合いが下がるリスクがあります。
当面の注目点は次回の決算となりそうです。同社は11月~12月に売り上げが集中する事業構造になっているとのことです。今回決算期を変更した2025年8月期(2-8月)に関しては11~12月が含まれておらず、この期の見通しも控えめ(営業利益の見通しは3.9億円)となっています。期待値がそれほど高くない期間に販売好調が確認できれば、株価のアップサイド要因になると考えられます。一方、会社の見立て通り、さほど見映えの良くない決算であった場合には、2025年8月期を通過するまで反転のきっかけをつかみづらい状態が続く可能性があります。