今回は、過去の「あの銘柄を買ってみた!」で取り上げた銘柄について、その後の値動きがどうなったかを追跡します。2023年2月に取り上げた三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)について見ていきます。
海外金融機関の混乱が沈静化して株価は右肩上がり
2023年9月15日の終値は1291.5円となっています。値動きをみた2023年2月21日(終値:983.2円)から3月22日(同:850.8円)の1カ月では、終値ベースで13.5%(132.4円)の下落と大幅なマイナスとなりました。しかし、その後は非常に強い動きとなっており、9月には1300円台まで上昇。足元の株価は年初来高値圏にあります。
今年の2月から3月は欧米の金融機関の破綻や再編が相次ぎましたが、これに関しては一時的な混乱にとどまりました。日本の金融機関で直接的な影響を受けたところはなく、4月以降は日本株全体の動きも非常に強いものとなりましたので、その中でも中核銘柄として人気化しました。振り返ってみると、値動きをみた期間の下げ局面が良い買い場となっていました。
4月以降は反転の要素がそろう
実際のところ、答え合わせの記事を出した2023年3月28日の時点では、まだ銀行株は買いづらい状況にありました。ただ、そこでは三菱UFJが反転するための要素として、以下の4つを挙げました。
・グローバルで金融株が急落しないという状況がしばらく続く
・危機を経たことで平時であれば考えられないような金融機関の合併・再編が成立する
・新体制となった日銀が早期に金融政策の修正・変更に動く
・米国のインフレが全く沈静化せず、米国の利上げが長期化するとの見方が強まる
一方、売りを誘う材料としては上の要素のそれぞれ逆の話になりますが
・新たな金融機関の不安材料が露呈する
・日本でも金融機関に対する不安が高まる
・米国が利上げを打ち止めする、または利下げに踏み切るとの見化型が強まる
・日銀が金融緩和継続の方針を強く打ち出す
といった点を挙げました。
その後、これらの要素がどうなったかを見てみると、先述したように世界的な金融機関の混乱は一時的にとどまりました。日本には悪影響が飛び火しなかったので、その点に関する危機感からの再編劇はありませんでした。米国の長期金利に関しては、10年債利回りが9月時点でも4.3%台に乗せるなど高止まりしています。
日銀に関しては、4月に植田新体制がスタートしましたが、7月の会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)の修正が決定されました。スタンスとしては金融緩和継続姿勢を強調してはいますが、国内の長期金利は上昇傾向にあります。直近ではメディア報道を材料に、市場が早期の「マイナス金利政策」を解除を前のめりで意識するような場面もありました。
これらの点を踏まえると、4月以降は売られる要素が少なく、買われる要素が多かったといえます。
金融株にはフォローの流れが続く
今週は米国ではFOMCが9月19日~20日に開催され、日銀金融政策決定会合が9月21日~22日の日程で開催されます。三菱UFJはこれらを意識しながら買われている側面もあると思われますので、イベント近辺では利益確定の動きが出てくるかもしれません。
ただ、米国に関しては、利上げはあってもあと1回くらいではないかとみられている状況でも、10年債利回りがなかなか下がってきません。原油高がインフレ長期化への警戒を高めているほか、経済指標が比較的堅調であることが金利が下がりづらい要因となっています。仮に利上げが打ち止めになったとしても、利下げに関してはまだ先の話になりそうです。
日銀に関しては、依然として金融緩和の姿勢を継続しています。しかし、米国の長期金利が下がりづらいのであれば、日本の長期金利にも上昇圧力がかかってきます。来年、2024年の春闘での賃上げ幅が大きければ、いよいよ日銀が金融正常化に向けて舵を切るとの見方もあります。今年2月から3月に起こったような金融機関を巡る混乱はリスク要因ではあります。ただ、今回振り返ったように、崩れたところが買い場であったという実績もできましたので、現状では悪材料が出てきて大きく下げた場面では押し目を待っている投資家も多いと推測されます。
銀行株には資金が入りやすい環境がまだ続きそうです。超長期のチャートでは2006年の4月に上場来高値1950円をつけていますので、この水準に向けて上昇基調が続くかどうかが注目されます。