特定の銘柄の値動きを追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は日本ビルファンド投資法人(以下:ビルファンド)を取り上げます。証券コードは8951で、J-REIT(不動産投資信託)の時価総額上位銘柄です。
REITの商品特性に関しては「J-REIT入門」で解説していますので、「そもそもREITがよく分からない」という方は、こちらも参考にしていただければと思います。なお、ビルファンドはオフィス系REITの大手となります。
≪J-REIT入門≫
2024年のREITは乱高下
2024年に入ってからREIT指数の動きが荒くなっており、ビルファンドも不安定な値動きが続いています。こちらはビルファンドの日足チャートとなります。
2024年に入って日経平均株価が大きく上昇したのとは対照的に、REIT指数はしばらく下げ基調が続きました。ビルファンドも連動する格好で下値模索の展開となりました。
2月の後半に下げ一服感が出てきた後は、押し目買いと戻り売りのせめぎ合いとなりました。ただ、下値に関しては56万円辺りで固まってきました。
その後、日銀が金融政策を転換を決定した3月19日に大幅上昇。3月22日には61万9000円まで水準を切り上げました。
ただ、そこからの上値が伸びず、3月後半から4月にかけては失速しています。直近の下げで3月の日銀会合で上げた分はほぼ消失しています。
米国では長期金利が大きく上昇
足元では米国の長期金利が再び上昇基調を強めています。足元で確認された米国の経済指標の多くが市場予想を上回ったことが背景にあります。REITは利回り商品ですので、長期金利が上昇すると敬遠される傾向があります。昨年も米国の長期金利が上昇した際に、REITが大きく売られる場面がありました。
ただ、4月15日の米国債券市場では10年債利回り(長期金利)が4.6%台に乗せ、これを嫌気して16日の日経平均は1.9%安(761円安:3万8471円)と大幅安となったのですが、この日のビルファンドは2.4%高(1万4000円高:60万円)と大幅高となりました。日本株がほぼ全面安となった一方、J-REITは上昇した銘柄が多く、興味深い1日となりました。
分配金利回りは4%程度
REITは不動産から得られる賃料収入の大半が分配金として還元されますので、分配金に対する信頼度が高い点が特徴です。
ビルファンドでは2024年6月期の一口当たり分配金を1万2500円、12月期の分配金を1万2000円と予想(2024年4月16日時点)しています。これをもとにした分配金利回りは4.1%となります。
(1万2500円+1万2000円)÷ 60万円 = 4.08333・・・(%)
ビルファンドはメインスポンサーが三井不動産で都心部好立地の物件を多く保有しており、ブランド力がある分、J-REITの中では分配金が低めに抑えられる傾向があります。4%台というのは過去の水準からは比較的高めとなります。
値動きが落ち着くかが重要に
ビルファンドの4月16日の終値は60万円でした。1口単位ですので最低購入代金は60万円となります。今回はこのタイミングで購入したと仮定して、1カ月後、5月16日(木)の価格と見比べます。手数料・税金等は考慮しません。なお、REITは株式ではありませんので、株価ではなく投資口価格という表現を使います。
ビルファンドの決算月は6月、12月となります。ここから1カ月では分配金の権利は得られませんし、実際にREITを購入する場合、1カ月という期間で成果を期待するのは早計と言えます。
今回のポイントは
・2月から3月にかけて下げ止まったように見えるが、これで売りが一巡したかのかどうか
・足元の米国の長期金利上昇はJ-REITにネガティブな影響を及ぼさないのかどうか
といった点になります。
1万2000円レベルで分配金が安定的に推移したとしても、投資口価格が大きく下落してしまうと、トータルでは損失を抱えるというケースが出てきます。
大きく上昇することを期待するというよりは、値動きが落ち着いてくるかどうかということを見定める1カ月となります。ビルファンドは現時点でJ-REITの中で時価総額が最も大きい銘柄です。ビルファンドの下値が固まってくれば、他のREITにも買い安心感が出てくることが予想されます。