特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2024年4月に取り上げた日本ビルファンド(8951)の値動きを振り返ります。
1カ月後の投資口価格は小幅安
5月16日の終値は59万8000円でした。4月16日の終値は60万円でしたので、値動きを見た1カ月では2000円の下落(手数料・税金は考慮せず)となりました。下落率は0.3%で、値動きを見た期間では小幅な下落となりました。
60万円近辺での一進一退
この期間のビルファンドは、60万円近辺での一進一退が続きました。この間の高値は5月2日の61万4000円でしたが、61万円を上回ってくると上値が重くなりました。一方、この間の安値は5月10日の58万9000円でしたが、59万円近辺では買いが入り、方向感が出ませんでした。
米国の長期金利上昇には一服感
4月の中旬時点では米国の10年債利回り(長期金利)が4.6%台に乗せるなど、金利上昇に対する警戒が高まっていました。一方、5月に入ると、米国の長期金利には上昇一服感が出てきました。4月の消費者物価指数(CPI)や小売売上高が市場予想を下回る結果となったことで、5月13日の米債券市場では、10年債利回りが4.3%台まで低下しました。
米国の金利上昇に対する警戒が後退したことを受けて、5月に入って米国の主要3指数(ダウ平均、S&P500、ナスダック)は史上最高値を更新しています。
日本の長期金利は上昇傾向
一方、足元で日本の長期金利が上昇傾向にあります。5月22日には10年債利回りが1%台に乗せる場面がありました。
J-REITを見る上で、国内の長期金利は非常に重要な要素となります。長期金利が上昇すると、借り入れを行う際の金利負担が増加します。不動産賃料も上がって運用成績も向上するのであれば問題ないですが、賃料増が見込めない場合には、金利の上昇が業績悪化要因となります。ビルファンドも5月16日までは60万円近辺でもみ合っていましたが、直近、17日以降の投資口価格が下落傾向にあります。
横ばいなら悪くはない、ただ・・・・
値動きを見た1カ月間では、投資口価格はほぼ横ばいでした。買ってみたの回でも触れていますが、REITに関しては1カ月で大きな成果を期待するというのは難しいです。継続して安定した分配金が見込めますので、値動きが落ち着いたという点では、悪くない動きであったと考えられます。
・2月から3月にかけて下げ止まったように見えるが、これで売りが一巡したかのかどうか
・足元の米国の長期金利上昇はJ-REITにネガティブな影響を及ぼさないのかどうか
という2点をポイントに挙げましたが、4月に売り崩すような動きは見られず、米国の長期金利上昇に対する警戒は和らいでいます。
ただ、国内の金利上昇という新たな懸念材料が浮上していますので、目先はこの影響を注視する必要があります。
ビルファンドはJ-REITの中でも時価総額が大きく、都心の好立地物件を多く抱えてメインスポンサー三井不動産に対する信頼度も高いことから、日本の長期金利が多少上昇したとしても、借り入れ条件が急激に悪くなる可能性は低いと考えられます。一方で、流動性が相対的に高い分、金利上昇のネガティブな側面がクローズアップされた際に、象徴的に売られやすくなるというリスクはあります。
5月22日の投資口価格は58万3000円。2024年6月期の一口当たり分配金1万2500円、12月期の分配金1万2000円という会社予想は5月22日時点でも変更はありませんので、60万円以下であれば4%を超える分配金利回りが期待できます。現時点での今年の安値が2月22日につけた56万4000円ですので、これを下回ることなく推移できるかが当面の注目点となります。