特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」、今回は2022年7月に取り上げた、「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIES(以下:F & LC)について、7月5日から8月5日の値動きについて振り返ります。
1カ月間で13%の下落
8月5日の終値は2345円でした。
7月5日の終値は2692円で、1カ月で347円の下落。100株購入した場合だと、26万9200円が23万4500円となり、3万4700円のマイナス(手数料等は考慮せず)となりました。
この間の下落率は12.9%となっています。
26万9200円(2692円)→23万4500円(2345円) 3万4700円のマイナス(-12.9%)
新たな弱材料と業績下方修正
今回、F & LC社を取り上げた背景としては、同社の主力業態であるスシローが、「おとり広告」を使ったとして、6月に消費者庁から措置命令を受けたことがありました。ただ、スシローに関しては、ネガティブなニュースがこれで終わりとはなりませんでした。
この後、スシローではビールの半額キャンペーンを打ち出したのですが、一部店舗ではキャンペーン開始より前にポスターなどで告知をしていたため、お客さんに誤解を与えてしまいました。それに伴い、差額分を返金するといった対応をしましたが、「おとり広告」で話題になった直後でもあり、メディアなどでは「またスシローが…」といった形で大きく取り上げられました。
さらに、F & LC社は第3四半期の決算発表の際に、通期見通しの下方修正を発表。従来の計画では2022年9月期に関して、売上収益2950億円、営業利益160億円、当期利益87億円を見込んでいました。これを、売上収益2800億円、営業利益85億円、当期利益30億円に引き下げています。
株価は安値更新基調が続く
株価の方は売りが止まらず、年初来安値を更新し続ける流れが続きました。
以下は、この期間のチャートとなります。
テクニカル的なことに触れると、直近安値(ここでは6月17日安値の2532円)を下回ったところで下げが加速したことが見て取れます。下落基調が続く銘柄にはよくあるパターンです。付近に心理的節目の2500円もあり、これも下回ったことで、見切り売りを誘う流れになったと推測されます。
なお、下方修正を発表した翌日(8月5日、赤丸部分)は上昇しました。これは、下方修正であっても不透明感が払拭されることで、悪材料出尽くしを期待した買いが入ったものと思われます。ただ、ここでは下げ止まっていません。この企画としては8月5日で区切りましたが、8月8日には大幅安となって年初来安値を更新しています。
ブランドイメージの回復が課題
不祥事があった銘柄に関しては、その材料がブランドイメージを悪くするかどうかということが、株価を見る上ではポイントとなります。「おとり広告」が問題視された後、間を置かず別のニュースが出てきたことはネガティブです。しかも、どちらも広告・宣伝が絡んでいます。現場は色々と大変であったとは思われますが、その日に割り引きをしない商品の告知を大々的にした場合にお客さんに誤解を与えてしまうことは容易に想像できます。ポスターなどの変更ができなかったとしても、アナウンスを徹底するなどの対処はできたはずで、脇が甘かったことは否めません。
実際、同社の下方修正の要因に関しても、「お客様の信頼を損ねるといった事態を招き、主要事業である国内スシロー事業の来店客数が想定よりも大きく下回り…」といった文言が記載されています。外食ブランドは悪いイメージがついてしまうと、挽回するのにかなりの労力を必要とします。回転寿司のライバルは同業だけではありません。お寿司を食べようと思っていた人が、気が変わってラーメンにするといったことはよくある話です。外食チェーンでは「●●には行きたくない」という印象を持たれないようにすることも非常に重要です。
今後の株価動向にも要注目
今回は不祥事銘柄に関して、それを理由に売られたところからの値動きがどうなるかという検証でしたが、結果は、悪材料出尽くしとはならずに下げが続きました。決算発表翌日には買われていることを踏まえると、1カ月で10%以上下げるというのは結構大きいです。株式投資は人気投票の側面もありますので、弱材料が連続して出てきてしまうと、悪い方で目立ってしまうこともあります。
これを機会にこの後の値動きを追っていくことも、得られるものが多いと思われます。会社は通期の営業利益計画を160億円から85億円に引き下げました。3Q時点の営業利益は123.7億円ですので、4Q期間(7-9月)では営業赤字を見込んでいるということになります。また、直近で発表された7月の月次では、スシローの既存店売上高が前年同月比で10.2%減となっています。前年同月との比較で1割以上低下したのは22年9月期では初めてのことで、7月は全店売上高(開店後15カ月経過していない店舗を含む)も前年割れとなっています。
前途多難ではありますが、この先、株価が反転できるかどうかは、まずは社内で今回の件をしっかりと受け止めて、同じような問題を起こさないような体制を作ることができるかが重要でしょう。その上で、(1)月次に改善傾向が見られるか、(2)今22.9期で膿を出し切り、来期(23.9期)には増益計画を提示できるか、といった点が注目されます。
皆さんの予想はどうでしたか?これからも様々な銘柄を取り上げていきますので、株を買ったらどれくらい動くのだろうかということをシュミレーションするのに活用してみてください。
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