特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2023年8月に取り上げたJR東海(9022)の値動きを振り返ります。
上げて下げて1カ月ではほぼ横ばい
9月29日の終値は3635円でした。5分割しているので5をかけると18175円。8月29日の終値は18365円でしたので、値動きを見た1カ月では190円の下落。183万6500円が181万7500円となり、-190円×100株で1万9000円の下落(手数料・税金は考慮せず)となりました。下落率は1.0%でした。
なお、この期間に9月の権利確定日が含まれており、中間配当を得る権利を有していますので、実際の保有であればその分がオンされます。会社では1株当たり70円の中間配当(100株であれば7000円)を計画(2023年7月28日時点)しています。
9月後半以降は基調が下向きに
それではこの間の値動きを確認してみましょう。
9月中旬までは権利取りの買い需要も旺盛な中、株価の上昇が続きました。9月14日には3926円(1:5の分割を考慮)まで上昇して年初来高値を更新しています。しかし、中旬以降は潮が引いたかのように下り坂となりました。直近では日経平均が大きく崩れたこともあり、下げ基調を強めています。
3月、9月のような多くの銘柄の権利取りが意識される月は、実需買いが期待できる一方、そういう理由で高くなったところを売りたいという需要も発生します。権利落ちの際には、配当や優待に手厚い銘柄は見た目の水準が切り下がります。また、権利が落ちた後というのは、急いで買いたい投資家が少なくなると想定されます。配当や優待の権利を得ることを目的としない短期投資家の目線では、権利取りの人気が高そうな銘柄を早めに仕込んで早めに売るというのが、期待リターンが高い戦略の一つとなります。
また、今年の9月後半にかけては、原油価格が上昇基調を強めてきました。原油価格が上昇してくると、空運株や鉄道株など運輸系の銘柄は燃料高が意識されて敬遠される傾向があります。
株価の動きが悪くなってくると、大型の分割を実施した銘柄は分割後の需給悪化が警戒されます。そのため、9月後半辺りからは、売りが売りを呼ぶ流れとなったものと推測されます。
相場の落ち着きを待ちたい局面
値動きを見た期間では、前半の貯金があった分、水準は大きく変わりませんでした。9月29日に売っていれば大きな含み損を抱えなくて済んだことになりますが、実際のトレードではほぼトントンという状況下で、権利落ち初日に売る決断をするというのは難しいかもしれません。
引き続き保有していたと仮定した場合、足元の株価の下落に関しては、JR東海がどうという以上に日本株(日経平均・TOPIX)が全体として崩れていますので、こういった局面では慌てず相場が落ち着くのを待ちたいところです。
鉄道会社は安定収益が期待できますので、この先、株式市場全体の先高期待が後退したとしても、ディフェンシブ性が評価されやすくなります。株価の下落によって、PBR(株価純資産倍率)は0.9倍(2023年10月3日時点)と、解散価値とされている1倍を割り込んでいます。日本株に下げ止まり感が出てきた際には真っ先に見直し買いが入りやすい部類の銘柄と考えられます。
ただし、権利落ち初日である9月28日の始値が3769円で、分割によって購入ハードルが下がった後の高値となっています。買いやすくなったところを狙った投資家が報われていないという結果になっていますので、順調に戻したとしても、この近辺ではやれやれ売りが出てくるとみておいた方が良いでしょう。言い換えれば、戻り局面でこの水準を難なく上回ってくるようであれば、その後は動きが良くなる展開が期待できます。